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アンティーククロック~復讐を目指す非常識現実生活~  作者: 団栗山玄狐
第二章 禍いなる夜の刃と彼らの真意
22/52

act21 彼らが語る戦うべき相手

主人公、ヒロイン視点です。



AM 10:10頃 薬師博物館の中、副所長室にて



質素な部屋に古文書や古い文献が部屋の壁に幾つも並んでいる。

机は壁に向かっており、机に置かれたモニターの周りに積み上げられた書類や

資料が乱雑に置かれている。



タイヤのついた椅子を器用動かし振り向く好青年。


椅子は業務用の椅子ではなく、車いすだ。


これで彼が足が悪いのがわかる。


彼は、間違いなくマコト君の関係者だ。

優しい笑顔を向けてきてはいるが、何だろう?得体の知れない迫力がある。

奥から浮かぶ相手を突き刺すような視線を感じる。



この視線はマコト君が時折見せるモノと同質のものだ。

暗く淀んだ嫌な感じがするもの。




視線は言葉なくものを語る。




踏み込むな、戻れ。




日常に戻れ、こちら側を覗くな。




戻れなくなるぞ、そう警告してきているようだ。



私は、息をのむ。


目の前の優しい笑顔を浮かべる好青年の内側が感じ取れたような気がしたから。




でも、決めたんだ。



私は、向き合うと。



だからこそ、引かない。引くわけにはいかない。



そのくらいの覚悟はしてきたんだ。




部屋の中央にはテーブルをはさんで来客用のソファーが一つあり、


若い男性はそこに座るように私たちを促す。


「では、自己紹介しようか。私の名前は照山 コウ(てるやま こう)20歳。

ここで副所長をしている。

ご覧の通り、足が悪いため車いす生活をしている。

で、次はマコトね、順番にいこう。」

とにこやかに話を進める。


彼は、右手で頭を掻きながら

「そうだな。オレは久野マコト 16歳。

薬師高校1年で弥栄電装のシステム開発部部長もしている」

と言い始めた。



「へっ?」

と、間抜けな声を上げてしまった。


「どうした、自己紹介の順番

は君の番だ。」



「ああ、うん。私は安村ミコ 16歳。

薬師高校1年でビカラ神社の娘です」

と、とにかく自己紹介しないといけないと思い

慌てて自分の事言う。



こいつが弥栄電装のシステム開発部部長?。

何で高校生が会社の部長なの?

わけわかんない?

 

何て思いながら、必死に体裁を整える。



「はははっ、マコト。君は相変わらずちゃんと自分の事を話していないようだね。

改めて自己紹介して正解みたいだね。目的に一直線なのはいいことだけどさ。

君のパートナーにはきちんと話した方がいいよ。」

と笑いながら言うコウさん。




そこにドアをノックする音がする。

そして、ドアが開き失礼します。と女性の声がしてお盆を片手に部屋に入ってきた。




その女性は元気が溢れ出るような明るい笑顔を振りまき、ポニーテールをぴょこぴょこ振りながら

彼らの元に近づいてくる。

そして、お盆を机の上に置いて開口一番に

「へえ、この子がマコト君の彼女なの?」

と、私の顔を覗き込むように迫り、質問してきた。



「エッとどちら様?」

しどろもどろになりながら訊ねる。



「ああ、ごめーん。私は、コウくんの妻で~~マコト君の愛人」

と茶目っ気たっぷりに答える。



「エッ?」

言われた言葉に驚き、しばし思考が停止する。




エッ、この目の前にいるイケメンの奥さんで

さらにこいつの愛人?何気に仏頂面で女に興味ありません的に行動しておきながら

もう女癖の悪いスケコマシ?最近は少し認めてもいいかななんて思ってたのに・・・

刻印者は・・・ビカラ神社で刻印者になるということは、わ、わ、私の婚約者扱いになるのに・・・

これは、二股なの?



と、混乱状態に入ってしまった。








ああ、これはマズイな。

オレは、ため息交じりに頭をかかえる。


安村が放心状態に入ってしまった。



どうするか、思案していると



「こら、ヤヨイ。彼女が混乱してるだろ。困らせてどうするの」

微笑を浮かべ、柔らかい口調でコウ兄が言うと



「あははは、ごめんね。やりすぎたかな。

マコちゃんが女の子連れてくるなんて珍しかったからつい、ね」

と、片目をつむり謝ってきた。



まったく、もう少しギアを落としてもらわないとついてこれない人もいるんだと

理解してほしいね。





「安村ミコさん、改めて紹介するよ。彼女は東雲 ヤヨイ(しののめ やよい)この研究所の職員だ。

僕とヤヨイは、マコトの兄姉に近い立場かな。ちなみにマコトの愛人は冗談だよ」

と、うさん臭い笑顔を浮かべる。

何でこの人は、外面だけはいいのだろうか。


「ごめんね~、ついテンション上がって。普段顔を見せないマコちゃんが珍しく来て、さらに彼女連れだから抑えがききませんでした~」さらにてへぺろをするヤヨイ姉に


乾いた笑いを引きつりながらする安村。


その様子を我関せずを貫こうとしていると。



「ヤヨイも座りなよ、落ち着いて話が出来ないよ。

それからマコト、君も安村さんのフォローくらいしなよ。

君も当事者なんだか・・・」

と何故かオレにまで飛び火した。


「ハーイ」

と明るい口調でコウの左横の椅子に座り彼の腕に抱き着く。

それも幸せそうに。


「わかったよ」と面倒そうに答える。



引きつりながらも状況を整理しようと躍起になる安村。



「まあ、落ち着け安村。茶でも飲んで気持ちを復活させんとヤヨイ姉に振り回されるだけだぞ」

と静かにぽつりとオレが言うと



我に返って恥ずかしくなったのか、顔を赤くする。



まだ、復活までほど遠いようだ。




「はは、すまないね。彼女はこれでも泣き虫さんでね、普段は明るくふるまってるんだよ。悪気はないんだ、許してやってほしい」

コウ兄が無自覚にいちゃつき始める。


止めてほしいんだけど、こっちは見慣れていても結構来るものがあるのに

初対面には、破壊力がでかすぎる。



「あ~そんなこと言う。そんなこと言うとご飯に人参山盛り入れてやる」

とすねた顔をして見せるヤヨイ姉を見て




安村ミコは思う。


 私は、何を見せられているのだろう


と。




「話は済んだか、本題に入りたいんだけど・・・」

イチャイチャムードの中で冷静に空気を切り裂く発言をするオレに





 私にはできない。

 この状況であんなこと・・・とても言えない。

 見慣れているからこそ出来る技なのか、見事すぎる


ある意味感心しながら安村ミコは見て来た。



何を考えて居るのかわからんが、何やら感心してくれているようだ。




復活したか?



「そうだね、本題に入ろう。確かマコトが、使う法術についてと倒したい相手についてかな。

法術についてはマコトが説明してくれるかい。ボクが説明するのは立場的に違うからね。

で倒したい相手については、話そうか」

コウ兄がそういうと安村はうなずいく。


同意してくれたみたいだ。



「まあ簡単に言えば妖怪かな。もう少し難しく言えば禍津神、災いを振りまく神様だよ」

と、微笑を崩さずコウ兄が話す。



「悪い神様ですか・・・でもそんなものいるんですか。いきなりオカルトに行き過ぎて考えがまとまりませんよ」


「そう?オカルトに聞こえるのかい。でも、もう君は見てるし体感しているはずだよ。君自身も当事者だろう、刻印者の戦いを」

コウ兄がそういうと安村の左手についいている念珠を指さす。

その行動と言葉にハッとする安村。




確かにこの間目の前に起きた出来事は記憶に新しい・・・と言うか衝撃過ぎた。

オカルト話と片付けることのできない出来事。

アレを見て体験している上にそのオカルトの元となる念珠を指さされれば、

目の前の青年が言う言葉を与太話にはできないだろう。



『なるほど、それならば理解できる。汝らの戦うべき相手が何なのか』

とこの場にいる3人の頭に男性の声が響く。



「へえ、これが例の神様かい。初めましてビカラ様でいいんだよね、一応ここにいるみんなに聞こえるようにしてくれていると考えていいのかな」



『そうじゃのう、それでいい。一応奴が神事で勝ち星を一つ上げてくれたおかげで神力が増したからの。身近にいる者で刻印者、導き手が認めた者なら会話が出来る。姿までは見せられんがの』



「なるほど、マコト。君には神様アドバイザーがついているわけかい。話が早そうだ、では、話を戻してボクたちが倒したい相手、化け物や妖怪に近い存在だ。確か禍わいたる夜の刃と言われている」



『じゃが、アレは封印されているはずじゃ。現世うつしよに現臨してはおらんじゃろう』



「してるさ、あの化け物は。あのくそ蛇野郎の禍津夜刀まがつやかは」

目が鋭くなり、怒りをあらわにするマコトが静かに答えた。



その言葉に今まで明るい笑顔を振りまいていたヤヨイ姉が静かになり口を一文字に紡ぐ。

そしてコウ兄の腕を掴む手もわずかに震える。



甘々ムードが一転し、緊張感の張りつめた空気になり、戸惑う安村に

「はいはい、落ち着こうね。

今回はあくまでもボクたちが戦うべき相手が何者かという説明だけだよ。

理由まではやめよう、話が長くなるからね。

あくまでもビカラ様とミコさんの疑問に答えるだけなんだから」



『そうか、アレが目覚めているわけか。何匹目覚めている?』



「そうですね、私たちが確認できているのは一匹だけです。

封印の石像も8体中1体のみ壊されています。」



『封印の石像も壊されているのか?そうなるとすでに事態は最悪もいい所ではないか!

そうなると何匹かの眷属ももういるのか?』



「いると思いますよ。なんせ10年前の事ですからね。奴が復活した時の被害者が私たちになります。その時に何人かは生き残りましたが、ボクたちの両親は殺されました。

ぼくたちにとっては復讐したい相手というわけになります」



『そうか、そんな前に復活しておったのか。

そして、うぬらが当該者となるれば奴らの事を知っていても理解も出来る』



「事件が起きた当時は、化け物が襲ってきた程度しかわかりませんでしたが、

その後、生き残ったみんなで調べたんですよ。あの化け物は何者でどうすれば倒せるのかってね」



『なるほどの、それならばあやつの言った言葉の意味が解る。汝ら都合に巻き込んだと言うことも納得できるの』



「納得していただければ助かります。まあ、実際の所あの化け物を倒す方法なんてないんですけどね。せいぜい封印までがやっとです。しかも下っ端相手にしか通用しない程度です。

それを本格的に行動しようとマコトは決意を固めてその覚悟のために長い階段を駆け上って光の御柱を見るという行為をケジメとして行って刻印者にたまたまなったわけですね」



『確かにそれならばうなずける。

刻印者が選ばれなければ、その因縁に近いものが引き寄せられる。

その条件に合い引き寄せられたのがあやつという事か』

とビカラは納得してくれたようだ。


安村はというと話の内容に引き気味になっていた。

突然化け物が街にいて、それを倒そうとしている。なんてどこの熱血漫画だ、と思うだろう。


しかもその化け物に両親を殺されてその復讐のためになんてテンプレ展開を言われても

困るだけだろう。



あんなもの創作物で、幻想の世界の話でしかない。

それが、身近にあるとなると恐怖でしかない。



でも、これは避けることのできない現実でオレは当事者だ。



「はい、私達には奴らと戦うすべがありません。

一番弱い下っ端に何度か遭遇しましたが何もできないままでした。

ですから、いろんな事に手を尽くしましたが無力そのものでしたよ。」




『たしかに奴らが相手なら普通の方法では倒せぬ。

刻印者の力が必要となるのもうなずける』



「そうです。マコトが偶然手に入れ力は、奴らに反撃するためには必要な切り札になりました。

なので足りない情報をいただきたいわけです」



「久野君、君があの時に神社にいたのはそういうわけだったんだ・・・」



「そうだ、あの時にはオレは無力でしかなかった。それでもオレはあきらめきれなかった。

奴らをぶっ倒したかった、その覚悟決めるためにこの辺りにある神社の中で

一番長い階段のあるビカラ神社を上り、光の柱を見ることでケジメをつけて奴らに戦いを挑むつもりだったんだよ」

と、つぶやく。



安村ミコはそのオレの横顔を見て


 そうか、あそこにいたのはこれの決意することで、

 必ずその化け物を倒すという彼なりの覚悟決めるための儀式だったんだ。

 それがたまたま刻印者の義と重なったんだ。

 偶然にしては、出来過ぎてるかな。

 でも・・・


と優しい顔で見つめるその姿に



年長の二人は優しい顔を向け、


「何見てんの、今はオマエが説明しろって言ってきたことを説明してるんだ。真面目に聞け」

と、仏頂面で言い放つ。


それに対して、鳩が豆鉄砲を食ったように呆ける安村とその姿を見て呆れ気味に年長二人がいた。




そして、オレ以外は思う。


  空気読めよ


と。



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