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美尻の女騎士・パトリシアは抱いたら甘いバラの香り

 21時、ソニアとアイシルはもう眠りについていた。

 ユキオはパトリシアとの約束のため酒場に向かう。

 ちょうどくらいの時間に着くと、パトリシアはもうテーブルで果実酒を飲んでいた。

「お待たせして申し訳ありません」

 ユキオが謝るとパトリシアは、

「いやかまわんよ。ちょうど今が約束の時間だ」

 と柔らかい表情を浮かべる。昼間の凛々しい表情とは別人のように女の子っぽい。

 ジャケットを脱いでいるから、すべすべな白い肩と、ぶるんとした胸のふくらみが押し合う谷間がなまめかしい。その割に細くしまったウェストがセクシーだ。そしてなによりミニスカ越しのお尻の形はキュッと上向きで絶品といっていい。

 でもあまり見ていると不敬罪で切り捨てられるかも、と思ってユキオは視線を下に向ける。

「ユキオ殿、今、私の体を見てただろう」

 ユキオは焦って

「いえ、…はい。…すみません」

 と訳のわからない返事を返す。パトリシアさんは珍しく笑って、

「いいんだ、全く見てもらえないのもさみしいものな…」

 と返してくる。

「さて……」

 いい雰囲気だったが、パトリシアさんは、すぐに真顔に戻って、

「ユキオ殿、一番知りたいのは、昼間の取り調べのことだったな」

 という。さすが孤高の騎士・パトリシア様だ。こう続ける。

「あの8人のなかでリーダー格を務めていたのはヤーコブという男だ。とにかく口がうまくて、彼が投資の話をもちかけて、各家庭を投資詐欺にハメるきっかけを作っていた」

「露店商人のヤーコブ、あの8人の中にいたんですね」

 とユキオがいうと、パトリシアはこう答える。

「そう。ヤーコブは金欠に苦しむ貴族を使って〈王族も貴族も投資で儲けてます〉という三文芝居をさせて、ターゲットを信用させた」

「なるほど」

 ユキオがうなずく。パトリシアが続ける。 

「だけどヤーコブは組織の手足になって命令通り動いているだけの男だ。真のキーパーソンではない。だから、彼をいくら叩いても、この事件の本当の黒幕にはたどりつけない。もちろん、ほかの7人にしてもだ。だけど……」

 パトリシアはあらためて、ユキオの目を見て言う。

「今回の収穫は、被害を受けた各家庭が特定されたことだ。このリストを、ユキオ殿にもお渡ししておこう。その相手に丁寧に寄り添っていけば、事件はいずれ収束を迎えるはずだ」

 ユキオはパトリシアから名簿のリストを受け取り、

「ありがとう。解決を急ぐよ」 

 と約束する。

 そんなユキオを見て、パトリシアが微笑む。

 再び穏やかな表情に戻った彼女は

「ところでウォルフガングのことなんだが……」

 とは話題を変えてきた。こうユキオに聞いてくる。

「金儲けばかりのエぐい商人だと思っているだろう」

「まあ、そうですね」

 ユキオが正直に答えると、パトリシアは、

「私が言うような話ではないんだが……」

 と前置きしたうえで、しんみりとこう語りかける。

「ウォルフガングが扱う奴隷は、人間族とは異なる特徴を持った亜人や獣人がほとんどだ。彼らは主人と奴隷という関係ではあるが、お互い足りないところを補い合う人生のパートナーとして歩くことができる場合が多い」

「そうですね」

 ユキオは同意する。パトリシアがこう続ける。

「しかし人間が人間を奴隷として扱う場合、その末路はどうなると思う?」

「あまり、想像できませんね」

 こちらもユキオは正直に答える。なにしろ前にいた世界では奴隷制なんて数百年前に廃止されているから……。パトリシアは悲しい目をして、こう言う。

「よくて愛玩用、しかしその多くは実験用、臓器提供用、場合によっては食肉という闇市場もある。悲惨な末路をたどるのだよ」

「パトリシアさん、忠告してくれてありがとう」

 とユキオは礼を言って、こう続ける。

「ウォルフガングさんを少し誤解していたみたいです」

 パトリシアもうなずく。

「本当の敵と味方を見極めるために、我々はもっと心の目を磨かなくてはいけないのかもな」

 求道者のパトリシアさんらしいセリフだ。

「夜も更けた。飲みすぎないうちに、我々も帰ろうか」

 いつの間にか、店の中の客もほとんど帰っていた。パトリシアさんが言う。

「今日は久しぶりに楽しく、酒も旨かった。また飲もう」

「俺も今日は本当に助かりました。今後もお付き合い、切にお願いします」

 別れ際パトリシアとユキオはハグをした。彼女の髪と首すじからはバラの香りがした。騎士と冒険者らしくないカジュアルな挨拶。これも2人がお互いに何かの魔法にかかった気分だったかもしれない――。




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