表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/65

エルフの驚きの情報ネットワーク、そして王女ルシアが秘めた白魔術

 エルフ族のウィルランド国王の前に、一人の伝令エルフが駆け込んできた。

 慌てた表情だ。

「国王様、緊急の連絡が入りました」

「皆の前でもかまわない。伝えてみなさい」と国王。

「魔人・ネロディウスの件です。カラビア国の国王指令で本日、勇者アキラとパーティがラインラント市入りました。ところがネロディウスの虐殺に合いパーティの仲間は全滅。勇者アキラも重傷を負って敗走したとのことです」

「うむ、ご苦労であった。ありがとう」

 ウィンランド国王は伝令のエルフを下がらせた。

「私たちは各国に『エルフの森』を持っている。その間で情報交換が行われているのです」

 すごい情報ネットワークが作られ、重要情報はすぐに伝わっていくようだ。

 だからこそ、ユキオが討伐を命じられていたことも、最初から知れ渡っていたのである。

 国王がユキオに言う。

「カラビア国も大変ですな」

「魔人ネロディウスの脅威は、いずれ国全体に及んでくると思います」とユキオ。

「そうなると我々エルフ族も標的にされるだろう」と国王。

 ユキオが言う。

「勇者ユキオはカラビア国の切り札でした。これを破られたことのショックは大きい。私自身もネロディウスに対抗する手段が見つかりません。今の私では戦っても敗れるでしょう」

 ウィンランド国王が言う。

「おそらく魔人ネロディウスが使っている魔法は圧倒的な力の『黒魔法』だろう。これは冒険者や勇者が使う『火』『風』『水』など通常属性の魔法を完全に打ち破ってくる。勇者アキラが通用しなかったのも、おそらく通常魔法で対抗したからだ。いくら勇者の能力が高くても相性が悪すぎる」

「何か打開策はないものでしょうか」とユキオ。

「黒魔法に打ち勝つ可能性があるのは白魔法だ」

 とウィンランド国王が答え、こう続ける。

「わが娘、ルシアが白魔法のとてつもない才能を持っている。まだ修行中の身だが、これから”愛”と”神への献身”を身に着けていけば、偉大な魔法師になる可能性がある」

 ユキオが言う。

「ルシアさんに期待したいです。私も白魔法の”回復魔術”だけは使えますが、それだけですから。ルシアさんの才能は全世界を救う可能性がありますね」

「そうなのだ……」

 と言ってウィンランド国王は少し考え込む。そしてこう言った。

「どうだろう、ユキオさん。ルシアをしばらく預かってはいただけないだろうか」

「えっ⁉」

 ユキオは、あまりに意外な提案に驚く。ウィンランド国王が言う。

「もちろん、まともじゃない提案だということはわかっている。隣にいる母親のエステラも不安だろう。昨日まで見ず知らずだった男に娘を預ける。しかもそいつは、わが国を征伐しに来ている敵なのだから。しかし実際に話してみてわかるのは、ユキオさんが、所属している国の方針や、世論や常識に左右されて物事を判断していないことだ。すべて自分自身の頭で考えて行動を決断している」

「それはほめられたことじゃないかもしれませんよ。私はいま、とことんわがままに生きているだけですから」

 ウィンランド国王は首を振る。そしてこう続ける。

「ユキオさんはこれまでとことん辛い経験をした。それが私にはわかる。だから周りに振り回されない。なおかつ自分の頭でしっかり考えて判断する。そこに価値があるのだ。貴殿のこれからの冒険にルシアをお供させてほしい」

「でも、ルシアさんは故郷を離れるのはイヤでしょう」とユキオ。

 するとルシアが口を開く。

「私も外の世界、広い世界を見てみたいです。ユキオさん、お願いします」

 アイシルが鬼のような顔をして、

「スケベ男! また新しい女をタラシこんだわね!!」

 とテレパシーを送ってくる。

 いや、まったくお誘いしたりはしてないんだけど、とユキオは思うが、結果的にはそうなってしまったのだから仕方ない。

「私でよければ、大切にお預かりさせていただきます」とユキオ。

 ルシアは嬉しそうに大きな瞳を輝かせている。白いほおはかすかに紅潮している。こんなステキな娘の期待を裏切る訳にはいかない。しっかりしなきゃ、とユキオはあらためて思う。

 ユキオはウィンランド国王に言う。

「今回はお願いばかり申し上げて申し訳ありません。私どももギブ&テイクで何ができるかを持ってきたいと思っております」

 国王が答える。

「かまわんよ。いきなり攻撃されるかと思っていたから、話し合いから入ってもらって本当に良かった。私はカラビア国はあまり信用していないが、ユキオさんとの話はとても楽しく興味深かった。リエイダ国への食料は、これからすぐに森にお願いをしてみよう。そして今日、リエイダ国での炊き出しも行おう。ただし50人の行方不明者については、これから確認のうえ交渉して、身柄をどうするか決めよう。そしてルシア、今日からユキオさんにお供するかい?」

 ルシアはすぐに、

「はい! これから準備いたします」

 とログハウスの中に駆け足で戻っていく。


 日の光りがピークを過ぎたころ、すべての準備が整って、ユキオたち一行はリエイダ市に向かった。エルフ族の炊き出し要員もお借りしている。

 リエイダの市街地に着くと炊き出しを開始した。ソニアも、得意のパスタを作る。新メンバーのルシアも得意料理のボルシチを作ってくれた。美味しそうな匂いにたまらず、みるみる集まってくる市民。エルフの森の恵みが満載のパスタや鍋料理を、夢中で味わう。男も女も、老いも若きも子供も、だれもが感謝の思いでいっぱいだ。おなかいっぱいになったのは何日ぶりだろう。幸せに涙がこぼれる者もいる。

 ソニアとルシアは早くも意気投合した様子だ。

「私、ユキオさんに付いて行って良かったです」

 とルシアが言えば、

「ご主人様は最高なのだ」

 と笑顔で答えて、手をつないで喜ぶ。

 アイシルは少し複雑そうな表情だが…すぐに打ち解けるだろう。

 炊き出し終了後は、リエイダ市民がエルフの森に向かって大きな「エルフ」コールを送った。森のエルフ族にもウィンラント国王たちにも、きっと届いていることだろう。


(第三部終了 第四部〈悪魔の侵略国家編〉に続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ