モイリー油田にひそむ凄腕の美女剣士の正体
魔人・エルグラントか出現したモイリー油田に、いよいよ出発である。
4人を集め、転移魔法石を使って、
「ネストマージ!」と詠唱するユキオ。
ターバンにサングラス姿のユキオ、アイシル、ソニア、ルシアが、油田近くの海岸砂丘に降り立った。
青い空と海、白い砂浜。海岸には人の姿もなく、リゾートホテルのイメージ写真のように美しい光景なのだが、今やこれは殺戮後の静けさに過ぎない。
そこに背後から、いきなり斬りかかってきた殺気を感じたユキオは、とっさに体を回転させながらかわした。
カブトをかぶって鋭い刀を持った剣士である。
普通ならよけられなかった、鋭い剣筋である。
この殺気を感じさせてくれたのは、ユキオの体の中にとどまる、ルシアの白魔術による察知能力のおかげだった。
ユキオはルシアに目で感謝の視線を送る。ルシアが微笑む。
必殺の一撃を失敗した剣士の動きには一瞬、驚きの様子が感じられたが、すぐに態勢を整えて次の剣技を繰り出す。
がユキオが一瞬早く、
「フレーミングヒート」
と集中火炎弾を剣士の手元に発射した。
剣士の高速の刀の軌道はユキオの体をかすめて空を切っていく。
よく見ると剣士のかぶとの後ろには長い髪が下がっている。金属のヨロイの下には鍛えられた細身の体が隠されているようだ。剣を構える姿勢も端正で気品がある。
「ご主人様、助太刀しますです!」ソニアが言う。
しかしユキオは、
「必要ない。1対1で勝負する」と、ソニアを止める。
おそらく剣士の方も、ユキオの力量を見極めようとしている、ユキオはそう感じたからだ。
少し距離をとったあと、じりじりと間合いを詰めてくる剣士。
そして一気に斬りかかる剣士、その手元を狙い
「フレーミングヒート」と火炎を当てるユキオ。
刀の軌道が空を切る。
それでも今度は連続攻撃で、次々と高速剣技を繰り出してくる。
それをフレーミングヒートを使って、ことごとくよけていくユキオ。
剣士の息遣いが荒くなる。体を入れ替えながら攻撃をかわしたとき、かすかに剣士の髪が香った。
何か覚えがある、これはジャスミンの香り。明るくてエキゾチックでセクシーな甘い匂い。もしかして、
「あなたは、パトリシアさんではないですか?」
とユキオが叫ぶ。
剣士が動きを止め、ゆっくりとかぶとを脱ぐ。ポニーテールの美しい髪が揺れ、甘くていい香りがあたりに広がる。大きくクッキリした目、気品のある鼻筋と唇。間違いなくパトリシアさんだ。
「そういうお主は、もしかして冒険者のユキオか?」
「そうです」
「一気に気が抜けた」パトリシアはへなへなと腰を降ろした。




