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第三話 悪魔との出会い

「ここが悪魔の住む屋敷ですか……」

 思ったより小さい。それが領主の屋敷を見たフレデリカの最初の感想だった。

 降伏に応じる旨を使者として来ていた女に伝えたところ、場所と時間を指定された。

 フレデリカが当日そこに行ってみると、そこには馬車が一台とメイド服に身を包んだ一人の女がいた。その女は使者として来ていた女と同一人物だった。

 領主の屋敷まで送るというその女の言葉に従い馬車に乗り込んだフレデリカは、今、領主の屋敷の前まで連れて来られていた。

 屋敷はフレデリカの想像より小さかった。確かに彼女が住んでいたエルフの里の住居と比べれば大きい。だが、おとぎ話に出てくるエルフを害する人族の豪奢な屋敷をイメージしていたフレデリカにとって、その屋敷は非常に質素でこじんまりしているという印象を受けるものだった。

 もちろん、庭は丁寧に管理されており、道もよく整備され清掃されている。見窄らしさこそ感じはしないが、拍子抜けといっても良い。

 思ったより領主の力は強くはないのではないか。フレデリカが内心そのように考えていると、馬車の御者台から女が降りてくる。エルフの里に使者として赴き、フレデリカを迎えに来てくれた女だ。

 ローズと名乗ったその女はエルフに劣らぬ美形である。綺麗でサラサラした銀髪は短く切り揃えられており、肌もハリと潤いがあるのが見て取れる。普段から手入れを欠かしていないことがわかった。スラリと伸びた手足は美しく、そのプロポーションには非の打ち所がない。まるで神が頭の先から足の爪の先まで計算して作り出したかのような美貌であった。ただ一つ、そのぴくりとも動かない表情はどこか人形じみており、フレデリカに不気味さを感じさせる。

「フレデリカ様、アラン様がお待ちです。中にお入りください」

 美しいが、感情を感じさせない平坦な口調。威圧するような喋り方ではない。しかし逆らえない圧力を感じた。

 フレデリカはエルフの里長の娘である。エルフを統べる者としての教育を受けてきたし、彼女自身の性格もどちらかといえば勝気で肝が据わっていた。だが、フレデリカであっても、逆らえないと感じさせる何かがローズにはあった。

 エルフの里も人族の情報収集は行う。人族とはエルフにとって最も身近な隣人であり、最も恐るべき敵であるという教育がなされているためだ。エルフは人族の動向を常に注意深く調査している。

 その調査の結果、この領地の領主は落ち目というのが大方の意見であった。特に先代は無能であると考えられており、当代の領主であるアランに代変わりしても、それは変わらないだろうというのがエルフの里での予測だった。

 だが、代変わりの結果、情勢は大きく動いた。エルフの里は襲われ数日で降伏。フレデリカは人質としてここにくることになっている。おまけに迎えに来た従者は絶世の美女であり、言葉に圧力を込められるときている。

 従者ですらこのような実力者なのだ。フレデリカは認識を改める。これから向かう先のアランという名の新しい領主は、先代とは比較にならない傑物なのだろうと。

 こちらをじっと見つめるローズの顔からは相変わらず何の感情も読み取れない。その顔を見返しながら、決意を新たにしつつ、フレデリカはローズに従い屋敷の中に入っていった。


---


 ローズの背中を追いかけつつフレデリカは屋敷の様子を観察していた。里長たちの会議でフレデリカは悪魔を刺し殺すと発言した。この発言は皆を納得させるための方便というだけではない。

 仮に悪魔が油断を見せたならば、一矢報いてやるという反骨心がフレデリカの中にはあった。そのために、屋敷の中での戦闘や不意打ちを想定しておくのは悪いことではない。

 フレデリカは幼い頃よりエルフの戦士たちに混じって訓練をしてきた。魔法に対する適性は高くはなかったが、剣や弓の技術についてはちょっとした物を持っている。

 もちろん、本職の戦士たちを蹴散らしたアランに正面から挑むつもりはない。だが、人質としてアランのそばにいれば、いずれ隙を見つけることもできるかもしれない。

 そんな思いを巡らせながら屋敷を観察していると、フレデリカは違和感を感じるようになっていた。屋敷の中に人気が全くないのである。

「……ローズ、先ほどから他の使用人や従者が見えないのですが、この屋敷にはどれくらいの人がいるのでしょうか?」

 調度品はどれも綺麗に整えられている。見たところ埃ひとつ落ちていない。庭の草木はよく手入れされている。しかし先ほどから全く人の気配を感じない。小規模な屋敷とはいえ、屋敷は屋敷である。ある程度の人数の使用人や従者がいないと管理の手が行き届かなくなるはずである。

 もし仮に使用人がいない時間があるのであれば、それは悪魔に一矢報いるチャンスとも考えられる。

「このお屋敷にはアラン様と私しかおりません」

 そして、ローズからの回答はフレデリカにとっては最も嬉しいものだった。つまり、ローズにさえ気をつければ、アランの寝首をかくことも可能であるということだった。

「驚きました。これほどの屋敷なのです。使用人を雇わないと管理の手間が大きいのではないですか?」

「現時点では私一人でも問題ございません。新しい使用人を雇うための資金も現時点では目処がついていない状態です」

 フレデリカの問いに対して、ローズは澱みなくすらすら答えてくれる。だがその内容はフレデリカにとって衝撃的だ。ともすればアランの弱点になりかねない情報なのだ。フレデリカにとっては嬉しい内容であった。だが、ローズはその程度なんでもないかのように答える。

「私個人としても、アラン様と二人でいられますので他の使用人は不要です。アラン様は不満そうで、先日税金関連で色々と処理を進められていましたが……ただ、まだ現金はそれほどないのです」

 ローズの言葉は従者として不適格な気もした。しかしローズの声色には何の揺れもなく、ローズが心底からそう思っているのか、フレデリカは推し量ることができなかった。

 そんな話をしていると、ローズは一つの部屋の扉の前で足を止めた。

「こちらが応接室になります。アラン様がお待ちです」

 開けてもよろしいでしょうか? とローズが問うてくる。

 いつの間にか着いていたらしい。フレデリカは一つ息を吐く。緊張しているのがわかった。今から会うのは里を襲った悪魔である。どんなやり取りをすることになるのか想像もつかなかった。

 だが立ち止まっていては何も進まない。里に住むエルフたちのために、自分がここで踏ん張らないといけないのだ。フレデリカはそう心の中で思いを強くする。

 そして、ローズに向かって頷いた。ローズが扉を開ける。自分たちの住む場所を燃やした悪魔、その悪魔に対峙する緊張感とともにフレデリカは部屋に足を踏み入れた。


---


「お前がエルフの姫さんか?」

 応接室の中には、ソファにどかりと腰を据え、足を組んでこちらを見る男がいた。流行の貴族の礼装を少し着崩して着ている。黒髪黒目の年若い男で、こちらもローズに劣らず美形であった。

 しかし、その言葉使いの荒っぽさに加え、こちらを値踏みするようなその目線に、フレデリカは目の前の男の性格の悪さを予感する。

「随分と貧相なやつだな。美形ではあるが……個人的な好みとは言い難い……」

 アランは少し残念そうな顔をしながらそういった。瞬間、フレデリカはキッとアランを睨みつける。

 その言葉は侮辱であった。フレデリカは言われっぱなしを好む気質ではない。エルフの次期里長として、武術の訓練を積み、勉学に励み、誇り高き一人のエルフとして育ってきていた。すぐさま反論する。

「出会って早々随分な言い方ですねアラン殿。人質とはいえ仮にも相手側の次期里長たる私に向かってその態度、人族には礼儀というものがないのでしょうか?」

 侮蔑を込めた目でアランを睨みつける。様をつけないその不遜な言い方にアランは眉をぴくりと動かした。エルフは今回降伏することになったのだ。であれば、人質として連れてこられたフレデリカは相応の礼儀を見せなければならない。

 だが、アランの物言いは、降伏した相手の姫を受け入れるものとしての礼儀や品格に欠けている。だからこそ、フレデリカは強く反論をしたのだ。

 アランは足を解いてソファからゆっくり立ち上がる。

 今の自分の言葉に対して何か反論するつもりなのか。そう考えフレデリカは身構える。しかし、予想に反してアランは口元に嗜虐的な笑みを浮かべる。その下衆な笑みにフレデリカは嫌悪感を抱いた。

「ハズレかと思ったが……個人的には好みかもしれないな。歌ってくれるやつは嫌いじゃない。歌ってくれるなら多少は期待もできるかもしれないしな」

「いったい何を……」

「「ひざまずけ」」

 たった一言。それを聞いた瞬間、フレデリカは上から押さえつけられるような圧力を感じ床に四つん這いになる。立とうとしても上から抑えられる圧力を感じ立ち上がれない。

 言霊の魔法。相手の行動を言葉によって縛り付ける魔法だった。実力差がある相手であれば、さまざまな命令を下すことができる。

 アランが言霊の魔法を使ったことに対して、フレデリカは驚愕していた。なぜなら、アランが火の魔法を使ったという報告を聞いていたからだった。

 この世界の常識として、わずかな例外を除き、一人が使いこなせる魔法は一属性までというものがある。わずかな例外とは、例えばエルフの里長が身につけることができる守りの魔法である。この魔法はどういう原理か、里長を継ぐことによってのみ習得でき、それまで使えていた魔法とは干渉しなかった。

 だが、守りの魔法は固有魔法であり、継承にも大きな条件がある。そのため、通常は一人が使える魔法は一属性までのはずだった。だが、アランは相手を言葉によって操る言霊の魔法を使って見せた。

「複数属性の……魔法を使えるのですか……」

「ご名答。俺は固有魔法を除く全種類の魔法を扱うことができる」

 一人が複数属性の魔法を行使できるなど、フレデリカの常識に反する内容だった。だが、その力の行使により、フレデリカは今、憎き悪魔の前で四つん這いで頭を下げた体勢を取らされていた。

 火の魔法であれば室内では使いづらい。屋敷まで燃やしてしまうためだ。そのため、もし戦いになっても有利に立ち回れる。そのフレデリカの甘い見積もりは早速頓挫した形となった。

「うむ。その体勢はエルフの姫にはよく似合ってるじゃねえか。やはり敗者は敗者らしく床に這いつくばってもらわないとな」

 サディスティックな笑みを深めながらアランはフレデリカを見下ろす。フレデリカは歯を食いしばりアランを睨みつける。

「随分な言い草ですね……降伏相手の姫にこのような辱めを……これが人族のやり方ですか!? 恥を知りなさい!」

 フレデリカの反論を、アランは笑みを浮かべつつ聞く。そして一つ頷くとアランはローズの方を振り返る。

「ローズ」

「はい、アラン様」

 アランがローズに声をかけると、どこからともなくローズが現れ、鞭をアランに手渡した。それを満足げに受け取るとアランはフレデリカに近づいてくる。そしてフレデリカの背中側に回り込むと、エルフの正装の一つであるロングスカートを捲り上げた。

「なっ!」

 それにフレデリカが抗議をあげようとしたが、その前にアランは鞭でフレデリカの臀部を打った。

 乙女の尻から奏でられたとは思えないような衝撃音が鳴る。

「あああっ!?」

 驚きと突然の痛みでフレデリカは大口を開けて絶叫する。

「ほう、なかなかいい音が鳴るじゃないか。悪くないな。王都の楽団にも楽器として参加できるかもしれないぞ」

 アランが嬉しそうにそう呟く。フレデリカの羞恥心を煽るためだ。人前で臀部を晒し打たれる姿を見せるなど、フレデリカには想像もできなかった。羞恥と痛みに顔を赤くする。

「アラン様、もしその楽器の奏者がアラン様なのなら、ぜひ私もお使いください」

「……」

 ローズがよくわからないことをアランに耳打ちし、アランが嫌そうに顔を顰める。その隙に精神的な態勢を立て直したフレデリカは首だけ振り返りアランを睨みつけ怒鳴る。

「な……何をするのです!?」

 フレデリカの反論にアランはフレデリカの方に顔を向け直す。

「なに、躾のなってない森鼠に、ちょっとした躾をしているだけだよ。まずはアラン様と呼ぶところから始めるか」

 エルフに対する蔑称を使い、アランはフレデリカを罵倒する。そして再び鞭を振り下ろした。

 再びの痛み。フレデリカから悲鳴が上がる。

「……暴力でいうことを聞かせようと……?」

 生理的な涙を浮かべつつ、フレデリカはなんとかそう問いかける。

「そうだな。なにしろ立場がわかっていないようだったからな。俺としては別にお前らの森を完全に燃やし尽くしてしまっても良かったんだ」

 アランはフレデリカの耳元に近づくとそう囁く。

「だがまあこれから隣同士になるんだ。良き隣人として慈悲をくれてやったんだよ。それを対等と思われていたんじゃあ俺のメンツが立たないんだ」

 あくまで慈悲を与えた立場であり、対等ではないと強調する。しかし、その嬉しそうな顔を見れば、今フレデリカの臀部を打っているのが、その理由だけではないことも見てとれた。

「さて、じゃあまずはアラン様といってみようか?」

「……」

 アランはフレデリカに向かってそういう。まずは言葉から。彼女を屈服させようとする。フレデリカは歯を食いしばり沈黙を選択した。フレデリカが黙っていると、アランは再び鞭を振り下ろす。可憐な乙女の臀部に再び衝撃が走りフレデリカは悲鳴をあげる。

「黙ってたって事態は良くならないぜ? 今日俺は特に執務を入れてないからな。いくらでも付き合える。ほら、さっさとアラン様っていって楽になれよ」

「……」

 フレデリカは羞恥と痛みに顔を赤くしつつも、沈黙を貫く。それを見たアランはますます嗜虐的な笑みを強めると再び鞭を振り下ろす。

 二回三回と振り下ろされる鞭に、しかしフレデリカは屈しない。

「なかなか強情なやつだな。何がそんなに嫌なんだ?」

 アランは楽しそうに問いかける。フレデリカの臀部は腫れ上がり、その美しい肌に赤色の線が何本も走っていた。生理的に流れた涙と悲鳴を上げた時に溢れた唾液が顔を汚している。しかし、その目は闘争心に燃えていた。決して屈しないという決意が見て取れる。

「……人質とはいえ……私はエルフの姫です。あなたと私は対等であるべきなのです……」

 フレデリカが答える。自分とアランは対等であると主張する。

「私はエルフの代表としてここに来ました……エルフたちの権利を守るのが私の役目です。それを奪おうとする要求は、断じて受け入れられません!」

 最後の一言は大きな声になった。息が切れる。言霊の魔法で強制的に四つん這いにさせられて、臀部を打たれるという状況だが、フレデリカは気高くそう叫んだ。

「ほう。なかなか気概を見せるじゃないか」

 フレデリカの、涙も混じり息も絶え絶えの返答にアランの笑みが深まる。その笑みを見てフレデリカは身震いする。目の前の男が舌なめずりをする猛獣で、自分がその前に差し出されたあわれな供物のように感じられた。しかしそれも一瞬で、フレデリカは自分の心を奮い立たせる。

 アランはそんなことを知ってか知らずか、フレデリカに顔を近づけ片手でフレデリカの首を鷲掴みにする。息ができず苦しさに喘ぐフレデリカ。首を絞められたことによりさらに涙と涎が垂れてくる。そんなフレデリカの顔に自分の顔をさらに近づけアランは囁く。

「だが本当にそんなことを言って大丈夫なのか? 俺は王都の騎士団に所属して万騎長にまで登り詰めたんだ。その間に色々な拷問のやり方を学んできたんだぜ?」

 アランは先代領主の一人息子だった。だが、先代とは反りが合わずに王都の騎士団に出奔した。通常であれば、貴族のボンボンなど、適当な役職につけて飼い殺しにするのが普通であった。

 だが、アランは実力によって成り上がった。帝国との戦争に何度も出征し、敵を倒し味方を救い、最後には万騎長という、王国騎士団における最高位を得るにいたった。

「例えばそうだな、お前の足の指を一つずつ潰していくっていうのはどうだ? 椅子に縛り付けて足の指を一つずつ潰していくんだ。俺もやられたことがあるがこいつは激痛だ」

 そんな実力のある人物が凄むのだ。フレデリカは自分の体がガタガタ震えてくるのを感じる。

「ああ、安心しろ、十回しかできないんじゃお前も満足できないだろ? そこのローズは回復魔法のエキスパートだ。潰し切ったら回復させて、また初めから潰していってやるよ」

 恐ろしい未来を語るアラン。フレデリカは体の震えを止められない。首を絞められ酸欠気味で脳も回らなくなってくる。

「ほら、アラン様っていうだけでいいんだ。言ってみろよ」

 優しく問いかける。強く攻め優しくする。それはアランがよく使うテクニックだったが、攻められているフレデリカにはそれは慈雨の如く響くだろう。そして自分を様付けで呼び格付けは終了する。そうアランは考えていた。

「……ぜ……す……」

「ん?」

 何かを喋ろうとしたのを感じてアランは手の力を緩める。そしてフレデリカの口元に顔を近づける。これで格付けは済む。そう思っていた。

「……ぜったいにいやです……」

「……」

 それは明確な拒絶だった。ここまでされて、ここまで脅されてなおフレデリカの心は折れなかった。エルフたちの代表として、己の意思を曲げなかった。彼女自身の誇りが、エルフに対する責任感がそう答えさせた。

 そしてそれはアランの予想を超えた内容だった。

「……はっはっはっは。こいつはまいった。おもしれー女じゃねえかお前は」

 その答えを聞くとアランは拘束を解いて大声で笑い始めた。フレデリカは床に投げだされる。酸素を求めて荒い息をする。その横でアランは何が面白いのか大笑いしている。ひとしきり大声で笑うとアランは鞭をローズに渡す。

「ローズ。俺は決めたぞ。この女をうちの2人目の従者にする」

「彼女は人質として連れてこられているのです。従者にすることはできません」

 突然メチャクチャなことを言い出すアランに対して、ローズが的確に反対する。しかし、アランは気にした様子もない。愉快げにしながら思案する。

「ああ、確かにそうだな。なら客人待遇にしてやろう。いやいや、思ったよりもいい拾い物だったな。何かにつけて楽になりそうだ」

 何をアランがやろうとしているのか。この時点でフレデリカにはわからなかった。だが、フレデリカはアランに気に入られたらしい。

 アランはフレデリカの正面のソファに再び腰掛ける。

「ああ、そうそう。動けなくて辛かったよな。「動いてよし」」

 その言葉を聞くとフレデリカの体が軽くなる。しかし、首を締め付けられ、臀部を幾度も打たれたフレデリカに立ち上がる余裕はなかった。ぜえぜえと荒い息をしつつ溢れる涙を止めようとする。

「さて。聞いての通りだフレデリカ。君は今から我々の家の大切な客人となる。困ったことがあればローズに聞け。彼女がなんとかしてくれる。そして……そうだな。とりあえずしばらくは私の夕食のともをしてもらおうか」

 親しげにフレデリカに話しかける悪魔。フレデリカは目の前の悪魔を睨め付ける。

 必ず、この悪魔に目にものを見せてやる。そういう気概を込めて睨みつける。その目を見てアランは嗜虐的な笑みを深めるのだった。



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