鬼の騎士団長・ギュンターの超絶剣技がユキオに炸裂! 殺し合いを求める国民の大熱狂
今度は国民の前で余興の相手か……とユキオはまったくやる気がない。
試合が組まれたところで、戦う振りをしながらサクッと負けるつもりだ。
広場に降りたギュンターとユキオ、それぞれに木刀が渡された。
審判はウェルシー大臣が務める。
「では1本勝負とする。持っているのは木刀だが、もしこれが真剣ならば致命傷となる一撃を浴びせた方が勝ちだ。相手を戦闘不能に陥らせた場合も勝ちとする。では、始めッ!」
ギュンターが攻撃を仕掛ける前に、威嚇するように木刀を一振りする。
するとすごい風圧が巻き起こり、ユキオは吹き飛ばされそうになった。そしてあまりの振りの速さに、空気との摩擦で火が起こり、木刀の焦げた匂いがただよった。
とんでもない超絶剣技の威力とスピードである。
この男、人間だが、人間をはるかに超えている。
かすりでもしたら、骨折どころではすまない。即死ものだ。
ギュンターはやる気満々だ。狙いに来ている。
しかも騎士団長の実力だ。まともに深い一撃を浴びたら、おそらく、骨折くらいでは済まない。
ここは反則を使うしかない。
ギュンターが踏み込んだ瞬間、ユキオは
「フレーミングヒート」
と小さく高速で詠唱して彼の手元あたりに炎熱を発射した。
「うくっ!」
とギュンターが叫び、振り下ろす剣の軌道がずれる。
剣先はユキオをかすめて空を切った。
スピーディな攻撃、ギリギリの回避。スリリングな攻防。
国民から大歓声があがる。
どちらを応援するのでもない。カルロス国王の演説で興奮さめやらない民衆が、打ち合い、殺し合いを見たがっている声だ。おそらく、残酷な結末を求めている。
自信の剣撃をよけられたギュンターが舌打ちをする。
「今、かわせたのは、まぐれだ。今度は仕留める」
ユキオからの迎撃にはまったく気づいてない。
すぐに斬りかかってくるギュンター。再び、
「フレーミングヒート!」
ユキオが発射すると
「あじっ!」
とギュンターの剣先がぶれる。剣の軌道はユキオの袖口をかすっただけだった。
またしても観客から拍手と大歓声。口笛も飛び交っている。
「キサマ、俺に何をした?」
ギュンターは異変に気づいたようだ。
フレーミングヒートをまともに当てたら、ギュンターの手が灰になってしまう。だから威力をごく微量に絞って、ギュンターの手元に当てている。
それがユキオの答えだが、もちろんバラすわけはない。
なりふりかまわず今度は剣を横振りで当てに来るギュンター。迎撃するユキオ。
「フレーミングヒート!」
今度はギュンターが踏み込む足に浴びせて、ユキオ自身はバックステップで交わした。
ユキオ自身も戦いの経験で、敏捷性がアップしている。
「おのれ!」
何度も斬り込んでくるギュンターだが、ユキオは「フレーミングヒート」で剣の軌道をブレさせ続ける。
もう観客からの歓声はしばらく起きていない。
観客のテンションもやや下がり、微妙な空気も漂い始めた。
演説台で見守っていたカルロス国王が、大きな声をあげた。
「これにて終了! この勝負、引き分け」
最後は膠着状態だったものの、予定外の白熱ショーを見られた観客からは大きな拍手が起きた。カルロス国王が言う。
「この勝負は冒険者ユキオの力を目の前で見てもらうために組んだものだ。これで、わかっただろう、皆さん。騎士団長ギュンターと互角に戦った冒険者ユキオに、ミッションを任せてみようではないか」
ここで国民から拍手と大歓声が起きた。
「いいぞ、ユキオ」
「遠征、頑張れ~!」
再び地鳴りのように声が響く。
アキラは苦虫を噛みつぶしたように悔しそうな顔をしている。
それよりギュンターである。鬼のような顔でユキオをにらんでいる。
ユキオに近づいてそのえり首をつかむ。
「キサマ、魔法を使ったな?」
ユキオは無抵抗のまま、
「企業秘密です」
とだけ答える。肯定しているようなものだが。
「キサマがそこそこやるということはわかった。しかし周囲の人物を自分の都合のいいように巻き込んでいることは知っているぞ。しかも女連れでこの場に来やがって! 今度会ったときは、本気で潰してやるからな」
そこまで言い放って、ようやくギュンターはエリから手を離した。
ユキオはせき込んだ。すごい握力で首元を締められていた。
ギュンターは言うだけ言うと、すぐにソッポを向いて去っていく。
面倒くさい相手がまた増えたな、と思わずユキオはため息をついた。
帰ろうとするユキオにウェルシー大臣が兵団の一部の提供を申し出たが、ユキオは丁重にお断りした。そんな物騒な集団を連れていけば、逆に向こうがこちらに先制攻撃を仕掛けてくるだろう。
カラビア国側から依頼されたのは「エルフ討伐」だったのだが、まずは人間側とエルフ側、双方の状況を知ってから問題に対処したいと思ったのだ。




