壮絶な最期
読んでいただいてありがとうございます。
この物語は今回で完結します。
読んでいただいた後、評価をしていただけましたら
とてもうれしいです。
どうぞよろしくお願いいたします。
ギュンターとパトリシアの騎士団は、多くの犠牲を出したものの、敵国の大軍勢をほぼ全滅させた。
しかし強敵は生き残っていた。
キミシル国はハンニバル将軍と魔人・ネロディウス。
ラルマ国はクリュード将軍と魔人・エルグラント。
彼らは騎士たちを続々と倒し、ミュンスター城前の広場へ攻め入ってくる。
そこに現れたのが、オオカミ亜人のアマーリアだ。
かつて酒場でユキオに会った、セクシーなミニスカの銅級冒険者だ。
「ユキオさん、久しぶり」とアマーリア。
「アマーリアさん、なぜここに?」とユキオ。
「私の一族はラルマ国の征服にあって惨殺された。ラルマ国とクリュード将軍を許すことはできない!」
城前広場に現れたクリュード将軍を見つけたアマーリア。
即座に刀で斬りかかっていく。
しかし長身で精悍なクリュード将軍は剣の達人である。
ひらりと身をかわすと刀を抜いてアマーリアに鋭い反撃。
なんとか急所はかわすものの、アマーリアの太ももから鮮血が噴き出す。
もはや捨てとなったアマーリア。
正面から突っ込んでいく。
クリュード将軍の刃がアマーリアをとらえる。
将軍の体に崩れ落ちるように倒れるアマーリア。
「アマーリアさん!」絶叫するユキオ。
ところが、今度は、クリュード将軍が口から血を吹いた。
アマーリアがもう一方の手で隠し持っていた短剣で、将軍の急所を貫いたのである。
そのころ、ミュンスター城内で異変が起きていた。
情報推進大臣のモナコが、
「ウェルシー財務相、こんな戦争が起きたのは、あなたが他国侵略計画を立てたせいだ」
とウェルシーに詰め寄る。さらに、刀を抜いて、
「あなたさえいなければ、こんな目にあわずに済んだのだ」
とウェルシーに斬りかかったのである。
逃げるウェルシー。追うモナコ。
カルロス国王の前で立ち止まるウェルシー。
再び斬りかかるモナコ。
スレスレでよけるウェルシー。
モナコの刀は、カルロス国王の急所に突き刺さった。
「おのれ、ウェルシー、はかったな……」
国王は悔しそうにつぶやき、果てた。
ウェルシーは城を出て広場を抜けて庭園に逃げ込む。
刀を持って追いかけるモナコ
ただごとではない、と直感したユキオはその後を追う。
人気のない庭園。ウェルシーがモナコに向かって不敵に笑う。
「みなさん、気づいてなかったでしょうが、キミシル国もラルマ国も実は私が操っています。どちらの国でも、私が仕込んだ悪魔教が広まっていますよ。その教えに従って、従順なる国民は、国の成長・侵略政策のためひたすら働き続けてもらう。従順でない者は投薬治療によって、恐れを知らない兵士になってもらうわけです」
「おまえは絶対におかしい!」モナコが叫ぶ。
今度はウェルシー、ユキオの方に振り返って言う。
「さてユキオさん」
ユキオが追いかけてきたのを気づいていたのだ。
「これに見覚えはありませんか」とウェルシー。
手にもっているのは「赤い仮面」だ。
カラビア国民を苦しめた大規模詐欺事件の首謀者「赤い仮面の男」。
それがウェルシーだったのだ。
「この仮面をかぶり、詠唱を行うことで私も悪魔に変身できるのだ。マビラージョ!」
ウェルシーの体が紫色に光り、その体から触手が伸びる。
その先は鋭利な刃になっている。
その刃が、ウェルシーを追跡してきたモナコの体を貫いた。
モナコがその一撃で絶命する。
それを見たユキオは、決戦の舞台である城の前の広場に逃げ込んだ。
あのウェルシーの触手に対しては、広い場所で距離を取らないと、簡単に体を貫かれてしまう。
一方、ソニアの目の前には、キミシル国のハンニバル将軍がいた。
ウサギ亜人国を侵略して彼女の家族の命と幸せな生活を奪った男だ。
筋肉隆々のたくましい体、無数の傷跡が百戦錬磨の実力を物語る。
ソニアが怒りの攻撃を仕掛ける。
「ソニアハンマー」
しかしこれをかわされ、ハンニバルの鋭い一振りがソニアを襲う。
鮮血が舞う。
ソニアの肩口をハンニバルの刃がとらえた。
手負いとなり、覚悟の表情になったソニア。
「爆裂ソニアハンマー!」
決死の特攻を敢行した。
ハンニバルを爆殺。
しかし自らも急所を突き刺される。
「ソニア―!」ユキオが叫ぶ。
ソニアの体からぐったりと力が抜ける。
「ソニア―!」
ユキオの絶叫が響く……。
そして最強の魔人たち。
魔人ネロディウスにはギュンター。
魔人エルグラントにはパトリシアが対峙している。
どちらの魔人も強大な黒魔法を持ち、人間を即死に追い込む。
「なすすべはないのか?」とギュンター。
エルフのルシアが言う。
「彼らの黒魔法には秘密があります」
「何だ?」とギュンター。
「あらかじめ結界を貼っているのです」とルシア。こう続ける。
「相手を近づけさせず、接近戦をさせないから、みな黒魔法の威力で即死に追い込まれたのです」
「確かに。魔人相手では一度も近くの間合いに入れなかった」とギュンター。
「私は白魔法で結界を解くことができます。でも相手に接近するわけですから危険を伴います」
「かまわん。やってくれ」とギュンター。
パトリシアも言う。
「私もお願いするわ」
「わかりました」とルシア。
「ではいきます、ブルボクーレ!」
と詠唱すると、魔人2人の体が白く光った。
「今だ!」
ギュンター、パトリシアが刀を抜く。
必殺の一撃を魔人たちに浴びせる。
無敵を誇った魔人が倒れていく。成功だ。
しかし代償は大きかった。
至近距離から魔人の黒魔法攻撃を受けた。
誇り高き騎士、ギュンターとパトリシアの体が崩れ落ちる。
「ギュンターさん! パトリシアさん!」
ユキオが叫ぶが、2人の返事はない。
満を持したように、赤い仮面のウェルシーがユキオのもとにやってきた。
「ユキオさん、あなたは野心がない。だからずっと無能なまま、死んでいくのです」とウェルシー。
「俺は無能のままでいい。有能なふりなんてしたくない」とユキオ。
「どこまでも嚙み合いませんね」とウェルシー。彼はこう吐き捨てる。
「では無能のまま消えてもらいましょうか」
ウェルシーが攻撃の構えに入る。
ユキオも聖剣ミスティザックスを抜いた。
ウェルシーの鋭利な触手がユキオを襲う。
これをユキオの聖剣が弾き飛ばす。
何度も防ぐと、ウェルシーは表情を変え、攻撃のスピードを上げる。
ユキオは攻め疲れを待った。
一瞬、呼吸が空いた。
ここしかない、とユキオは聖剣を振り抜く。
確実にウェルシーの体を貫いた。
勝利を確信するユキオ。
しかしウェルシーも間際に、最後の攻撃を仕掛けていた。
死角から飛び出してきた鋭利な触手。
ユキオの心臓を貫く、その瞬間。
ユキオの肩に隠れていたアイシルが、ユキオの前に飛び出した。
代わりにアイシルの体が貫かれた。
アイシルの体から鮮血が噴き出す。
「アイシル―ッ!」
ユキオが叫ぶ。
「なぜだー! アイシル―!」
「もともとユキオに助けてもらった命だから、ユキオにお返ししないと」
アイシルは苦しそうに微笑み、果てた……。
戦いは終わった。しかし――。
アイシル
ソニア
パトリシア
ギュンター
アマーリア
五人の亡骸を前に呆然とするユキオ。
ユキオは思う。
俺は国とか会社とか団体とか、
金とかモノとか世間体とかプライドとか
そんなもの、もうどうでもいいんだ。
ひとつ残らず消えてしまっていいよ!
ただ、
大事な存在だけは、絶対に失いたくないんだ!
もし、5人の命が救えるなら、
俺の命は消えてもかまわない。
回復魔法は「外科的治療」か「時間の逆行」かどちらかである。
「時間の逆行」は生存者にのみ有効。
死者に対しては禁じられている。
もし行ったら、施術者の命が代償になり、命を落としてしまうからである。
ユキオは5人の生存時に「時間の逆行」の回復魔法をセットする。
お願いだ、
アイシル、ソニア、パトリシア、ギュンター、アマーリア
これが本当に最後の詠唱だ!
「ヒーラ、スペリオーレ!」
どうだ、いけたか――?
誰も動かない。
しかし、やがて、パトリシアの長い髪が、かすかに揺れた。
それをはじめに、5人がゆっくり起き上がって行くのが見える。
成功だ。よかった、とユキオは思う。
しかし俺自身はもうおしまいだ、とユキオは悟っている。
人生の残りはわずか数秒だろう。
ルシアが言う。
「ユキオさん、しっかりしてください!」
ユキオはルシアに穏やかな表情で言う。
「俺は生きた、今度はちゃんと生きた。だからもう死んでしまってかまわないんだ」
「イヤです!」ルシアがきっぱりと言う。
「私はユキオがいない世界なんていらない。これからも私と一緒に生きてもらいますからね」
失いつつある意識の中、
「エスナケアル!」
ルシアの詠唱の声が、ユキオに聞こえた――。
(完)
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