ユキオ、アイシルとソニアのため、新居の大風呂を炊く
新居に帰ったのは少し日がかげり始めたころだった。
ほどなく、ドミニク不動産&商店からの荷物が届いた。大きな荷馬車に、ソファやテーブル、キッチンセット、薪などが積まれている。部屋へのセッティングや掃除は、ドミニク社の人たちも手伝ってくれた。本当にサービスが行き届いた企業だ。
がらんとしていた部屋も、家具がそろうと、ステキな部屋に様変わりした。
時刻も夕方から夜に向かい始めたので、部屋のランプをすべて灯ける。
するとロマンチックな雰囲気が出来上がる。素晴らしい、とユキオは感じる。
このあとは料理と入浴がある。それを可能にするために、ユキオは燃料の薪を運んでキッチンの窯と浴室の窯にセットした。
もうひとつ、完全に夜になる前に、しておかなければいけないことがある。
キッチン、風呂、トイレの水回りの確認だ。
まずユキオは午前にドミニクから聞いた井戸の位置を思い出す。
玄関と門を結ぶ石畳の横に作られている。いまは生い茂った草で見えなくなっているが、玄関から10歩ほど歩いた位置だ。
雑草をかきわけながら鎌で刈り取っていくと、そこに井戸が現れた。しかし、昔話に出てくるような、大きな石の円筒の真ん中に桶が吊るされているタイプではない。
水道管とレバーが設置されており、レバーを引くことで地下の水をくみ上げる「井戸ポンプ」タイプである。
ユキオは心からホッとした。もし桶でくみ上げるタイプであったら、くみ上げた水をそれぞれの水場へ自分の足で運ばなくてはならない。それはとんでもない労力を使うことになる。いざとなったらそれも覚悟していたが、近代的な井戸ポンプにユキオは心から感謝する。
井戸ポンプは3基作られており、それぞれの配管の方向を見ると、キッチン、風呂場、トイレの貯水タンクにつながっているようだ。まずはそこに水をためることからスタートだ。
アイシルとソニアが楽しみにしている大きなお風呂のために、たっぷりと水を汲もう。
ユキオは3基をそれぞれ20回ずつ下まで押し下げていった。息が上がり、額から汗が流れる。呼吸が限界になるころ、ようやく作業は終わった。でもこれで水回りが確保できるのなら、楽なものだとユキオは思う。
さあ風呂まであと一息。ユキオは浴室に移動して浴槽の蛇口をひねった。先ほどくみ上げた水が貯水タンクから勢いよく流れてくる。
と同時に浴室の窯の着火装置で薪に火をくべる。この着荷装置は現代のライターのように、オイルと火打石を利用して発火させているようだ。
水がある程度たまったところで、ユキオは水を止めた。あとは火をつけて待つだけだ。




