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すべてはこの男のシナリオ通り……ハメられたユキオ

 地下牢の先に、明かりが着いている大きな部屋があった。

 ここに闇奴隷商人グループが集まっているようだ。

 彼らの声が響いてくる。

「借金取り立ての進捗を確認するぞ! ザロモン家に貸した300万金貨はどうだ」

「100万までは取り立てました。でももう、ザロモンは親族知人に借金をしまくっており、これ以上は絞り取れず限界のようです」

「ではザロモン家の子供たちも闇マーケットに送ろう。ザロモン家の子供3人連れてきて地下牢にぶち込め」

「了解しました」

「次はイェンス家200万金貨の件だ。」

 悪党たちのやりとりが続く中、ユキオはアイテムボックスから、毒サソリが入った麻袋を取り出す。

「アイシル、そろそろ、サソリを昼寝から起こしてあげてよ」

「了解よ、ユキオ」

 アイシルが、

「リウェイク!」

 と詠唱すると、すぐに麻袋が、がさがさと騒がしくなった。

 ユキオは少し空いている窓のすきまから、毒サソリを彼らの部屋の中へすべて送り込んだ。

 寝込みを起こされて不機嫌な毒サソリ軍団が、アジトの一味たちへやつ当たりをしに向かっていく。

 5分ほどすると、中にいる男たちが騒ぎ始めた。

「痛ぇ~ッ! 何かに刺された」

「おい、何かいるぞ」

「サソリだ! 毒サソリだ!! なぜ、こんなところに入ってきたんだ?」

「逃げろ! 刺されたらヤバい!!」

「こいつに刺されたら致命傷になるぞ!」

「おい、置いていくなよ。刺されたところが痛い!痛い! 血清はどこなんだ」

 阿鼻叫喚の叫び声を上げながら、男たちが必死に出口に向かって逃げる。その数は8名。

 ユキオはアイテムボックスから転移石を取り出した。

 さっき回復魔法を使ったから、もう体力があまり残っていない。

 もう今日使える魔法は、この1回きりだろう。

〈ネストマージ!〉

 ユキオが詠唱すると、ユキオとアイシルは、隠し通路の入口に戻った。

 ユキオはここで待ち構えて、隠し通路から出てきた8人の男たちをこらしめて、事情を聞いて真実を明らかにして、子供たちを助けるつもりだった。


 だが、隠し通路の入口にはなぜか、ウォルフガングがいた。

「なぜ、ここにいるのですか?」

 ユキオが聞くと、彼はニヤけながら、

「フフフ、蛇の道はヘビですから…」

 とだけ言う。

 来ているのは彼だけではない。まったく予想だにしなかった、かなり大勢の人間がそこは集まっていた。総勢30人くらいはいるだろうか。

 その中心にいるのが、長くキレイな髪をポニーテールにまとめて、さっそうと白馬に乗っている美しい女剣士・パトリシアだった。

 彼女が引き連れてきたのが、第二騎士団の部下たちだった。

「ユキオ殿、ご苦労であった。さきほど、ソニア殿から預かった子供たち30名を無事、保護した。今、先発隊だった別の部下たちが城に戻って、子供たちから事情を聞いている」

 なんだって⁉ ってことは、ここまでがすべてシナリオどおりだったってこと?

 ユキオはウォルフガングをにらみつけた。シナリオを描いたのは、この男だ!

 彼は楽しそうに高笑いしている。

 もうこの人には、何をやったって勝てっこない。ユキオは深いため息をついた。

 そのとき、隠し通路から、アジトにいた8人の男たちが出てきた。

 第二騎士団の屈強な男たちが、彼らの身柄を確保する。

「子供たちを誘拐・拘束した疑いがかかっています。取り調べのため、城まであなたたちを連行します」

 結局、事件のすべてはカラビア国の第二騎士団にゆだねられてしまうことになった。

 本当はすべて、自分の手と足、目と耳で事件の真実に迫りたかった。そうでなければ、すべてをウヤムヤにされて、何もなかった、で終わらされかねない。

 これでは前の世界と同じだ。ユキオは悔しくて仕方なかった。


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