第七話
登場人物の紹介です!
アルバート・ミリアム・シシーリン
・シシーリン王国、第二王子で十四歳。
・銀髪、紫目の見た目は可愛らしい少年だが、行動は全く可愛くない。
・謎が好き
ルシフェル・ミリアム・シシーリン
・シシーリン王国、第一王子で十八歳。
・青髪、茶目のイケメンお兄ちゃんだけど、ブラコン
・アルバートの兄
「アル、昨日父様が言っていたことを覚えているかい?」
「えっと……」
「慎重に行動しろ、と言われたはずだ。それにこの件は僕たちが関わらないように、とも言われたよね」
兄様は詰め寄るように俺に言う。
「……はい」
「分かっているのなら、どうしてそんなことを言ったんだい?」
「好奇心を抑えられなくて……」
怒られるのを覚悟で兄様に本心を告げると、兄様は困った子を見るように俺を見ると優しく頭を撫でた。
「何度も言うけどね、僕はアルに危険なことをして欲しくないだけなんだ。アルの行動を全て制限したいわけじゃないんだよ。分かってくれるね」
「でも兄様、今から調べることはただの興味です。絶対にスラム街の一件には関わらないと約束します。だから」
「……はぁ、全く。本当に約束してくれるのなら、呪いの魔道具と王国の犯罪の取締まりについての資料を見せてあげよう」
「約束します、この名に誓って」
「よし、じゃあ付いてきて」
兄様はフッと笑うと俺に付いてくるように言った。
この世界で己の名前に誓うことは絶対的な約束を意味する。
でも狡いかもしれないけど、さっきの言葉に俺の名前は誓っていない。
兄様はそれに気づいていてわざと見逃してくれたのかは分からないけど。
しばらく兄様に付いていくと着いた先は王城の中にあり、犯罪の取り締まり履歴を管理している、管理省に着いた。
「これは、これはどうされましたか、両殿下」
「すまないね、カンタリオ省長。少し見せてもらいたいものがあって」
管理省の中に入ると省を束ねるカンタリオ省長が顔を出した。
「見せてもらいたいものでございますか?」
「あぁ、呪いの魔道具の逮捕者についての資料を閲覧したい」
「はぁ、何故そんなものを?」
カンタリオ省長は困惑したように兄様に聞く。
「弟の興味心の埋めて欲しいんだ。これ以上暴走させないようにね」
「兄様、俺は暴走なんかしてはいませんよ」
俺は暴走していないと軽く抗議するが、兄様は何のことないように小さく微笑む。
「はぁ……?では、こちらに」
「あぁ」
困惑したままのカンタリオ省長はうまく消化できていないようだが、資料のある場所へと案内をしてくれた。
「こちらになります。呪いの魔道具の製造が活発だった数百年以上前の資料が殆どですので、読みにくく、資料自体も他よりも少ないのですが」
「それで十分だ。そうだ、合わせて呪いの魔道具についての資料などはここに置いているかい?」
「簡単なものでしたら」
「そちらもそれで十分だ。持ってきてくれるかい?」
「承知しました」
兄様とカンタリオ省長の話はとんとん拍子に進み、資料を持ってきてくれることになり、俺たちは資料室にある簡易的な椅子に座り待つことになった。
本当に兄様が誰かと話し始めると俺の入る隙がないからな。
「アル」
「何ですか?」
「もし、資料を見て新たに気が付いたことがあれば僕に教えてくれるかな?」
「…?分かりました」
兄様が頼んだことの内容が今一掴めない。
俺だって約百年以上前の呪いの魔道具の犯罪の記録を見たところで新たに何かが見つかるとも思ってはいない。
けど、もしかしたら思ってもみなかった発見が生まれるかもしれないと思ってきたのだ。
兄様も同じような考えなのだろうか。
「持ってまいりました。こちらが呪いの魔道具の逮捕者についての資料、こちらが呪いの魔道具の簡単な歴史などが記載されております」
「ありがとう、手間をかけたね。業務に戻ってくれ」
「お心遣い感謝します。何かあったらお呼びください」
カンタリオ省長は綺麗な礼を取ると通常の業務に戻るため部屋を出た。
この資料室には特別な結界が展開してあり、外部からの侵入は決して許しはしない。
俺たちが護衛もなしにこの部屋に二人っきりになれているのもそのためだ。
まぁ、ここが王城で警備も厳重だからというのもあるけど。
「兄様、俺はこの資料から目を通します」
「分かった。じゃあ、僕は……これから目を通すことにしようかな」
俺たちはそれぞれ閲覧する資料を手に取り、見始める。
俺の開いた資料のページの中には今から約百二十年前のことが書いてあった。
——フルス暦三十五年、五月二日。王都ラシュ、平民街において。
捕縛者 ギュスターヴ。出身地ルスタ、年齢二十八。
罪状 禁止道具の製造及び魔道具規定違反。
裁定 懲役三年。
備考 首謀者ギュスターヴ以外の三名の者は懲役一年に刑する——
文章自体は現代語のほかに古語が各所に使われていて、分かる範囲で読み進めて分かったことはこのくらいだ。
昔は百年周期で西暦を当てていたようだが、今はその風習はなくなっている。
初めて聞く地名もあるし……。
にしても、百年以上前の資料がこうも綺麗に残っているのは魔道具で保護されていたからだろうか。
「兄様、少しよろしいですか?」
「ん?どうした」
「ここに書いてある、ルスタという地名をご存じですか?」
俺の質問に兄様はページのその部分をじっと見つめる。
「あぁ、これはルスタではなくルスベだね」
「でも、この字は〝べ〟でなく〝タ〟ではないのですか?」
「現代語ではその意味で用いられるけど、古語では〝べ〟として用いたんだ。この資料は約百二十年前。その頃は現代語の普及が始まった頃で、うろ覚えの書き方しかできなかったんだろうね。その証拠に歴史上存在した地名の中にルスベが存在するから」
兄様は近くに置いてあった白紙の紙にペンに文字を書き説明をしてくれた。
本当に兄様は優秀だなぁ。
俺は古語については軽くしか読めないし、現代語と同じ文字が存在する事すら初めて知った。
これを機に勉強してみても面白いかもしれない。
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ネタが枯渇状態なので、小話を少し休憩です。
すみません‥‥。