表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/65

「好きにしていいよ♥」ソニアとの初夜

 奴隷商のウォルフガングは、ユキオとソニア、アイシルを送り出す際、

「今夜の宿は決まっていますか?」

 と聞く。

「いえ、これから探そうと思っていました」

「ならばホテル『パピヨン』をご利用ください。私の名前を出せば快く泊めてくれるし、万が一満室でも、主人が他のホテルを案内してくれるはずです」

 ありがたい紹介だった。

 ホテル「パピヨン」は大きなホテルではないが、異世界には珍しいほどの清潔感があり、ゆったりと時間が流れる感じの過ごしやすい雰囲気が感じられた。

 支配人にウォルフガングの名前を出すと、

「今日は満室なのですが、予備で空けていた一室がございますので、そちらにご宿泊ください」

 と、奥の部屋を案内してくれた。

 ユキオはアイシルのための妖精用のベッドもオーダーして、部屋へ持っていく。

 部屋に入ると、寝室のベッドはダブルサイズ一台だった。

 アイシルのベッドは窓際のテーブルにセットしたが、ユキオとソニアの寝場所が決まらない。

 エキストラベッドも引っぱり出せるから、ユキオがそこに寝るというと、ソニアは、

「もしご主人様をエキストラベッドに寝かせたら、私は万死に値するのです」

 と言って聞かない

 ユキオも、契約を終えて疲れが見えるソニアをエキストラベッドで寝かせたくはない。

「じゃあ、一緒に寝ようか」

 とユキオが提案すると、ソニアは満面の笑みで、うれしそうにうなずいた。

 その瞬間、アイシルは姿を消した状態で、渾身の力でユキオの顔にドロップキックを食らわせてきた。

 クリーンヒットで仰向けに倒れるユキオ。

「ご主人様、どうされたのですか?」

「いや、なんでもない」

 と後頭部を抑えながら立ち上がるユキオ。戦いはモンスター相手だけではない。受け身も練習しておかなくては、と思う。

 

 シャワーを浴び、みんなで歯を磨いて、就寝の時間だ。

 ソニアはダブルベッドに入り、ユキオの場所を空けて待ち構えている様子だ。

 ユキオは作戦を立てた。最初はと一緒にダブルベッドに入るが、なんとかソニアを寝かしつけて、自分はエキストラベッドに潜り込もう。

 ユキオが作戦通り、ダブルベッドに入ると、

「ご主人さまぁ♥」

 と、ソニアがすり寄ってくる。

「私のこと、好きにしていいんですよ♥ 思い通りに♥♥」

 ソニアが、たわわなおっぱいと、すべすべの柔らかい太ももをすりつけて、ユキオに抱きついてくる。

 ソニアの髪の花のようないい香りと、甘い体臭が、ユキオの鼻と脳天を刺激する。

 ああ、もう、たまらない。荒々しいオスになってしまいそうだ。

 しかしその一方、ユキオは思う。

 奴隷と主人という主従関係だけで、そういう関係になってしまっていいのだろうか。

 俺は今まで流されるだけで、まわりから、押し付けられるだけの人間関係を、抵抗することなくそのまま受け入れて、その結果、死ぬほど苦しい人生を生きてきた。

 生きていたけど、死んでいる方が楽なほど苦しかった。

 でもこの異世界では、今のところ、俺は、自分が選んだ道を歩こうとしている。

 結果、自分の理想通りには全然なっていないけど、でも自分が選んだ結果だから、納得できるし、なによりも毎日、楽しい。

 だから今も、俺は、周りから与えられたものに、そのまま流されたくはない。

 男と女の関係になるのは、本当に気持ちを通わせ合って、心が通じ合ってからにしたい。

 これは俺のわがままだ、ユキオは自分でわかっているものの、それを貫きたかった。

 すりよってきた、ソニアの頭を撫でて、優しく抱きしめる。

 ソニアは幸せそうに、ユキオの首筋に唇を押し当てる。ああ、柔らかくてなまめかしい。でも、我慢だ、とユキオは自分を制する。

 そのうち、ソニアが寝息を立て始めた。

 今日は契約の儀式もあった。そうとう疲れていたのだろう。

 ユキオも安心して、エキストラベッドに移動しようとした。

 そこまでは覚えている……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ