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アンティーククロック~復讐を目指す非常識現実生活~  作者: 団栗山玄狐
第二章 禍いなる夜の刃と彼らの真意
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act28 刻印者の意味

主人公が少しでヒロインがメイン視点です。



なぜか、帰る前に安村に神社によれと言われた。

それも強引になんかわからないが、飯を食って行けと。


こればかりは、どうやら逃げることができないらしく困ったことになったのだ。

オレには関係ないと強引に言ったのだが、こちらよりなぜか向こうの押しが強かった。

女性慣れしていないせいか、押し負けやすくなっているか。

仕方ないので行くことにしたのだ。


神社の横手にある一般的な二階建ての家が、安村の家だそうだ。

玄関を入るとなぜか祖父母、ご両親、双子の弟妹が総出で出迎えてくれた。

というよりも値踏みされているような視線がオレに突き刺さる。


何だこれ?




さて、強引に家に連れ込んだわ。

言い方が悪いけど、刻印者になったんだから仕方ないわよね。

先送りなんかにできないし、ここで決めるしかない。


というか祖父母と両親から必ず連れてきなさい、と、朝出かける前に念押しされていたから仕方ないんだけど。


もはや逃げ場なんてないわ。

自分で刻印者を決めな宅無かったんだけど…

結果的に久野でよかったのかもしれないわ。


久野は、平然としているけど…状況わかってるのかしら。

ビカラ様から聞いていたからもちろん知っているんだと思うけど…


なんか意識しているのが私だけっていうのが腹が立つけど仕方ないわね。


結構、カッコよかったし…。

でもなんか違和感があるのよね。


何だろ?


とか思っているとリビングに久野を案内して

たくさんの料理の乗ったダイニングテーブルを囲むように各自座る。

なぜか私の横には久野がいる。


仕方ないのよ、それは。

理解も出来てるし、覚悟もしたし…

なのに不思議そうに飄々としている隣のこいつがムカつくけど。


全員でいただきますをして食事が始まる。

で、食事がある程度進んでから、父さんが口火を切る。


「久野君、キミは刻印者についてどこまで理解しているのかね」

その問いに久野は、


「刻印者は、神事の参加者で各神社の祭神の代理であること。

そのことわりと武法具を使い勝ち残ることですね」

と、答えた。


その答えで終わっていた、それだけ?


祖父母も両親もおやっ?と言う顔になるが、久野は至って真剣だった。


「じゃあ、改めて聞くけどキミはビカラ神将から神事について聞いていたんだよね」


「はい、聞きました。私が聞いたことは先ほど言った通りです。

さすがに細かな事は省かしていますが…おかしかったですか?」

疑問符が浮かんだ顔をしている。


「いや、間違いじゃない。

でもそれじゃあ足りないね、キミは神事での戦い方しか聞いていないようだ。

刻印者には他にも大切なことがある」

父さんは優しい顔で言葉を紡ぐ。


でも目には真剣さが残る。



「足りないんですか?刻印者にまだ秘密があるんですか?」

前のめりになる久野を父さんは落ち着くように制し、話を続ける。


「いいかい、刻印者とはね。文字通り神社の御祭神の刻印を持ちし者で、

この神社を護りし者という意味もある」


「はい」

真剣に話を聞き入っている。

根がまじめだね。


まだ気づいていないことを父さんは確認すると

「まあ、簡単に言うとだね。刻印者は導き手と婚姻の仲になるんだよ。

許嫁になるんだ」


「はい。は…いぃっ!」

目を見開き、驚く久野。


ああ、やっぱりか~。

こいつ、神事での戦いばかりに目が行っていてこっちの話はスルーしてたんだ。

なんかおかしいと思ったんだ。


というかビカラ様、説明してないの?


肝心なとこ、抜けてない!二人とも。

私には、一大問題なんだよ。


文字通り人生を左右するんだよ。

ひどくない、ソレ。


「そうか、気づいてなかったか。

今回の食事会も娘婿となるキミの人となりを見ようと企画したんだよ。

でも知らなかったか~。まあいい、改めてだ。娘婿君、娘をよろしくね」

と、満面の笑みを浮かべる父さん。


その顔を見て、引き気味の久野。

突然の不意打ちだもんね。


でも、理解してくれた?何であの時、帰れっていたのか。

何か覚悟決めてたから、ちゃんと説明しないといけないと思ってたんだけど…


なんかのびのびになって、どうしようか悩んでたけど…

なんか、やり返した感があってよかったわ。


でも、でもですよ。

大事な娘を奪う男に対して父親の行動ではないように感じますよ。


父さん、もっと娘を奪う男に対しての言い方してくれません?



「いや…、あの…、えっとですね…私は、その、そんなつもりもなくてですね…」

しどろもどろになる久野。


なんか慌ててる。

意外と可愛い所があるな。

なんか顔も紅いし…


一応意識してくれてるのかな、


それだとなんか…嬉しいな。


多分私も紅いと思う。

熱くなってきたから間違いないと思う。


「なんじゃ、ワシの孫娘が嫌なのか?

刻印者になった以上添い遂げてもらわんといかんがな」

と、からかい始めたジイちゃん。


やめて、こっちも恥ずかしいから。

特に私、当事者だから。


「いや、そういうわけじゃなくてですね。

お嬢さんが嫌とかじゃなくて…えっとですね、いきなりすぎて…あの・・・」

久野は、言葉に詰まりまくってる。


慌ててる、慌ててる。


「お義父さん、からかいすぎです。彼が混乱してます。

どうやら、キミはとても不器用なタイプのようだ。

許嫁の話が出た途端混乱しているようだね」


「すいません、私はそこまで考えていなくて。

ただ大きすぎる力を使いこなすことしか考えてませんでした。

許嫁の件も今初めて知ったくらいで…戸惑っています」


「そうか、そうだったか~。

でもね、これは刻印者の力を使うための代償と言うか覚悟なんだよ。

キミは図らずともこの神社を背負うことになるからね、

いきなりになったけど考えてほしい。と言うかすでに決定事項なんだけどね。

まあ、私も入り婿だから相談は受け付けるよ」

と、優しい笑顔を向ける。


そっか~父さんが優しいのは、仲間ができた感があるからか。

神主でも入り婿の立場だもんね。

サザ〇さんのマ〇オさんポジションだもんね。



バアちゃんと母さんは、久野の事を値踏み中の様で静かにしてる。

弟妹は、ご飯に夢中である。


姉の旦那のことが気にならんのか、こいつら。


「いえ、すいません。でも、真剣には考えます。

きちんと向き合わないといけませんし」

と姿勢を正し、真剣な目で父さんを見る。


その姿にじいちゃんは、感心して


「いいのう、その反応。気に入ったぞ若いの」

と、ご満悦。


女性陣は、何やらコソコソと相談中のようで。

怖いわ、ほんと。


「ごほんっ、不意打ちみたいですまないね。

でも、さっき言ったことは考えてくださいね。

今のキミは戦うだけじゃないということだけをね」


久野は黙ってうなずく。困っているようだけど目は真剣そのものだ。


そういえば、ヤヨイさん言ってたっけ。

久野は優良物件だからおすすめとか。


なんて考えているうちに食事会は終了。


私は、家族に促され久野を送ることになった。


神社の鳥居までだけど。


そこで久野は、急に振り向いて頭を下げてきた。

「すまん、知らなかったとはいえ。安村にとっての大事な決め事に踏み込んでしまって」

と真剣な口調で謝罪してきた。


私も婚約が絡んでたんで嫌だったんだけど…けど…


今は、良かったかな…なんて。


「良いよ、そんなに頭下げなくてもどうせ、アンタじゃなくても他の誰かになってただろうし…むしろ良かったというか…」

両手を前に出してテレをごまかす。


「だが、オレは化け物と戦える力が手に入ったことで浮かれてて、安村の人生を左右するなんて考えてなくて…身勝手だった。だから、これからは真剣に考える」

と、頭を上げ、まっすぐな視線を向けてきた。


もう、そういうとこだよ。


困る、変にまじめで不器用でまっすぐで。

なんかっホントに困る。


顔が熱い、というか体が熱い。


「じゃあ、また明日な」

と言うと久野は階段を駆け下りていった。


「また、明日」

と私は、彼の背中に声をかける。


夜のとばりの中に彼の姿は溶け込み、軽快な足音だけが響いた。

何だろ、私チョロい?


そう思うながら、私は家に向かう。


その後、我が家の女性陣から


「逃がすんじゃないよ、絶対に」。

「最近珍しいくらいの不器用者だよ、浮気の心配なさげだしね。

しっかり捕まえときな」


と、念押しされた。


どうやら久野は、家族から合格をもらったようだ。


恥ずかしいな~もう。


ちなみにマコト君呼びだったのに

今更、久野呼びになったは、単に恥ずかしいから。


羞恥死しそうだったからです。


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