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侵略国家・キミシル国の亜人族征服……怒りに震えるソニア


 ギュンター騎士団長とユキオは戦闘態勢に入った。

 巻き添えになりたくない周囲の大臣たちは逃げ出す。 

 すると、今度は、カルロス国王が、王剣を抜いて立ち上がった。

 そして刀をを振り上げ、2人の間に振り下ろした。

「やめなさい!」

 カルロス王が、静かに、しかし、キッパリとした口調で言う。


 カルロス国王は、あらためて全員を席に戻らせ、落ち着かせてから言った。

「エルフ族とは争わない」

「なぜだ⁉」と叫ぶのはギュンター団長だ。

「エルフ族は飢饉に苦しむリエイダ市民に炊き出しを行っているのだぞ。いまやリエイダ市民のみならず、カラビア国の中にもエルフを賞賛する声が広がっている。こんな空気の中、エルフ族の討伐など行ってみろ。批判の声が王国に集中するぞ」

「うぬっ……」ギュンターがうなる。

「エルフを攻撃してはならぬ。よいな」

「承知した」無念そうにギュンターが絞り出す。


「確かにそうですね…今はエルフに触らない方がいいですね。今は……ね」

 ここで口をはさんできたのは財務大臣のウェルシーだ。

 思わせぶりな口調に、一同の視線がウェルシーに集まる。

「とはいえ、なにもしなければ我々にはもう先はないことも事実です。勇者アキラが魔人ネロディウスに惨敗して国民の間には大きな不安が広がっていますからね」

「ウェルシーの言う通りだ」

 カルロス国王が言う。

「モナコ大臣、今の国の現状を報告してくれるか」

「承知しました」とモナコ。さっそく始める。

「最も大きな脅威となっている魔人ネロディウスはマール町を全滅させた後、北部軍を壊滅させ、迎撃に向かった勇者アキラのパーティも退けました。アキラ以外は全員死亡、アキラも重症との話ですが程度は不明です」

「それでアキラはこの会議への参加を断ったというわけか」とカルロス国王。

「アキラはいま身を隠しているようで、誰も接触はできていません。使者を通じて『負傷治療中につき辞退』との回答でした」

「まあよい、続けなさい」と国王。

「その後も侵攻は続くおそれがあり、一帯のラインラント市民は全員が避難しましたが、ネロディウスは無人となったラインラント市内に、そのままとどまっています」

「なぜ攻めてこないのだ?」

「おそらく彼の狙いはラインラント町周辺の鉱山で採掘されている貴重な資源・テルチウムの独占です。現在、破壊された鉱山が修復され始めているらしいとの情報も入っています」

 そこでウェルシー財務相が口をはさむ。

「ラインラント鉱山を奪われたのが非常に痛いところです。国の財政の10%はこの鉱山の売上から徴収される税収でまかなわれていましたからね。国の財政は弱体化しますし、テルチウムを近隣諸国に輸出できなくなることで、わが国も他国に足元を見られるようになってしまう」

「そうだな」国王もまゆをひそめる。

「ネロディウスが侵攻してこない理由はもうひとつ」とモナコ。

「なんだ?」と国王。

「わが国の第一騎士団およびギュンター団長の名は他国にとどろいています。いくらネロディウスが強大でも、単独で攻め込んでも無傷では済まないと考えたのでしょう。また冒険者ユキオ殿の存在も他国や賊たちの間では警戒の対象になっているようです」

「ユキオの名が他国に知られているのか?」

「そのようです。吸血コウモリやヤマタノオロチが倒した一件が広がっているようです」

 誰も俺にかまわないでほしいのに、とユキオは心の中でつぶやく。モナコが続ける。

「逆に我々もネロディウスへの有力な攻撃手段はない。反撃を仕掛けても北方軍のように全滅するだけでしょう。ですから今はお互いに静観するのが得策と考えます」

「わかった」と国王。こう続ける。

「ウェルシー、何か考えはあるか?」

 国王が言う。ウェルシーが口を開く。

「ネロディウスに鉱山を奪われた今、カラビア国はもうこの先、やせ細っていくだけです。ですが、その反対に今、勢いを増している国があります」

「北隣のキミシル国のことか」とカルロス国王。

「そうです」とウェルシー。こう続ける。

「キミシル国は亜人の国々を侵略して植民地化を行っています」

「そうだな。すでに狼族、猫族、ウサギ族、鳥族、それぞれの亜人国家を侵略したと聞いている」と国王。

 ユキオは左隣が熱くなっているのを感じた。見ると、ソニアが顔を紅潮させて体を震わせている。黙ってはいるが、怒りに震えているように感じられる。

 ウサギ族の亜人と言えば、まさに、ソニアである。

 この侵略に、ソニアは何か関係してるのだろうか。ユキオは気になる。

 ウェルシーが話を続ける。

「キミシル国は、その戦闘力を活かして各国へ戦争を仕掛けて領土を拡大しています。帝国主義による国家拡大ですね。ですから……」

 ウェルシーはギュンターに目を向ける。

「ギュンター王国騎士団長が主張する、他部族への侵略は、あながち間違っているとはいえないのです。むしろ、わが国にとっては正しい選択かもしれない。エルフだけはタイミングが悪いですけどね……」

 国王がうなずいて言う。

「そういうことだな。侵略は、タイミング次第では悪にもなり、正義にもなる」

「カラビア国も、この先に生き抜いていくためには、絶対に成長戦略が必要です」

「そのとおりだ。何か策はあるのか?」

「ええ、成長していくためには、攻撃的な軍事力が欠かせません。侵略を正当化するためのシナリオは私が描きます。作戦の実行についてはギュンター王国騎士団長、頼りにしていますよ」

 いきなり話を振られたギュンターは

「う、うむ……」

 と当惑しつつ返事をする。

「そしてユキオさん」

 ウェルシーはユキオを見て、こう言う。

「あなたにも協力をお願いするかもしれない。そのときはよろしくお願いしたい」

「い……いや、」ユキオは慌てる。そして、

「最近、体調が悪くて……。ご期待いただくような働きはできません、無理です」

 と、訳のわからない言い訳で切り抜けようとする。しかしウェルシーは、

「あなたもこの国の一員だ。協力はしてもらいますよ」

 とピシャリ。ユキオは何も言い返せない。

 いつものままだ、とユキオは思い、情けないと思う。

 カルロス国王が言う。

「よし、今後のことはウェルシー財務相のプランを待とう。頼むぞウェルシー」

「お任せください」

 そして緊急御前会議は終了した――。




 

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