act48 連戦 場外
目の前で行われる戦いを見て思う。
普通は驚くのだろう。
他の四人はそうであるのと同じように…
でも、私にはそう見えない。
あの…戦いを見てからでは…
人が、まるでエサのように扱われる戦いで死が傍に居るような所…
そんなものは、画面から見ているだけで自分には関係無い世界の出来事だと思っていた。
でも、それは大間違いだった。
常に死は、私の傍らにいて、いつだって牙を研ぎ澄ませこちらを狙っているのだと…
自分が安全に…関係はないと目をそらしているだけなのだと…経験してしまった。
その経験が、目の前で行われる神事を茶番に見せる。
一応、神聖な神事に臨む際、導き手たる私たちは、巫女装束で立ち合うことになっている。
一応、神道の儀式でもあるから。
戦いを見つめる私たちに 薬師高校2年でバサラ神社の娘。
髪が長めのクールビューティーの言葉が似あう鳴滝ヤエがやって来た。
両手は前に重ねるようにして…ん?
何だろう?おしとやかに見えるその仕草に違和感を感じてしまう。
右手を左の念珠に重ねている…これは念話を使える常態にしている!
あれ?何でこんなことに気づけるんだろ?
アイツといると用心深くなるからかな?
まあ、いいわ。
何かを仕掛けてくるのが、見えているのが分かれば心つもりが出来るから。
「どうなってるのかしら、彼の力は。
木の理に何か仕掛けているのはわかるけど、
何をしかけてるのか教えていただけるかしら」
とたずねてくる。
「さあ、分かりませんよ。何を仕掛けてるのかなんて…」
正直に答えてみた。
ホントに知らないからね。
同盟の為の研修会でをしなければ、教えてもらえたんだけど…
「あら、警戒している?ここで話したからってアナタたちに不利になるわけじゃないのに」
と微笑を浮かべる鳴滝ヤエに
「残念、本当に知らないんですよ。教えてもらう予定だったんですけど、彼らとの同盟を結ぶための研修会を開いたせいで聞けなかったんで」
「割と口が堅いのですね、いい訳も準備して。ネタがばれたところで情報を伝える手段がないのに」
と、言ってきた。
まあ、なんとわかりやすく煽ってくるんだろ。
伝える手段がない?念話を出来る状態でいるのに?
ウソがお上手ですこと。
「どう思おうといいですが、ホントに知らないんですよ。
それともこちらの情報がそれほど必要なんですか?
結構ピンチなんですね、そちらの刻印者さんは」
「言うわね。そんなことないわよ、でも気になるじゃない。
私の刻印者の猛攻をしのぐあなたの刻印者の戦い方を」
微笑は、崩れない。
なんて鉄面皮、見事すぎる。
「そちらの刻印者さんは、頭がいいはずですよね。
たしか 涌井ユウキさんでしたっけ。
いつもテストの上位にいる方だとか…そこまで頭がいいのならこちらが何かしていても理解できるんじゃないですか」
とカマをかけてみた。
向こうは刻印者が誰かバレていないと思っているはずだ。
そのお堅い鉄面皮をはがして進ぜよう。
この言葉に微笑は驚きに変わる。
「なんで彼の名前を知っているんですか。
どうやって。いえ、違いますね。
私としたことが慌ててしまいましたね」
コホンと咳ばらいを一つついて落ち着きを取り戻そうとした。
慌ててくれた、なんか楽しいかも。
「このネタは、提供してもいいですよヤエさん。
この戦いに勝てたのなら」
「まるで私たちが勝てないみたいな言い方ですね」
「そう聞こえましたか、そんなつもりもなかったんですが」
と、私とヤエさんが笑顔で向き合いながら、黒いものを纏う。
それを見ていた四人は思った。
怖い、と。




