ドレスデンの連続惨殺事件
ユキオ一行はモヤモヤを抱えたまま帰りの途につく。
何よりソニアである。
冒険者ギルドについて、ルシア、ハルミと落ち合う。
ユキオはハルミに
「小部屋を貸してもらえないか」と頼む。
ハルミは奥の事務室に一行を案内してくれた。
ユキオは、アイシル、ハルミ、ルシアを加えた4人で、ソニアに話を聞いた。あ
「さっき侵略国家・キミシル国の亜人征服の話があったけど、そのとき、ソニアは様子が変だった。何かあったのか?」
ソニアの目がみるみつうちにうるむ。顔がまた真っ赤に紅潮する。
顔を両手でおおってうつむき、声をつまらせて、むせび泣く。
しばらく涙が止まらなかったソニアだが、しばらくして、ようやく口を開いた。
「あのとき私はまだ子供だった。村のニンジン畑沿いの可愛い家で家族と暮らしていたのです」
ソニアが続ける。
「パパは村の相撲大会で何度も優勝する力自慢で ママはいつもキレイで料理も上手くて、2人とも私の自慢だった。兄弟は兄と姉がいて、いつも私を可愛がってくれた。私はいつもママのひざで甘えていたのです」
「とても幸せだったんだね」とアイシル。
「でも突然、キミシル国が私たちの国に侵略を開始したのです。でもウサギ族は強いから、私たちは、はね返せると信じていた」
「俺だってそう思うよ」ソニアの強さを知るユキオが同意する。
「最初はウサギ族の強い男たちで編成された戦闘部隊が相手の軍隊に勝ち続けたのです。しかしキミシル国の軍隊は莫大な兵力で、やっつけてもやっつけても次々に襲撃してくる。昼も夜もやって来る。キリがないのです」
「恐ろしい国ね……」とルシア。
「ウサギ族の人口は二千人ほどしかいない。数百人の戦闘部隊は力尽きて、ウサギ族は抵抗する力を失ったのです。やがて村はミナシル国の兵隊に襲撃され、家も焼き討ちされた。女の人は裸にされて、兵隊の男たちにひどいことされた。そしてママも兵隊に捕まって連れていかれて……」
ソニアの目から悔し涙が流れる。
「パパは戦い続けて命を落とした。ママは捕まったまま行方がわからない。兄も姉も私も、みな奴隷として手足をつながれて奴隷商人のもとへ連れていかれたのです」
「つらい思いをしたんだな……話してくれてありがとう」とユキオ。
「キミシル国を許すことはできない」ソニアが言う。
「俺も、ソニアをそんな目にあわせたキミシル国を許さない」
「ご主人様、ありがとうなのです」ソニアは、ユキオの胸にすがりついて泣く。
ユキオはうさみみの肩をやさしく抱きしめるとともに、人の平穏と幸せを平気で踏みにじる者への怒りを新たにするのだった。
ソニアが落ち着き、家に戻ろうとすると、ハルミが申し訳なさそうに、こう切り出した。
「ユキオさん、こんなときにごめんなさい。新しい事件が起きているの」
「えっ? またですか⁉」
「城下町のドレスデン町で2夜連続で、人が殺されているの。原因は不明なんだけど、その殺され方は、2件とも、首を斬られ、しかも猛毒を刺されているという特殊な殺し方なのよ」
確かに普通ではない、意味がわからない殺し方である。それにしてもハルミさん、最近はとても単なる事務員とは思えないところまで首を突っ込んでいる気がするが……。
「わかりました。明日、ドレスデンに行ってみましょう」
「今回も重大事件だから、賞金が掛けられています。ユキオさんは興味ないかもしれませんが……」
「ハハハ、俺が解決できるかわかりませんが、とりあえず調べてはみますよ」
ユキオは犠牲者2名およびその家族の住所をハルミに聞いてメモした。




