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「無限ループ」

作者: 赤月結衣

寒い。季節は真冬。外は雪が積っており、私は家にただ一人。窓を開けたら、そこには誰もいない、何の音もしない、悲しい世界だ。一人は寂しい。話し相手がいない。どんなに嫌いな人でも、鬱陶しい人たちも、誰もいないとむなしくなる。人間はいざ、誰もいなくなると、弱くなる。精神的にも、身体にも影響を及ぼす。追いつめられる。鈍くなる。それほど人間とはか弱い生物だ。この世界は静かすぎる。町は死んだように静まり返っている。何もすることもなく、何回も読んだ数千冊の本を黙々と読み続けていた。何回も読み続けたせいか、頭の中はもう内容を覚えている。自分が好きな数独も、今はもうつまらないと感じた。次の朝を迎えれば、私が埋めたはずの数独はもぬけの殻。また一からやり直しだ。最初はおもしろいと思った。ただやればやるほど、つまらなくなった。本と同じだ。誰もいない世界を歩いてみようと思っても、やったはやったで、世界は広いと感じるだけだった。世界が広ければ広いほど、私はどんどん小さく見える。そんな状況に陥っても、支えてくれる人はだれ一人もいない。早くここから抜け出したい。出口を見つけようとも、それは叶わない。まるでそれが叶わないように、私の側には大きな壁が立ちはだかる。大きくて透明な壁。何もない場所に手を触れると、そこには何かがあるかのように、私の道をふさぐ。私はここから抜け出せないのだろうか。一生このまま誰にも会わずに死ぬのだろうか。いや、それは無理だろう。何度試してもそれも叶わなかった。飛び降り、ナイフで腹を指す、首つり…どれもうまくいかなかった。ボロボロと瞳から涙が溢れてくる。死ぬことはできない。帰ることも出来ない。この世界に希望は存在しないのだろうか。私は一生このまま…

私はそっと本を閉じ、ホッと息をついた。ペンで走らせた後の残った紙に再びペンを走らせ終わらせた。

 辺り一面に夕日に覆われて真っ赤に染まり、暖かく私を包んでいた。私は窓を開け、外の景色に目をやり、外の音に耳を傾けた。車の走る音、話し声、早く帰ろうと必死に足を急ぐ人、歩幅を合わせて距離を縮めようとする人、寄り添う人たち、手を繋いで同じ道を歩んで帰る微笑ましい夫婦。

世の中は、人の暖かさによって進化していく。

私はその景色を見て胸を撫で下ろした。

 「やっぱりこの世界が好き」

 そう言い残して、自分が書いた小説を出版社に手渡すために図書館を後にした。


   「無限ループ」End


他作品:「この世界に生まれてよかった」

    「ひとりぼっちの世界へようこそ」

    「この世界でただ一人」


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