エルフ族との遭遇。いきなり「討伐」に来たことがバレる!
ユキオはアイシルとソニアを連れて、エルフの森に隣接するリエイダ市に入った。
その市街に入ると、ユキオはすぐに異変に気づいた。市内の商店や市場がほとんど閉まっている。食堂も開いているところがない。
住民に話を聞いてみると、2ヵ月ほど前からリエイダ市は異常気象に見舞われ、農作物や畜産、養鶏場の生産被害が続出していた。そのため深刻な食料不足に見舞われており、このままでは餓死する家庭も出てきそうな状況なのだという。
行方不明者が出たと聞いている一家の「ソト家」を訪ねてみると、
「主人のシャビエルが『食料を探しに行く』と言ってエルフの森近くに向かったきり戻ってこないのです。これで4日目になりました」
と妻のベルタさんが悲痛な声で言う。かといってエルフに対して怒りを覚えている風ではない。
「エルフが人間を拉致したとは考えないのですか?」
とユキオが聞くと、ベルタさんは、
「考えもしなかったわ。だってエルフさんたちは争いごとを誰も好んでいないようで、平和的な人たちでしょ。ときどきこの町を歩いていることもあって、エルフさんたちはすれ違う時に目を合わせてほほえみかけてくれるのよ。人間よりずっと礼儀正しくて優しいわ」
「そうなんですね」とユキオ。
「ええ、だからシャビエルがエルフの森の近くにいたとしても、エルフさんたちから拉致してくることなんてないと思うわ」とベルタさん。
家の中では子供2人がぐったりと身を寄せ合って座っている。よほど腹が減っているのだろう。
ほかの行方不明者の家庭を訪ねたが、ほとんど同じケースで、食料を探しにエルフの森近くに行って消息を絶っている。しかしエルフ側が拉致したとは思っていない。
ユキオはアイシルに相談する。
「こんどはエルフの森の方にも行ってみたい。拉致にあうかもしれないけど、いいかな?」
アイシルが言う。
「いいわ。エルフに接触しないと始まらない。もし向こうから来てくれたら話が早いかもしないしね。何かあったら、私が助けてあげるわ。精霊と妖精エルフって案外似た者同士かもしれないしね」
「わたしもそれでいいのです」と、ソニア。
さっそく3人でエルフの森の壁の近くに向かった。いったんいちばん近い壁のところまで移動し、そこからエルフと外界との通用門と言われる場所に向かう。それまでにエルフに会えなければ、通用門で出入りするエルフを待つつもりだ。
エルフの森の壁は赤いレンガ作りで立派に作られていた。簡単によじ登れるものではない。おそらくロープなどをひっかけないと上まで行けないだろう。
城壁に沿って歩いていると、さっそくエルフの男性が向こうから歩いてきて、声をかけてきた。
「こんにちは。エルフの森に何か御用ですか?」
「はい。私は冒険者のユキオと言います。こちらは冒険の手助けをしてくれる精霊アイシルと、亜人のソニアです」
「みなさん、どうぞよろしくお願いします。私はエルフのことを対外に知っていただく役目を行っている、渉外マネージャーのヴィクターと言います」
「そんな仕事があるのですか?」
「ええ。でも私はエルフの中でも変わり者ですよ。ほとんどのエルフは日常的な仕事など持っていなくて、必要に応じて移動したり、作業したりするだけです。職業という考え方はありません」
「でもあなたは仕事を持っている。なぜですか?」
「とりわけ人間にとってですが、とにかくエルフという種族が誤解を受けやすいからです。職業がないというと、ずっと怠けている種族と思われがちですが、人間でいう「仕事」がないだけで、みな、それぞれが抱えている、あるいは考えている「使命」に合わせて活動しているのです。私はエルフ族のことを他の種族にも、ちゃんと理解してもらいたいのです」
ユキオは初めて仕事に「志望動機」をしっかり持っている人と出会えた、と思う。うらやましいが、自分もそうなりたいとは思っていない。どちらかといえば自分はヴィクター以外のエルフと同じタイプかもしれない、と勝手に思いこむ。
「ユキオさん、それはさておき」
ヴィクターの声で、ユキオはもの思いから現実に戻る。
「あなたが『エルフ討伐』を命じられた、冒険者ユキオさんなんですね?」
ユキオは、また驚きである。
「なぜ、それを?」
「わたしたちエルフは人間界にも同胞が多いんです。だから情報は伝わりやすい。昨日のリヨン城での出来事も今日には私のところに入ってきました。で、ユキオさん、あなたはエルフを討伐するのですか?」




