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地下牢で餓死寸前の子どもたちを救出せよ!

 秘密アジトに潜入したユキオたちを、毒サソリ軍団が待ち構えていた。

 しかしそこに高速で飛び出した影がある。

「えいっ!」

 ソニアだった。目にも止まらぬ速さでサソリ軍団に接近すると、ピンセットで毒針を持つ尾の先端を的確にはさみ、そのまま毒サソリの体を摘まみ上げて麻袋に次から次へと放り込んでいく。30秒もかからない早業ですべて捕え終わるとソニアは袋の口を縛った。

「よくそんな道具、用意しているね」

 ユキオがソニアに言うと、

「戦闘用奴隷は七つ道具を常に携帯しているのです。持たせてくれたのはウォルフガングさんなのです」

「なるほど」

 ユキオが感心する。

 そこにアイシルが精霊魔術で助太刀する。

「サソリたちには少し眠っていてもらいましょう」

 と言って麻袋の中のサソリたちに向かって、

「ソラーレスタ!」

 と詠唱する。すると袋の中のサソリの動きがピタリと止まった。ユキオはソニアからサソリが入った麻袋を受け取り、いったんアイテムボックスにしまっておく。

 ワナが仕掛けられているということは、侵入者に対して厳しい警戒がなされているということだろう。

 壁の正面には入口らしきものが見えるが、そこから入れは当然、手洗い歓迎を受けることだろう。

 3人は壁に沿って回り込んでいき、警戒が薄そうなエリアを物色する。

「ここがよさそうなのです」

 ソニアがそう言うと、ぴょ~んと跳躍して軽々と壁を超える。

 ユキオは壁の向こうのソニアにロープを投げる。ソニアはロープを大きな木に縛って固定し、ユキオはそれを伝って壁を超える。

 壁の中は石造りの壁でところどころが仕切られいるが、メインのスペースは地下にあるようだ。地下に降りる階段はあるようだが、もちろんそこから降りたら、当然、敵に迎え撃たれてしまう。

 地下室との会話や、簡単な物資運搬用だろう、地下がのぞける半畳ほどの穴がある。

 ユキオはそこにロープを垂らし、物音を立てずに腕の力だけで伝って降りていく。ソニアもそれに続き、降りてきた体をユキオが受け止める。

 そこは倉庫になっており、3人はうず高く積まれている木箱の陰に隠れる。

 耳を澄ませていると、奥の方から子供たちの小さな話し声や、すすり泣きの声が聞こえる。

 その声の方に向かって、ユキオたちは身を伏せながら進んでいく。

 すると、見張りの男があたりを見まわしながら歩いているのが見えた。黒の帽子に黒のシャツにズボン、簡単なヨロイを身に着け、手には木刀を持っている。

 ソニアが、高速で男の背後に回り込む。

「ソニアハンマー!」

 と男の首筋に打撃を加えて、脳震盪をおこさせて気絶させた。男は倒れ込む。

 3人はかすかな声を頼りに奥に進むと、大きな20畳ほどの地下牢に、男女の子供たちが閉じ込められているのが見えた。

 鉄格子の前には2人の男が見張りをしている。

 ユキオはアイテムボックスから「草薙(くさなぎ)の剣」を取り出す。ソニアと二手に別れ、見張りの男2人の背後に、それぞれ回り込む。

 ソニアとユキオは、目で合図を送りあう。

「今だ!」

 ユキオは草薙の剣を峰打ちにして男の後頭部を鋭く打撃する。ソニアも同時にハンマーを炸裂させる。

 見張りの男2人がほぼ同時に倒れる。

 それを見た子供たちは、

「すごい!」

「助けてにきてくれたんですか?」

「ここから出してください」

 と声を上げ始める。

 地下牢の奥には、ぐったりして動けなくなっている子供たちも10人ほどいる。

 ユキオはその様子を見て、まずは自分の口の前に右手の人差し指を立てて、子供たちを静かにさせて、

「ここで騒ぐと、すぐに見つかって、逃げられなくなるよ。必ず助けるから、今は静かにしていよう」

 と落ち着かせる。

 この中では年長の栗色の髪の少年が、しみじみ訴えるようにつぶやく。

「僕たち、このままだと奴隷商人に売りわたされてしまうんだ。昨日も一人、牢を出て売られていった。次は僕の番かもしれない……」

 それを聞いて、次々と子供たちがすすり泣き始める。

 アイシルも、ソニアも、その様子を見て涙を流す。

 ユキオはその男の子に聞く。

「きみ、名前はなんていうんだい?」

「カールです」

「僕は冒険者のユキオだ」

 冒険者、という言葉に、カールの目と表情が輝く。ユキオが続ける。

「奥のほうにうずくまっている子たちはどうなっているの?」

「毎日、水も食べ物もろくに出されてなくて、1週間以上前からいる子は、どんどん元気がなくなってきて、体調も悪くなって、動けなくなっているんだ」

 こんなこともあろうかと、ユキオはアイテムボックスから手づくりのおにぎりを出した。コメは異世界米で、具はシソと塩で漬けものにしたキュウリ、海苔は昆布を天干しにしてショウユを付けて軽くあぶった。作り置きしてきたから、人数分はある。

 子供たちは夢中になってかじりつき、ぐったりした子もすこしずつではあるが、口にしてくれた。

 みんなが完食したタイミングで、ユキオはカールに頼んだ。

「体調の悪い子たちを、鉄格子の前に並べて寝かせてくれ」

 子供たちの人数は10名。ユキオは彼らにまとめて回復魔法をかけた。

「ヒール!」

 きらきらと輝く光りに包まれ、男の子も女の子も、青白かった顔に赤みが差してきた。

 1分ほど経過すると、ぐったりと寝ていたはずの子供たちが、次々と立ち上がり始めた。

 そして元気に歩き回り始めた。

「ユキオさん、すごいよ。本当にありがとう」

 カールが満面の笑みで喜ぶ。

 ユキオは10人の子供たちのヒールでかなり体力を使った。疲労が激しい。しかし子供たちが元気になるのは、なによりうれしい。

「どういたしまして」

 とユキオも笑顔を作って答える。

 そしてユキオはソニアに言った。

「ここからは、二手に別れよう。ソニアはこの子たちを地上に逃がして。アイシルと俺はこのアジトにいる連中をやっつけよう」

 ソニアが心配そうに言う。

「ご主人様、さっき回復魔術を使ったから、絶対に疲れているのです。わたしがいなくとダメなのです」

 いつの間にか世話焼き女房のようになってるな、とユキオは内心、思いつつも、

「大丈夫、用心していくから」

「本当に大丈夫なのですか?」

 ソニアは涙目になっている。ユキオはソニアの頭をなでて、言う。

「ソニアのために絶対に元気で戻るよ。あとでまた会おう」

 ソニアは、ようやく納得して、牢屋の南京錠の開錠ににかかった。

「いくよ、ハンマー爆弾!」

 ごく小さな爆発を起こして、南京錠を壊した。

 ソニアは子供たちを引き連れて、隠し通路に向かう。

 ユキオとアイシルはそれを見て、アジトのさらに奥へと進んで行った。




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