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アンティーククロック~復讐を目指す非常識現実生活~  作者: 団栗山玄狐
第三章 縁を紡ぐ糸と真実を呼ぶ鐘の音
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act31 未の刻印者の提案


公園にあるカフェのような丸いテーブルを挟み男二人で向かい合う。


木々の木漏れ日が降り注ぎ、いい日陰になる。

わずかに頬を撫でる風も心地よい。



目の前にいわくつきの男子が居なければ。


伏見ふしみヒロ、確かひつじの刻印者。

帰宅部でいたって普通の代名詞のような男子学生。


それがオレを警戒するように見てくる。

なんせ、向こうからすれば知らないことを知っている相手だ。


確か、オレがイノシシと戦っている時、それを除いている二組がいたことは気づいていた。


その内の一組がひつじだ。

その時は、方位鎧ほういがいを着こんでいた。

見た目はヒツジで顔はわからない。


なのにこっちは名前を言い当てたことが警戒される理由なんだろう。


でも話しかけてきたのは、そっちだ。


そこまでやったんだ、腹をくくってほしいところだ。


それにネズミと言ってきたところを見ると、オレの名前まではわかっていないようだ。


顔だけは見えていたから、相手がわかるオレに粉をかけてきた、というところだろう。


さて、


「ご用件は何ですか?オレも用事があるんで簡単に済ましてもらえるとありがたいんですが…」

話を切り出してみる。


もちろん用事はある。


安村のお爺さんにいたく気に入られたようで、

神社に伝わる古流武術を教えていただける事になった。


オレとしても戦い方は、ほぼ我流で断る理由もない。


不満と言えば、孫はどうだ、可愛いだろ。


と、修行中にぶっこんでくるのはやめてほしい。


この間の件で意識し始めたばかりなのだ。


悩み事を増やさないでほしいところだ。


「そうだな、単刀直入で言う。オレと戦ってほしい、そして引き分けてほしい」

伏見ふしみヒロが真剣に言う。


「なぜ、それをオレに?他の刻印者に挑んで勝てば済む話じゃないですか。

わざわざ引き分けまで望んで、意味が分からん」

オレは、いぶかしげに相手を見る。

見た感じ、警戒はしているがわずかに焦りが見える。


何を焦る?


あ、初期戦闘の義務か。

確か神事では初期戦闘は一週間以内に行うことが義務化されてたんだ。

出来なければペナルティがあるんだった。


だから焦っている。


「ただでとは言わん。こっちからは酉の刻印者の情報を提示する。これならそちらにも得はあるだろう」

伏見ふしみヒロは無理やりにでも話を進めようとしている。

かなり焦っているな。


でも、その情報はオレにとっては意味がない。



なぜなら、

「それではオレには何のメリットにもならない。そもそも刻印者全員の情報はすでにあるからな。他に無いならこの話はなしで」

とオレが話を打ち切りにかかると


「なら、オレと酉のことわりと武器について公表する」

と新たな条件を提示する。


うん、刻印者関連の情報は意味がない事がわからんのかね。


「それもいらない。その情報も持っているからね。意味がない、逆にデメリットでしかない」

とカウンターよろしくで言うと

押し黙ってしまった。


どうやら持ち札が切れたようだ。

それでも何かを考えている。

俯き必死に何かを考えているようだ。


ん~。仕方ない。


どうせオレも探さないといけないところだし、


ひつじか、うまく立ち回ってもらえば何とかなるか。

と思い、話を切り出す。


「仕方ない、オレから条件を提示するよ」

ため息交じりで言うと


顔を上げた。結構必死な感じで。


「なんだ、そっちの条件は」

食いつきがすさまじい。

大物一本釣り、入れ食い状態である。


「簡単だ、神事ではライバルでいい。でも化け物が現れたら、ともに戦ってほしい。同志になってもらいたい」


その言葉に不思議そうな顔を浮かべる。


あ、これ話についてこれていない顔だ。


「つまりだ、始まりの祝詞でも言われていた化け物、禍わいたる夜の刀を倒すときに協力してくれればいい。それを約束してくれるなら刻印者の情報も提示してもいいと思っている」

情報は武器だ。

対策も戦略もできるからそれを扱いこなすことができれば確実に相手の先も進めるし、攻撃をかわしてからの反撃、後の先もこなせる。


それに刻印者の情報なんてすぐにばれるしな。

この手の話題は、高校生ならすぐにバレるから別に必要も感じない。


「それでいいのか、…いや、それだとオレの一存では…」

パートナーが居るからな、勝手には決めれないか…当然だ。

すぐに飛びつかずに

踏みとどまれるくらいには冷静か…合格だ。


なかなかの判断力がある。これはとんだ拾いモノかもしれない。

こいつを仲間にできれば化け物どもとの戦いのアドバンテージになるかもしれない。


「その話は相方相談してくれ、もしOKなら返事をくれればいい。そこまで話を急いでないから」


「すまん、こっちから話を振っておいて」

申し訳なさそうに答える。


すでに警戒も解いているし、大丈夫だろ。


「じゃあ、悪いけど。これで」

と言うとオレは席を立つ。


じゃあな、と向こうも声をかけてきた。

礼儀もある、覚悟もある。


この場合、声も出ないはずだ。


それでも声を出す。冷静になることができ、覚悟もある。


ホント拾いモノだ。


と思いながらその場を後にする。







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