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アンティーククロック~復讐を目指す非常識現実生活~  作者: 団栗山玄狐
第二章 禍いなる夜の刃と彼らの真意
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act27 結末

主人公、ヒロイン視点です。




AM 11時頃 廃工場にて



上がった土煙が落ち着いたその場所には人影が現れる。

この場合、テンプレ展開だと余裕をみせて無傷の姿をさらすのだろうが、そうではなかった。

テンプレを起こせるほどの大物でもなかったからだ。



目の前にいた化け物は、頭の半分がえぐられ右腕が吹き飛んでいた。

右足の太ももの外側もえぐり取られ、満身創痍・・・もはや風前の灯火であろう化け物がいた。


その姿を見たオレは、

「何耐えてんだ、化け魚。とっととお前が命を弄んだ人たちのとこに行って詫びて来いよ」


「や、やかましい・・・化け魚、化け魚言うな。その化け魚をここまで追い詰めるテメエも十分化け物だろうが・・・」

と、化け物は息も絶え絶え反論してくる。

最早、虫の息だ。


「お前と同類に扱うなよ、虫唾が走る。化け魚がイヤなら人外か、他の言い方がわからんな。

もう面倒だ、消し飛べよ化け物」

と、オレは武法輪を一つ右手の上に作り出す。

そして、それを化け物に向けて打ち出す。


打ち出された武法輪は、化け物の体の中心を吹き飛ばす。


ここまで来ればオレは、行動に躊躇いはない。

今、目の前にいる相手に対する同情する気などない。

必要も感じない。



ただ目の前にいる化け物を処分するという行為を淡々とこなした、だけだ。


化け物は、吹き飛ばされ風穴があいた体を見て

「な、なぜだ。オレは人を超えた存在になったはずなのに、なんでこんな簡単に・・・・」

化け物の指先から少しずつ塵になり始めていた。



「御託なんかいらん。いい加減に詫びていけ、バケモン」

と、言うと今度は、頭を吹き飛ばす。



その様子を見ていたミコは、

「…容赦なさすぎ」と一人つぶやく。

それくらいエグイ事を躊躇いなく行った。



化け物の体は、頭を吹き飛ばさられた勢いで後ろに倒れこみ地面に叩きつけられる。

そして、その衝撃で霧散する。


それを確認すると、開いていた右手を握り

「倒せた、あの化け物を。これであいつに届く、今まで逃げるか足止めしかできないかったのに。

倒せる」

と、言いながら天を仰ぐ。






「やったな、マコト」

コウさんが、マコト君の元にゆっくりと近寄る。


「やったよ、コウ兄。やっと一歩進めた、アイツに潰すために」

と、マコト君がコさんに顔を向ける。


その表情は、先ほどまで見せていた醜悪で邪悪な笑みではなく、年相応の・・・いやそれよりも幼く感じる少年の笑みを浮かべていたそうだ。



そのクッタくのない純粋な笑顔をふいに見せられた私は思わず顔を手で押さえ、

わずかにうつむくいた。


「どう、かわいいでしょ。ウチの自慢の弟君は」

と、私の近くまで来ていたヤヨイさんが耳元でささやく。



自分でもわかるくらいに頬と耳は少し赤みを帯びており、

それを悟らせないように手で顔を覆っていた。


その声に私は、体をこわばらせ、

顔を覆っている手の隙間からヤヨイさんを見る。



「あの子はね、ホントはあんなクールな子じゃないのよ。

もっと元気いっぱいで優しくて素直なの。

でも、あいつらがそれを狂わせた。

目の前で行われたあの出来事を…

その時何もできない自分の事を…

あの子は…それが許せないでいた。

周囲に不幸をまき散らすあいつらを」

すごく優しく、そしてすごく儚く寂しそうな顔を浮かべている。



その言葉に赤みを帯びていた熱は少しずつ引いていく。

私は、冷静さを取り戻し始める。



「アレが、ホントの彼の姿なんですね」



「そうよ、だからね。いい買い物したと思ってね。

それにウチの自慢の弟は、結構一途だよ。浮気とかしないから心配しないでね」

私の耳元でこそっと伝える。



せっかく冷静になれたのに再び熱が体を駆け上がるのを私は感じた。



「そっちも大丈夫か」

と、ふいにマコト君が声をかけて来た。


「ら、らいじょうぶ。気にしないで」

と、背中向けたまま返事をする私を見て


ヤヨイさんは「可愛い」とニマニマしながら呟いた。


知らない間に周囲の風景は元に戻っていた。

あの化け物がはっていた結界が消えている。



私達は、しばらく談笑してからその場を後にした。


余り長くいると騒ぎになりそうだしね。



更に研究所から帰路についた私達二人に

『刻印者よ、汝に尋ねたいことがある』

ビカラ様からの申し出があった。


なので、ビカラ神社脇の駐車場にある公園に立ち寄ることになったのだ。

「で、なんだよ。聞きたいことって」

マコト君は、仏頂面を崩さずに尋ねる。


ココには私と彼の二人だけだ。

はたから見れば会話しているようにも見える。


なのであえて声を出していた。

『汝は、この神事で勝者に与えられる願いに何を願う?』


「あ、そう言えばそんなこと言ってたな」

と、思い出すように言い始める。


「そういえばそんな特典があったね?」

と、私はすら忘れていたので聞き返してしまった。


そんなことお構いなしで再度尋ねて来た。

『何を願うのじゃ、刻印者よ』



「そうだな、もしどんな願いもかなうならオレが求めるモノは一つだけある。

それは、禍津夜刀(まがつやか)とそれにかかわる化け物を全て消し去って欲しい。かな」



『「え?」』

その答えにビカラ様と私は驚きの声を上げる。



「なんで驚く。オレにとっては奴らを殲滅するのは悲願と言ってもいい。

奴らのせいで泣く人たちを見たくないんだよ、

オレが体験したことを思い出してしまうから。

なら、奴らを全て何もかも消し去ることが出来れば、

それはオレにとっても悲願達成で嬉しいしな」

少年のような無邪気な笑顔を浮かべる。



それは、反則だよ。



『じゃが、汝のやりたいことも願えば叶うのじゃぞ』



「やりたいことは、オレがやりたいからするのであって叶える願いじゃない。

それは目標だ。

そんなの逃げずに向き合って努力すればいいだけだ。でもあいつらは違う。

人をあざ笑い、不幸をむさぼる。アレを全て倒さないといけない。

でも、オレが戦えるようになったところでたかが知れてる。

なら、その特典で奴らを根絶やしできるなら願ったり叶ったりだ」

とマコト君は言い切った。

その目にはしっかりとした信念をまとっている。



ああ、今度はかっこよく見える。



『そうか、そうか。ならばワシはおぬしに我ができることを全て行おう。

その願いをする者を幾星霜の時の中で待っておったのだからな』



「ああ、ありがと。なんか神様にそんなことを言われると照れるな」

とマコト君は自身の頭を掻く。



「その前に筋トレしないとね。うちの神社を駆け上がるのにあれだけへばってたら話にもならないし、

他にもやらないといけない事が多いよ」

と、私が胸を張り誤魔化すように言う。



「偉そうに最初は嫌がりまくったくせに」

ジト目で見つめるマコト君に



「仕方がないじゃない。私はもう部外者から当事者になったんだから。

覚悟してキミと一緒に前に進むつもりよ」

と、私は気取られないように強気で言う。



二人で言い合うそのそばでビカラ様は思っていたそうな。



『ワシはこ奴らに出会うために長い時を歩んできたのかもしれんな。

こ奴に悲願が我の悲願でもある。

まあ、不器用すぎる二人じゃが、それが信頼できるともいえるのう。

じゃが、大丈夫じゃろ。こ奴らなら』



夕暮れ時、太陽が沈みはじめ空を赤く染める。

彼らの戦いは、今空のように赤く熱意を帯びたものになっていくのだろう。



まだ、聞いていない事も多いけど、これから少しずつ聞いて行こう。

そのくらいの時間はあるしね。


さて、これで一区切りです。

改訂前でもこの辺りで完結しています。


まあ、力尽きていなければ続きを書いてみます。

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