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ちなみに主人公は『くっころ』を知りません

何となく「ゲームの世界に入ってみたい」と願ったあなた。

すると不思議な光に吸い込まれ、目覚めるとそこは剣と魔法のゲームの世界。

あなたはこの世界で『カリット』というキャラクターになっていた。

そしてしばらくして自分のこの世界でのフルネームに気付く。

『カリット・ベーコン』

「これ絶対バカが作ったゲームだろ!」

そして、ふざけた名前、ふざけた設定のクソゲー世界で、あなたの英雄譚が始まる・・・

カリット・ベーコンは明日16歳を迎える少年だった。

随分とワケありな家庭のようで、学校には行かず、田舎のデカい別荘みたいな自宅に隣接する農場で、魔王感のあるおじいさんとドラゴンっぽいおばあさんの手伝いをしながら空き時間に勉強や鍛錬をして慎ましく暮らしている。

「(これ絶対じいちゃんラスボスだろ···)」

常に正しく凄まじい腕力と威厳を有するものの孫をすぐ甘やかしそうになる自分を懸命に律している可愛げが却ってあやし過ぎる。

おばあさんも右に同じ。

とにかくでかい洋館風の家には、世界観的にどうなのだろうか、暖炉などの他に普通に現代のテレビや冷蔵庫、エアコンなどが揃っていて本当にただの金持ちの別荘感があり、さらに悪魔っぽい執事やメスのキラーマシンみたいなメイドロボが「ぼっちゃま。」とか言って来る。

言いたいことは色々ありまくるがとりあえず農業だけの収入でこれはありえない。

「(多分ここの地下に魔王城とか転送ゲート的なやつあるだろ···)」

と思っていたら翌朝、宮殿からの呼び出し電話を受けたメスのキラーマシンらに魔王城感のある地下空間の厳重に施錠された一室へと連れて行かれ、祖父母に「立派な男になるのだぞ···!」と半泣きで見送られながら執事と共に早速転送ゲート的なやつで宮殿内部に直通移動。

「(なんで魔王城みたいなとこと人間側の中枢が直通なんだよ···)」

そしてカリットは宮殿内の一室で自分が今は亡き勇者『ニコエッグ・ベーコン』の息子である事を、まあ当人だったなら知らない訳はないんだけど自分としては初めて知らされ、そんな話の都合よりも、

「(ニコエッグ、たまご2個!!)」

ベーコンの目玉焼きじゃねーかと思わずにはいられなかった。

そしてその後、王様ではなく皇帝、しかもその代理の鎧騎士からではあるけれど、それでももはやテンプレのベタ展開、次の勇者として任命される。

ちなみに代理を務めたやたら強そうな鎧の男は、本業がクソ忙しいというのにニコエッグの遺言通りカリットが育つまで勇者を兼任していた皇弟であり、要はこの引き継ぎは前々からの既定路線。

こう来るとお次もテンプレ、魔王討伐の仲間探しをするのかと思いきや、データ容量とかの都合なのだろうか、随伴するメンバーは既に決まっているようだ。

気になるのは名前。

一人目、『アツクセイ・ウザイヤツ』。

「(ただの悪口!!)」

すごくウザそうな名前だが鎧を着た普通のベテラン戦士っぽいヒゲのおっさん。

というか集められている全員中年のおっさんだし20人くらいいる。

「(多いな···)」

とは思うが一人目以降はモブキャラ扱いなのかこの場での紹介はなかった。

あと、そもそもこの空間が見た目完全に大きめの市役所で、他の業務の邪魔になっているのが辛い。

「(せめて会議室でやれよ···)」

と思っていたら割とすぐ屋外に出た。

「(なら最初から外でやれよ···)」

そして離れの厳重に施錠されていた痕跡のある小屋の中にまたゲートがあり、それを関係者含め60名ほどが通る。

ちなみにそれを出た先も厳重に施錠された痕跡のある扉を通るので、これはどうやら転送ゲートの決まり事のようだ。

一緒に来ている執事は面倒な手続き関係の一切をやってくれているようで、移動先の滑走路でも担当者っぽい相手と話している。

······滑走路?

どう見ても国際空港感のある風景。

勇者とか魔王とか言ってる割に家は大金持ちが持つ山梨あたりの別荘風だし、地下が魔王城っぽいのはいいとしてもそこからワープした宮殿は自動ドアやらパソコンやらディスプレイに流れる施策の映像やらまんま市役所だし、その上今度は国際空港。

「(どういう設定なんだよこの世界···)」

そしてここには別の勇者一行も何組か合流して来ており、重火器で武装した軍人が敬礼する中でそれぞれ輸送機に乗り込んで行く。

「(なんか戦争みたいになって来たっていうか、そもそもどんなのと戦うんだ僕は···)」

ここで非戦闘員のほとんどが見送りとなるが執事は戦闘員でもあるようで引き続き同行し、索敵等を行う戦闘機やドラゴンライダーらと共に離陸。

中でパラシュートを装着させられるカリット。

用心とかではなくそれで敵城に降下するらしい。練習も無しに。

「(怖いわ!!)」

ゲームの主人公は鍛錬をした設定があるようだけど自分としては何の訓練もしていない感覚。

「(ていうかこの世界で死んだら俺どうなるんだよ?!)」

元の世界に戻れず普通に死ぬ予感しかしない。

「ぼっちゃま、もしや降下が恐ろしいのですか?」

いかにも魔族らしい自前の翼があるのでパラシュートを着けていない執事が聞いて来て、返事を待つ事なくこう続けた。

「本来あなた様にはパラシュートなど必要無いというのに、人間が半分入ってしまった事を言い訳に修練を怠るから翼が覚醒せず、こういう事になるのです。」

修練自体の記憶が無いというのに説教を食らうカリット。

「(『入ってしまった』はどうかと思うけど、何にせよあのじいちゃんばあちゃんとはホントに血縁アリっぽいな···)」

勇者の息子にして多分魔王とドラゴンのクオーター。ワケありが過ぎる。

しかしまだ祖父が魔王と決まった訳ではないし仮にそうでも今回のボスが祖父であるとは考えにくい。

この討伐はおそらくゲームで言えばチュートリアルにあたる筈だ。

何故なら同行している執事の名前が『フォタスク・ヨーウィン』。

間違いなく『お助け要員』である。

しかしチュートリアルでいきなり魔王城というのも負けイベント感が半端ない。

まあそもそもこんなふざけた内容ならきっと誰かの自作ゲームとかだろうから、ストーリー自体が短くてこの戦いだけで終わる可能性もあるのだけど。

「(ていうか、クリアしたらその後は?)」

その前にとりあえずスカイダイビングが怖い。

作戦会議が始まり、要はもうじき敵がこちらに気付いて妨害行動をして来るだろうけど、その中でまず空爆などを行い、その後降下したら指揮官に従い行動するようだ。

ちなみにこの隊の指揮官はカリット。

「(無理だろ!!)」

設定上はその為の教育を受けているんだろうけど自分的には覚えが全くなくいきなり指揮をしなくてはならない。

せめて何か攻略情報はないかと焦り探してみるとメモを1枚発見、すぐに開いて読んでみた。

『セレクトボタンを押すとシステムウインドウが開くよ☆』

☆の意味はわからないけどコレは地味に超重要情報!

今すぐウインドウを·········

「(セレクトボタンって、どこだ···?)」

ゲーム世界の中でそう言われても何をどうすればいいのか全くわからない。

他にもないかとさらに探すとメモをもう1枚発見。

『セーブはこまめに』

「(何の役にも立たん情報!!)」

しかし気付く。

「(いや待て、セーブが存在するなら死んでもやり直せるのか?)」

もしそうならとりあえずセーブしたい、したくてたまらない。

「(あ、そうだ!)」

こんな時こそお助け要員!

執事に聞いてみよう!

という訳で早速聞いてみたら、

「セレクトボタン?セーブ?遊びではないのですよぼっちゃま。」

普通に怒られた。クソゲーのくせに売れっ子声優みたいな声で。

「(ねぇのかよ!!)」

ゲームの痕跡はあるというのに世界として現実化した際にその要素は消えてしまったのだろうか?

非常にまずい、まず過ぎる。

スカイダイビングも怖いがとりあえず今は攻略情報が欲しい。

すると、

「もしやこれをお探しですか?」

執事が自部隊や友軍の情報が記された資料を見せて来た。

「来たぁ!コレだよコレ!!」

ていうか最初から見せてくれという話だがこの際そんな事はどうでもいい。

先程のメモもそうなのだが脳内で日本語に自動変換される感じで理解出来るそれを読み始めると、すぐに気付いた。

モブキャラと思しき人物は意味を当てはめられていない普通の名前。

おそらく製作側が名前を設定していない場合はそうなるのであろう。

逆に言えば意味になる名前の人物には設定があるという事。

安易に異世界を望んだ事を後悔しつつ生き残る為に脳をフル回転しながら読み進めるカリットだったが、その手はある部分で止まった。

その瞬間の表情の変化に執事は驚き、理由はわからないものの養育対象の義憤に満ちた凛々しき豹変に笑みが零れる。

それまでの怯えが嘘のように、何かの為に全身全霊、命すら擲つ覚悟が見えた。

その時こちらに気付き飛来する敵とのエンカウント。

味方は応戦と空爆を開始、そしてほどなく勇者は魔王城に向け空へと飛び出した。

魔王討伐なんかどうでもいい、資料の女性キャラクター達が背負わされた、ひどい名前の宿命をへし折る為に。


降下。

戦闘機やドラゴンライダーの援護を受けながら空の敵を掻い潜り、極力ギリギリでパラシュートを開くと、その頃には地上の敵とも交戦に入る。

パラシュート状態は格好の的なので攻撃や障壁魔法を展開したりドラゴンライダーに相乗りするなど何らかの手を打たなくてはならない。

ちなみに先程の資料にはカリット自身も載っていた。

なので自分が電熱魔法の使い手である事もわかっている。

しかし出し方はわからない。

「(出来る筈だ!やるしかねえ!)」

こんなところで死ねない、死なせたくないんだという気持ち。

相手から向けられる明確な殺意によって逆に初陣の迷いを知る余裕も無く、むしろざわつく生存と攻撃の本能、そして何より男として女性の悲劇を許容出来ない激怒に導かれ魔法の才が覚醒した。

ゲームなんかでは断じてない殺し合いから湧き上がる未知の感覚を信じ切り、

「何か···出ろよ!!!」

自分の中のありったけの暴力性を込めて放った視界を埋め尽くす渾身の攻撃は、敵と認識した全対象を回避も生存も許さず無慈悲に爆散させる電撃の大滝。

敵とはいえ命だったものがことごとく肉塊や煙と化す味方すら発狂しそうな地獄絵図を冷たい目で見下ろす様は最早勇者というより魔王然としていた。

殺し過ぎて見えないがベーコン隊の着地を妨げる者はこの一瞬だけでもう居ない。

だが執事はこれにむしろ危機感を覚えた。

「や、やり過ぎですぼっちゃま!この先の余力を考えておられるのですか!」

魔力消費が多過ぎる。

敵の文字通りの散り様はおそらく大いに見せしめとなり味方が得たであろう勢いは大きいが、その為に継戦能力を失ったのなら以後足手纏いになりかねない。

「(これはまずい、臆病風に呑まれないかばかりを気にして逸り過ぎる事を何故予想出来なかった···!)」

そして猛省しながらも思う。

「(それにしても何という凄まじさ。一体何がぼっちゃまの逆鱗に触れたというのだ···)」

執事の見立てではカリットの残存魔力は多く見積もっても2割以下。

実際は雀の涙であろうと思っているが、何にせよ指揮下の隊員は全員易々と城内への着地に成功。

ウザイヤツが喜び勇んで駆け寄って来て、

「命令をくれ勇者様!すげぇよあんた!どうせ2世のボンボンだろと思ってたけど納得行ったぜベーコン卿よお!」

名前通りのウザさをここで発揮。

そこに執事が割り入り怒鳴る。

「それが公爵家当主に対する口の利き方かウザイヤツ伯爵!」

ウザイヤツは伯爵だったらしい。

なおカリットは自分が公爵である事も資料を見るまで知らなかったが何にせよ今のところは実権を持たないお飾り当主であるようだ。

「ハッ、すまんねヨーウィン伯爵。だがよ、名門ベーコン家の腰巾着のあんたなら尚更わかるだろこの昂り!俺は今この勇者様に最大限の敬服をしているんだぜ?!」

ちなみにウザイヤツに悪気は無い。

執事がブチギレそうになる中それを制しカリットは言った。

「まずは退路を確保する。勢いに身を任せるだけが戦争ではない、従え。」

それを聞いて執事はハッとし、怒りを忘れ心が晴れた。

「(なんと冷静!心の逸りを心配したが私の言葉が届いたか!)」

だがそれにウザイヤツが反論する。

「しかしベーコン卿、奴らは今あんたに大いに怯えている筈だぜ?あんたは今ので相当消耗したようだが少なくとも俺達はあんたのお陰で大いに余力がある、あんたを休ませられるだろうくらいにはな。なら、ここは攻めじゃねぇのか?」

確かにそれも間違いではない。

カリットに余力があると見せ掛けられれば彼を休ませつつ周りの戦力だけで相当切り込める筈だ。

とはいえそれは不確実。

敵が怯むとも、勇者を休ませられるとも限らないし、退路の確保は戦の基本とも言え、さらにこちらの着陸が早過ぎて他との合流が一切無い現状で突出してもその先で敵の挟撃を受けかけない。

すると、

「身の程を弁えろ伯爵!指揮権は未来の大勇者カリット様にある!皆の者、従え!」

フォタスクがそう檄を飛ばし、それに誰よりも先んじてカリットが駆け出したため、隊は否応なく退路の確保に進む事となった。

とはいえ、

「先走り過ぎですぼっちゃま!」

敵の本拠地内で指揮官が先頭に立つ事はまだ敵が怯えているにしても危険。

しかも消耗しているというのに。

「なら忍びを行かせる。分身の術で分体を先行させ、罠・死地・敵の企みを見極めろ!」

勇者はリストにあった忍者達を用い警戒させながらも速度を落とさず進んで行く。

休むつもりは微塵も感じられない。

そしてその先には目論見通り東の勇者達が着地するなり交戦しており、どうやらかなりの強敵と対峙しているようだ。

だが敵は合流に気付き不利と見て退却、そして全身鎧の勇者騎士に駆け寄るカリット。

「東の勇者よ!私は南西の勇者カリット・ベーコン!先んじて退路の確保に協力をお願い致す!」

すると東の勇者は、

「何だと!攻めぬのか?!そなたであろうあの先陣を切った凄まじき破滅の光は!」

大々的に攻めの姿勢を見せたくせにとでも言いたげな反応だった。

鎧の中は見えず、2メートルを超える巨躯かつ加工された化物のような声。

だがカリットは知っている、この女傑、東の勇者が背負わされた名前を。

「確実に行く。消極的と言われようが捨て石は作らない。たとえ俺が死んでもだ!」

魔王討伐など二の次。

杞憂に終わるならそれで良いが彼女らが名前通りの運命を帯びているのなら命を捨ててでも捻じ曲げる必要がある。

何故なら彼は女性が悲しむ事が何よりも何よりも大嫌いだから。

よって死地には立たせない。

必ず最後まで守り切る。

だが彼の義心に満ちた目が、

「貴様!それは私が女だからか!舐めるなよ南西の勇者!!」

却って誇り高い彼女の逆鱗に触れた。

「話はもういい、我々は敵の背を叩く!協力はしない!!」

そして身を翻し、

「私の資質を疑うのなら貴殿らこそ私に従い刮目しろ!」

自らの名を高らかに叫ぶ。

「総員!!この真の勇者!ステイシー・クッコロに続け!!!」


結果的に焚き付けた形になり、彼女らの孤立を防ぐ為にもベーコン隊はクッコロ隊に追従しざるを得なかった。

ウザイヤツが一人呆れる。

「ハァ〜、青いもんだぜウチの大将は。」

そして、

「心配する価値あんのかねぇ、どうなっても自業自得だろうよ。同じ初陣だっつーのに気張り過ぎた猪武者だぜありゃあ。」

そうデカい声で呟いた後、あえて相手に聞こえるようさらにデカい声で言った。

「だがよ、あのデカブツ女、真の勇者だっけ?あれだけの啖呵を切ったんだ、ウチの大将よりも強ええとこ、見せてくれるんだろうなァ?」

それにカチンと来たのかステイシーが敵を察知するなり伏兵ごと薙ぎ倒す。

先頭に立ちながらもガンガンガンガン倒して前へ、前へ。

だが、

「(南西の勇者を恐れ時間稼ぎの雑魚しか出ん!これでは力を見せられず言われるばかりではないか!)」

ステイシーの心に焦りが生まれる。

「どうした魔王軍!弱兵ばかりでなく主力をよこしたらどうだ!!」

あれだけの破壊が出来るカリット隊と合流した時点でそうそう負ける気はしないが、守られる側と思われている事に腹が立ち、上回りたいと強く願って強敵の出現を求めた。

一方でカリットはこの押せ押せな状況が油断を誘うフラグな気がし、

「嫌な予感がする。飛んで上から見てくれフォタスク。忍びも再び先行、弓兵砲兵は対空に気を配り、術師盾兵は付いて来い。」

指示を飛ばして自らも進軍しながら、翼の覚醒を求め強く念じる。

背中がメキメキと軋み激痛が走るが覚悟の前には些細な問題。

先の魔法のように成功の予感はあるが、少しの間違いで必要以上に魔力を使ったり、魔族の血に呑まれ化物になる可能性も感じている。

執事は元々ある翼を普段魔法で収納していてそれを解除する感じに羽根を出すが、カリットは翼が生えていないので変身したり魔力で一時的に構成したりしなくてはならない。

ちなみに鎧や服は翼が生えて来てもそれが外に出せるようになっている。

とはいえ生えたところで飛んだ経験なんてないのだから飛べるかどうかはわからない。

それでも、飛ぶんだ。

「(あの子を捨て石になんてさせない。)」

ステイシーの名前が持つ意味はまず間違いなく捨て石。

名前通りの運命なら何らかの目的の為にどこかで犠牲になってしまう。

ちなみにこの国の言語は何故かわかるし話せるものの日本語ではないのでステイシーから捨て石を連想する事はカリット特有の感覚であり、クッコロ隊には他にもやられ役を意味するであろうヤラレヤ・クッコロなどひどい名前が多数居て、いずれも女性というか隊全員が揃って女性。

彼女らもステイシーほどではないがデカい鎧に包まれ素顔がわからず声も同じく化物風。

さておき使い捨てを意味しているであろうクッコロ隊の魔術師ツクァイス・テーラーがヤラレヤと共に、最早ステイシーの副官のような立ち位置に居るカリットに近付き話し掛けて来た。

「どうかうちの勇者様を悪く思わないで下さい、初陣で、精一杯気を張っておられるのです。」

ツクァイスはカリット隊でいう執事的な立場のようでステイシーの立場を悪くしないよう弁解を行い、一方ヤラレヤは、

「そんなカタい話よりさ、さっきのドーンってやったやつなんなの?極大魔法だよねアレ?」

などと非常に自由に振る舞って、キャラは違えどウザイヤツ感のある立ち位置。

「てかアレ何発も撃てないでしょ?もしかして退路とか言ってたのって、キミが魔力切れしかけてるから?」

その問い掛けにカリットは、

「いや、魔力は結構残ってるけど。」

平然とそう言って、強がりには全く見えないので底知れなさに皆がざわついた。

「へえ、ホントに?じゃあアレあと何発撃てる?」

ヤラレヤが挑発的にそう言うと、

「気安さが過ぎますヤラレヤ様。この御方は南西の勇者、即ち貴女様より目上なのです。弁えなさい。」

ツクァイスがそれを注意。

そこに通信が入る。

それは別の勇者達の苦戦を伝えるものだった。

こちらでは、空中からの警戒と忍者の併用、少々の企みならそのまま押し潰すステイシーの進軍力、そしてその後ろに控えるカリットの前に敵は時間稼ぎをしようとするばかりだが、別の勝てる場所ではきっちりと戦力を崩しに来ている。

「応援に行けばどうだベーコン卿。ここに居ても過剰戦力でしかないぞ。」

ステイシーがそう言って来るが、

「過剰で結構、必ず相手は貴女を狙う。」

カリットはそれを拒否し、

「その確信はどこから来る?」

との彼女の問いに彼はこう答えた。

「無事に帰ってから教えますよ。悪いけど貴女が何を言おうが我々はここを張らせて貰います。その時どこまで出来るかわからないけど、覚悟を決めてやるしかないんだ。」

その、まるで未来が見えているかのような言いように東の勇者は苛立ち、言い放つ。

「この場で答えろ!出来なくば去れ!」

それにカリットはこう答えた。

「貴女は死ぬ。周りも死ぬ。それを阻止する為に俺はここに居る。信じる必要もわかる必要もない、止められるかどうかもわからないんだからな。」

それを聞いてステイシーは舌打ちをし、だが一呼吸を挟みこう言う。

「未来が読めていると?さすがあの大勇者ニコエッグの息子殿だ、我々凡人とは比較にならんギフトを持つと聞いていたが、それが本当なら頼りになる事この上ない。」

言葉を選びながらも怒りに満ちた声。

そして、

「だが私にもプライドがある。私が死ぬだと?周りも死ぬだと?そして狙われる?お強いお強い貴殿が居てすら?お前が未来を見られるのならその未来で我が軍は勝利しているのか?わからないと言ったな、つまりそれが正しいのならお前も死ぬのだろう、勝利の未来が見えていない判断を貴様は選んだのだ!愚かな!我々など見捨てて勝利の未来を探せ!!今すぐにだ!!」

受けた言葉の意味をそう捉え、再び息を整えた後震えながらも勇ましい声で、

「我が隊は貴殿らの同行を拒否する!貴殿が最初に私を捨て石と言った理由は解った、だがそれでも、勝利の為に必要ならば我々は、喜んで捨て石となろう!!クッコロ隊!私に続け!!」

突撃の鬨を上げる。が、

「ゴチャゴチャうるせえんだよ!!!」

カリットがブチギレた。

「突っ込みたけりゃ突っ込みゃいい、嫌がるなら嫌がりゃいい、けどな、プライドは俺にだってあんだよ。」

クッコロ隊よりも前に出て、

「未来?知るか。お前ら死なせたら勝ちじゃねぇんだ俺は。みんな守ってそんで勝つ。誰にも文句は言わせねぇ。俺はワガママなんだ、完全勝利しか見てねぇんだよ。」

冷めたようにそう言うと、一転、信じられない気迫でこう叫ぶ。

「なめんじゃねぇぞてめぇら!!お前ら全員!俺のワガママ叶えてみせろ!!!」

この時初めて隊列の主導権がベーコン隊に移り、その士気の高まりはクッコロ隊にも伝播した。

「何だと?!」

ステイシーは戸惑うが、部下らが自らの命を惜しんでそうした訳ではない事は自分の心でわかっている。

夢を見てしまったのだ。

自分の事はどうでもいい、大事な仲間が生き残る未来を。

ウザイヤツは思う。

「(なるほどな、見えた未来の敗因、いや、きっかけがこの猪武者どもの討ち死にで、合流と、今こいつらごと自分の指揮下に入れる事がそれを防ぐ現状最善の策って訳か···)」

言葉の流れからカリットは未来が読めるのだと勘違いされてしまった。

そしてどうやら思い通りになったであろう彼の表情から勝ちの予感が膨らんでいく。

ウザイヤツは笑いが込み上げた。

「(反則じゃねぇかこの勇者!親父の方も大概だったが極大魔法に未来予知、そしてこの知略とカリスマ!アタリだぜ、コイツはとんでもねぇ器だ!)」

思いがけずさらに気に入られてしまう。

一方、敵から見てカリットの指揮能力は罠の踏破能力を見るだけでもステイシーを上回り、この隊列交代でこれまでの時間稼ぎではほぼ機能しなくなる事が予見出来た。

つまり敵はここから相応の戦力を割かなければならない。

結果的に強敵の出現を自ら招いたカリットだが戦局的にはそれをさせたとも言える。

相変わらず他の勇者達は苦境にあり既に半壊している隊もあるが、敵からすれば優勢な場所から戦力を移さねばベーコン・クッコロ両隊は止められない。

つまりそれだけでも今劣勢の味方にとって助けとなるのだ。

またカリットらにとっても、強敵が出るとはいえ相手が今すぐ出せるのはおそらく先程両隊の合流で不利と見て逃げた魔物達くらい。

戦力的にカリット側が有利なままであり、敵はその状態で粘って応援を待つ形になる。

天性の勘で、ここは一瞬で蹴散らせば大幅に有利になると見抜いたカリット。

ようやく出て来た強敵に飛び掛かるステイシーと共に剣で斬り込み前に出て、それにウザイヤツ、そして執事と後衛らの援護によって波状攻撃となる。

その連携の前にあっという間に仲間を失い戦線崩壊を悟った強敵は、敗走の置き土産とすべく退きながら広域破壊の強力な火炎魔法を唱え始めた。

そこに、

「ここだな?勝負所は。」

空中から放たれた執事の黒い光魔法がその強敵の腕から胴にかけ一直線に突き刺さる。

そして発動寸前だった魔法が、執事にとっては狙い通り、相手にとって最悪のタイミングで大暴発し敵の多くが爆発四散。

当然その強敵も命は無く、最早炭化した破片しか残っていない。

「(我々が苦戦した相手をこんなにもあっさりと、なんて強さ、なんて連携なのだ、ベーコン隊···!)」

今の連携には自身や配下達も関わってはいるが、それでもステイシーは驚きと嫉妬を禁じ得なかった。

そして思う。

「(だが南西の勇者はこれほどの実力を擁して負ける未来が見えていたのだぞ···、この後現れる敵はどれほどだというのだ···?!)」

敗戦の予感は全く無いが気持ちを引き締めずにはいられなかった。

「認めざるを得まい、此度の決行を貴殿の参戦に合わせただけの事はある。」

ステイシーはそう言い、聞く。

「再び問おう、今、貴殿に勝利の未来は見えているか?」

カリットは自分が勘違いされている事に気付いていたが今予知能力が無いと言えば士気は下がるだろうし出任せに勝てると言うのも正しいとは思えない。

彼の悩む反応を見てステイシーは、

「···まだ勝てんか。何故だ?」

と聞いて来るのでカリットは言う。

「そういう事じゃない、期待させて悪いけど今この判断をしてどう変わるかなんてのはわからないんだ。でも、これが正しいと俺は信じてる。」

嘘はついていないつもり。

そもそも何をしても無駄かも知れない可能性は考えたくなかった。

その時ふと仮説が浮かぶ。

運命を変える事でそれに連動して名前が変化する可能性である。

しかしページを破って持って来たリストの名前に今のところ変化は無い。

では逆に名前を変えればどうなる?

「そうだ!この戦いの間だけでいい、おまじないとしてクッコロ隊の一部にそれぞれ新たな名前を付けさせてくれ!」

カリットは、他から見ればあまりにも唐突にそんな事を言い出した。

「何だそれは?何の作戦だ?」

ステイシーは困惑するが、

「いや待て、それは、名前を対象とする呪詛の事を言っているのか?」

と言ったので、カリットからすればそれはまさしくそれに該当すると思い、

「ああ良かった!それがわかるならだいぶ話がしやすくなる!」

と喜び先を話そうとする。

だが先にステイシーが、

「待て。魔物ならまだしも、それも我々のような強者を名前だけで縛るなど、予め契約でも結ばない限り現実的ではない。」

と言い、さらにこう続ける。

「だがそれすら出来るであろう者共に心当たりがある。もしそれがそうだとしたら、なるほど、敗北も頷けるというものだ···」

その瞬間カリットの脳内に、キャラクターとしてのカリットの記憶の一部が突如、ハッキリと流れ込んだ。

そして知ったその敵達は、おそらく倒すべき最終目標。

エグゼクティブプロデューサーを意味するであろう名前を持つ六大魔王筆頭、エグゼ・ロデューサ。

同じく六大魔王リオラ・イターシナはシナリオライターの文字をズラしただけ。

さらに同じく六大魔王、メインキャラデザの横ズラし、ザメイン・キャラデの3名が、名前を用いた呪詛を執り行えると思われる。

なお六大魔王残りの3名は、メインプログラマーと思われるマーメイン・ログラ、サウンド担当であろうウンド・タントーサ、そして最後、おふざけで作ったのであろうよくわからない存在、ティソコ・ポンティヌス。

···ティソコ・ポンティヌスって何だよ?!

ともかくこれで色々見通しが立った。

「ああ、あなた方の一部には既に呪いがかけられている可能性が極めて高い。貴女もだステイシー・クッコロ。呪詛をやり過ごす為に新たな名を被せる。とはいえすぐには思い付かないから名乗りたい名があれば言ってくれ。他の、俺が指定した面々もだ!」

カリットがそう言うと、

「待て。未来が見えるにしても何故そこまでわかるのだ貴殿は。誰か、私のその呪いとやらが見える者は居るか?」

ステイシーから疑いの声。

当然といえば当然の反応だがそれにカリットはこう返す。

「この場では俺にしかわからない筈ですよ、信じて貰えなくてもそれが正しいのだからそうするしかない。そうしなければ、俺はまだ死ぬだけでいい、あなた方がそれを超える地獄に堕ちる。俺は、そんな事は耐えられない。」

彼の静かな、それでいて震えるほどの義憤、その燃え立つ眼光を見て、ステイシーはあえて軽く言った。

「人の良い事だなカリット・ベーコン。その言い種なら貴殿はまるで自分は生き残れるというのに我々に殉じると言っているように聞こえるぞ?」

そして急に怒りを含めた口調で言う。

「勇者を舐めるな。我々が死のうがどうなろうが先の可能性がある方を選べ。お前にとって認められなかろうが無駄に死ぬな、正しい判断をしろ。お前が言った事だろう、それが正しいのだからそうするしかない。」

だがカリットも引き下がらない。

「だから最初に退路を確保しようとした。無駄に死ぬのは俺じゃない、あなた方だ。最も賢明な判断はこの呪いに気付いた時点で撤退する事だったが貴女の強情で今このようになって、このままなら俺の強情で俺も死ぬ。けれど今上書きを思い付いた。そんな事だけで対処出来るのかは正直わからないが、して貰う。俺も死にたくないんだ、あなた方を見捨てるくらいなら死んだ方がマシでも、死にたくなんてないんだ。」

その真剣な言葉を受け、ステイシーは笑いが込み上げた。

「何だお前は?どこかで私に会った事でもあるのか?一目惚れでもしたか?そうでもなければ理解出来ん感情だよ、何なのだお前は?私が世界の全てか?んん?」

その馬鹿にした口調がカリットの逆鱗に触れる。

「理解出来ないならしなくていい、好きではなく嫌いなんだよ、女子供がひどい目に遭う事が、この世の何よりもな!!」

ビリビリとした凄まじい気迫。

「ほう?」

ステイシーは値踏みするような態度で、

「何だ、私に惚れている訳ではないのか。そうだな、考えてみればそれで貴殿に矛盾は無い。だが私は貴殿を気に入ったぞ、その甘さ、剛直さ、そして強さ、手駒に出来るなら是非そうしたいところだ。」

嬉しそうにそう言い、そして化物のような声が急に解除されて、

「では望み通り名を変えてやろう、今この場だけではあるが、これより私はステイシー・ベーコンだ。いや、ファーストネームも変えればならぬか?お前、妻にするならどんな名がいい?」

美しい声でまさかの恋愛アプローチ。

「な、なんでそうなるんですか?!」

思ってもみない展開につい敬語になるカリット。

そして自称ベーコン夫人は夫の初々しい反応に喜ぶ様子で、

「で、他は誰だ?良かったな、いずれ劣らぬ美しき姫を好きなだけ娶れるのだ、ここで死んでも悔いはあるまい?」

そんな風にからかって笑った。

名前を変えられればいいだけなのに何故全員と結婚する流れになっているのだろうか?

なおクッコロ隊の鎧乙女の中身の情報は名前と戦力価値以外完全非公開なので美人とは限らない。

とはいえステイシーの声は創作物のパターンとしては絶世の美女。

このふざけた世界でなら声だけ美人で中身ブスとかもやりかねないがさすがに誰も喜ばないし多分美人だろう。多分。

だが恥ずかしがっても時間をかけてもいられない、彼女らの命と尊厳がかかっている。

「ではあなたは今だけステファニー・ベーコンを名乗る事をお願い致す。冗談ではなく本気だ。」

ステファニーは何となく似たところから思い付きで付けた。

「偶然か?何故そなたは私のニックネームを知っている。やはり私を知っていて、惚れ切っているのではないか?」

どうやらあだ名だったらしいが本当にこれは偶然。

「しかし、ステファニー···か。貴殿はなんと欲の無い、いや、身の程を弁えた男だ。気に入ったぞ、それでいこう。」

ステイシー改めステファニーの思考では、花の冠、または王冠を意味するその名付けはつまり、家中では貴女こそが王であると認めたようなもの。

しかしカリットはそんな事は全く考えていないどころか知らず、ただ思い付きでそう言っただけ。

なのにクッコロ隊改めミセスベーコン隊は加工された悪魔のような声のまま彼の気前の良さにキャーキャー沸いている。

それを見てウザイヤツは呆れた。

「(ハッ、甘ぇなぁ嬢ちゃん方、この駆け引きはファミリーネームがミソなんだ。その王冠はあくまでもベーコン家の王冠、つまり主導権はくれてやるが当家の為に全てを尽くせって意味なのさ。そしてそれで得をするのはどっちか、いやはやこの場だけの知恵比べとはいえ、うちの大将は恐ろしいねぇ···)」

完全に偶然なのに勝手に深読みしてまた隊長への評価を上げている。

それはそうと形だけとはいえ妻に迎えねばならない対象はステフだけではない。

若干大きい上に目立つステフはともかく他はカリットからすると鎧の特徴が覚え切れず誰が誰だかわからないのでリストを見ながら改名対象を読み上げる。

ヤラレヤやツクァイス、他数名居たが、ネームドであるが故か揃って美女ばかりらしく本当は普段の姿を知っているのではないかと疑いがかかり、

「遊びでやってるんじゃないので真剣にお願いします。」

士気の弛みに苦言を呈するカリット。

行軍に差し支えてはいけないので移動と警戒を続けながらの仮名決め。

改名対象ではない人物が新しい名を望む等々のグダグダな展開もあったが思い付きなり募ったりで何とか全対象に名前が付き、所詮形式的なものとはいえカリットは数多くの美女を妻に迎える事となった。

まあ口頭で美女と言われてもこの場では鎧でわからないし、ここは一応異世界なのだから美的感覚自体が異なる可能性もあるのだけど。

その時突如悪寒が走り、勇者2人と索敵班、そして一部の強者達はこれまでにない強敵の気配を察知した。

それはここではない別の勇者達が苦戦を強いられている場所、敵からすれば優位に立てている場所、轟音の後、見せしめに今この瞬間、さっきまで勇者だった亡骸達が無残に千切られ掲げられた場所。

その気配こそがこの城の主、その名はクソ下衆野郎の並び替え、鬼畜魔王ソゲス・ヤローク。

勝てる相手に気配を消して近付き、罠に嵌めて奇襲をかけむごたらしく殺し、勇者を仕留めたという喧伝したい成果を得たならあえて気配を放ち屍を見せ付け士気低下を画策、だがそれだけではない。

カリット達の前にも現れる、事前に捕えられ改造されていた人質兼『人間爆弾』や、ただこちらの士気を下げる為に虐殺される人々や喰われる子供達といった、あまりにも残酷な光景がそこにはあった。

それはカリットを容易に発狂させ、怒りで我を失い鮮血を噴き出しながら覚醒した魔族の翼と考え無しに命を削る膨大な魔力消費で彼は、距離も、幾重にも仕掛けられた罠もブチ抜いてソゲスに襲いかかり、剣でなく素手で首を迎撃ごと千切り落とす。

だがそれでも魔王は全く死んでなどおらず、首と首の無い体は凄まじい速さで互いを繋げようと引き合い、それを最早人の姿ではなくなったカリットが冷たい目で再生が追い付く前に何度も、何度も、何度も、極大魔法を込めた拳で叩き潰し、散らし、消滅させて削り、お前は同族だろう、人間を屠る側だろう、俺を殺すな見逃せという身勝手な命乞いと実に魔王らしい強度、再生能力、反撃や付近の人間爆弾等を使い尽くす抵抗に飽き飽きしながら結果、単独でソゲスを抵抗ごと捩じ伏せ殺し尽くした。

自分が心を失い魔王以上の怪物と化してしまう事と引き換えに。

だが幸運にもそこでカリットは力尽き、気を失って人間の姿へ。

だが激し過ぎる反動が体を蝕み地獄の苦しみが覚醒と気絶を繰り返させる。

しかしこの城の主、魔王ソゲス・ヤローク撃破という当初の目標は達成された。

それでも戦いは終わらない。

情報には無かった敵がそこに来ていたからである。

ここに駆け付けたステフが、先に追い付いていたフォタスクが、命を捨てる覚悟で間に立ち護る後ろで苦しみ抜くカリットを物珍しそうに眺めている敵を見て皆が思う。

「(やはり他にも、格上の魔王···!)」

受け入れる以外何も出来ない苦痛の中、キャラクターとしてのカリットから激しい警告を伴って脳に飛び込むその記憶は、視界に浮遊する美しき魔王の名を苦々しく叫んでいた。

ケイ・ベントマ。

負けイベントを意味する六大魔王共通の守護者。

名前だけでわかる。勝ち目など、ない。

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