300人を1日で惨殺! 戦慄の魔人・ネロディウス
翌日の朝のミュンスター城の前には、おそらくカラビア国のすべての国民が集まったのではないかと思うくらい、圧倒的な人数が集結していた。
そんな大観衆が集まるなんて思ってもみなかった。しかし、もはやここで帰らせてくれるような雰囲気ではない。念のため、ソニアには肌の露出が少ないメイド服を着せてきてよかった、とユキオは思う。
国王のカルロスは城のバルコニーに急造された演説台に立ち、堂々と落ち着き払っていた。
ユキオとソニアは、演説台の後ろ側に、国の大臣たちと並んでいる。
その並びには、五月女アキラとそのパーティもいる。
「カラビア国民の諸君!」
カルロス国王は張りのある声で呼びかける。
「本日は集まってくれてありがとう」
国民から大きな歓声があがる。
「いま、この国は!」
ここで一拍開けて、
「重大な危機を迎えている‼︎」
とひときわ大きな声。
さっきとはうって変わって、しんと静聴する国民。
「魔人ネロディウスの出現で、ラインラント市のマール町の住民300人の尊い命が、一日にして奪われた。つい、きのうのことだ」
民衆が顔を見合わせ、ざわつき始める。
カルロス国王が続ける。
「ある者は切り刻まれ、ある者は首を締められ、ある者は炎熱で黒こげにされた。それを見て逃げ出した一家には硫酸の雨が浴びせられ無残に殺された」
聴衆が青ざめていく。生唾を飲む音がひびくほど、みな声を失っている。
「マール鉱山はご存じの通り貴重な資源・テルチウムの産地だ。マール町の住民はみな豊かで平穏な暮らしをしていた。誰も戦う準備など備えていない。抵抗することなどできず、ネロディウスの視界に入った者は、子供も女も容赦なく、誰もがむごたらしく殺されたのだ」
国王は悲し気に目を閉じる。
「数時間後、我が国の北部の軍隊が駆け付けた。しかし北部軍の武器はネロディウスには全く効果はなかった。砲弾を嵐のごとく浴びせたが傷ひとつけられない。騎士たちの刀も同じだ。斬りつけようと接近した者はみな住民と同じように首をはねられ、八つ裂きにされてしまった」
王は無念そうに首を振る。
「いま北部軍はラインラントの町境に防衛線を敷いて、なんとかネロディウスの侵攻を食い止めている。しかし時間とともに、どんどん犠牲者が増えており、これも全滅を迎えるのは時間の問題だ」
ここで、王は国民を見渡しながら、
「そうなってしまえば、われわれも全員がマールの町民と同じ運命をたどることになる」
聴衆の目はカルロス国王に釘付けになっている。
「私は愛する国民をそんな目にあわせたくない。みんなの痛みは、私の痛みだ。あなたたちの死は、私の死だ!」
民衆からすすり泣きの声が聞こえる。
「私はこの命に替えてでも、みなさんの命を守り抜く!」
聴衆から嵐のような声が湧き上がる。思い思いに叫び声をあげ、何を言っているのか聞こえないほどだ。
国王は大きくうなずく。そして言う。
「これまでの歴史が証明しているように、なにも準備をしていない国はあっけなく滅ぶ。エルミ国もフビライ国も、一時は世界を征服する勢いだったが、魔人の出現によって3ヵ月もたずに滅んでいった」
王が右手でこぶしを握って振り上げる。
「しかしわれわれは、知恵と勇気をもって生き抜くのだ! そのために、私は、この国を救う男を探した!」
王は右手を大きく広げて
「いでよ、勇者アキラよ!」
と叫ぶ。
アキラがパーティの仲間を引き連れ、マントをひるがえしながら、さっそうと登場する。
国民たちから割れんばかりの大歓声がまた、湧き起こった。
「ありがとう! 勇者さま」
「私たちを救ってください」
アキラへの期待、応援、激励、懇願、地面が揺れるほどの声が響き渡る。
その背後のパーティメンバーも民衆の期待に応えるに十分だった。
屈強な剣士、頭を丸めた精悍な僧侶、美しい女性の魔法師。もう一人はマシンガンのようなものを手にしていることから武器の手配師だと思われる。超強力なそうな布陣だ。
カルロス王がアキラのプロフィールを紹介する。
「彼は過去100年に存在したことのない超S級の素材だ。高いリーダーシップ、最高の運動能力を持つ肉体、そして頭脳も天才である」
国民が一斉にアキラを賞賛し、アキラコールが起きる。




