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アンティーククロック~復讐を目指す非常識現実生活~  作者: 団栗山玄狐
第二章 禍いなる夜の刃と彼らの真意
24/52

act23 理不尽との出会い

主人公、ヒロイン視点です。


そして、恐怖をあおるため、残酷なシーンが盛り込まれていますの注意願います。

その辺り、私は経験則により慣れてしまっている為、一般の方と異なり感覚が壊れています。

ある程度、マイルドにはしていますが気分を害される場合がありますのでご注意ください。


二人でじゃれ合いをして、買い出しを済ませ帰路につく。

近道だからと裏道を通り、廃工場を横切ろうとした時に

急な寒気が私たちを襲う。




心を深い所をえぐるように襲う恐怖・・・そう恐怖。



底冷えするような、全てを掴まれ何もかもを奪われ、

動けなくなるのに意識だけは、はっきりする。



怖くて怖くてたまらないのに気を失うことも許さない空気に包まれる。



拷問に近い状況に陥った。



少し落ち着き周囲を見渡す。



周りの色が違う。


さっきまで明るく澄みきっていた空気が、淀んでおり

景色は変わらないのに赤茶けて見える。



まるで異界に迷い込んだ・・・同じ場所なのに違う空間に飛び込んだ様に思える。



そんな中、寒気のする方向に・・・廃工場に目を向けると

そこには痩せこけて作業着を着た人が立っていた。



作業着の前は赤黒く染まっており、その人の足元には涙目を浮かべこちらに手を伸ばす人がいた。

よく見れば腕や足は片方なく、脇腹から血が流れだし、顔面蒼白である。



立っている人は、左手に何か棒のようなものを持っており、何かをくわえていた。



そのくわえているものから紅い液体が地面にしたたり落ちる。

もちろん左手に持っている棒からも同じものがしたたり落ちる。


口にくわえていたモノを右手で押し込み、袖で口元ぬぐう。


「へっ、へへっ、新しいの見つけた」

ふらふらと体を揺らしながら近づいてくる30代くらいに見える男性。

視線は間違いなく私達を見ていた。


視線に不純な感じはしないが、むしろ違う意味が込められていることがわかる。



男の口角が不気味に引きあがる。



顔が変形し、魚のシイラみたいになる。


目が血走り、口からよだれがしたたり落ちる。


その様子から私達を食べ物として見ていることが、わかる。



背筋に冷たいものが走る。

逃げないといけない、でも足がすくむ。


強気に出たいけど、声が出ない。

まるで口に何かを詰められたような息苦しさすら感じる。



「何でこんなとこに禍津夜刀まがつやかがいるの?」

ヤヨイさんが小さくつぶやく。



禍津夜刀まがつやかって確かマコト君が倒したがっている化け物の事だよね。



えっ、こいつがその禍津夜刀まがつやかってやつなの。



何こいつ、怖い。でも声も出ないし、体も動かない。

寒気もする、逃げなきゃいけないのに。

嫌な感じしかしない、息苦しい。





逃げなきゃ。





そう思いながら涙目になる。

そんな中、無意識に一人の男子の顔が浮かぶ。


物静かで生意気なくせに不器用で努力家の彼の姿が、

今自分が置かれている状況では頼もしく、

そして、傍に居てほしい人として私の脳裏に映し出される。




私は、無意識に左腕の念珠に右手を重ねる。




そして、



化け物から助けてよ、


助けてよ、マコト君。


と、願った。



普段は久野君と呼んでいたのに、今はマコト君と願った。



この時、これが念話の接続だとは、忘れていた。



でも、これが彼との繋がりであることを強く感じていた。











その念話の声が、念珠を通してオレの脳裏に響く。

ちょうどコウ兄とともに研究所の中庭に出ていた時だ。


言論大会よろしくの答弁、議論で白熱していたので、気分転換がてらに来たのだ。



休憩できるベンチと自販機があり、わずかだが花壇や木々もある。



研究所の憩いの場所である。




そこにいる時に突然、

生意気で生真面目なくせにアホなことをする、

そして、なぜかほっておけない女の子の声がしたことに

何事かと思い空を仰ぐ。



念話が来たことは、まあいいとして。



助けてとはどういい事だ?


それに化け物っていったい?



オレはそれを確認しようと念話を送る。


『どうしたんだ?安村。何かあったのか?』



『え、何?何で声が聞こえるの?』

と、どうやら絶賛混乱中の様だ。


『念話通信しているのだから会話できるだろうが、どうしたんだ?化け物がどうのこうのって聞こえたが?』



『人が襲われてて、なんか禍津夜刀まがつやかって化け物が目の前にいて・・・』

その名を聞いた瞬間にオレの血が瞬間湯沸かし器のように沸騰しているのがわかる。



憎い仇の眷属であり、不幸をまき散らすわざわい




それが近くにいて、それが親しい人間に襲い掛かっている。





許せることではない。





オレは、煮えたぎる怒りを無理に抑え込んで冷静に念話をする。




『で、今どこにいる?』




『商店街と研究所の間にある廃工場で・・・』



『わかった、すぐ行く。とにかく戦おうするな、逃げれるなら逃げろ。

無理でも相手の攻撃をかわし続けろ。オレが行くまであきらめるな。必ずそこに行ってやる!

絶対にだ』

そういうとオレは、コウ兄に



「化け物が・・・禍津夜刀まがつやかが現れたそうだ。

今ヤヨイ姉と安村が襲われてる、悪いけど今から退治に行く」

と、血走った目で言うと


「なんだと、何処だ。僕も行くぞ」

と、真剣な顔で言ってくる



「急がないといけないから、連れていくわけにはいかないよ」



「ボクに意地がある。オマエに覚悟があるようにボクにもあるんだよ」

と、普段温和な人間が、強気な姿勢に出ると大変だ。



時間もなく、急がないといけない時に困る状況だ。



困っていると


『ならば方位鎧をまとえ、今ならできるはずだ。

纏えばすぐにでも導き手の元に向かうことが出来る』



ビカラがつぶやく。



方位鎧か、あの着ぐるみか。


一応、鎧扱いらしいし、あのイノシシの時は、耐久力やらなんやら上昇してるみたいだったし

着ている間は、効果があるみたいだ。


なら、化け物相手でも対処可能か。


『わかった、使おう。急ぎたいというのもあるしな。で教えてもらった文言を言うと着用できるんだよな』



『そうだ、ただ着用後は来ていない時との感覚の差に気を付けよ。まったく別ものじゃ、本当は慣れるまで時を必要とするのじゃが、状況が状況じゃ。戦いながら慣れるほかないの』


『それは仕方ない、急ぐからね。使えるものは何でも使う』


『何じゃ反応に不満があるのう。まあ初めて使うのじゃから仕方ないかのう』


何か不満げなビカラだが、時間もないし始めよう。



『我、願う。神将ビカラの刻印を持ちし我に力を貸し与え給え』

この真言を唱えるとマコトの体が光に包まれ一回り大きな体躯になる。

丸みを帯びた鎧みを包みネズミ顔をした獣の戦士となった。



これが、方位鎧 ビカラ らしい。



古代版パワードスーツのようなものか。

蒸し暑くない着ぐるみみたいである。


身体は一回り大きくなったみたいで、力が沸きあがる。


そのくせ、外の鎧に感覚がきちんとある。

鎧を着た、ではなく一回り大きくなった、という感じだ。


感覚のズレが出るから慣れるまでが大変だ、という意味が解る。

だが、そんな間もない。



「それが例の鎧か、ならば行こうマコト。

こうしている間にも化け物がヤヨイたちに何かしていないか心配だ」

と、こちらを見るコウ兄の眼には、強い意志刻まれているのがわかる。





覚悟を決めた。





そういう目だ。

こうなるとコウ兄は、引かない。

もう連れていくしかない状態だ。


「分かったよ、ただし急ぐから荒っぽくなっても文句言わないでよ」



「言わない、急ごう」

明確な覚悟を示して言うと

オレの傍まで来る。


仕方ない、そう割り切りオレはコウ兄を背中におんぶして

車いすをたたみ脇に抱える。


「じゃあ、行こう」

と、言うとその場から目的地に向けて撥ねる。


簡単に建物を飛び越え外に出る。

そして、そのまま走り出す。



軽く見ても、時速30キロは出ているようだ。



なのに体が軽い、急にマッチョなアスリートになった気分だ。

感心している暇もない。


気持ちだけが異常にはやる。



生意気なくせに無駄に強がりな女の子の顔が浮かぶ。

それが更にオレを焦らせる。


今の状態でも遅く感じてしまう。







おさえろ、おさえろ。





はやる気持ちを抑えろ。





自分を言い聞かせるように思う。




目的地が見えない事に苛立ちながらオレは、駆ける。



何故、気持ちがはやるのかもわからず、ただ目的地に向かい駆け抜ける。






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