act20 彼の真意を探る
ヒロイン視点です。
AM 9:50頃 薬師博物館前
約束の時間の30分前に来てしまい、戸惑っています。
はい、私テンパってます。
明るめの色をしたワンピースを着てうつむき少し周りを気にしています。
どう映ってるんだろ、今の私。変じゃないかな。
何だろ、私。
これじゃあ、なんか初デートを楽しみしてる女の子みたいじゃない。
そう自覚して自分の顔がほてるのがわかる。
でも、最初がキツイい方したし、その後の行動も辛辣だった気がする。
思い返すだけで死にたくなる。
それにまだ彼に言えてない事がたくさんある。
これだけ悪印象積み重ねて、今更どの面下げて乙女モードになってんだか。
そう考えると気分がなえる。
情けなくなる、泣きたくなる。
どんどん表情が暗くなるのがわかる。
朝なのにすでに私はお通夜モードになっていく。
そこに自転車を押しながらラフな格好のマコト君が現れる。
「待たせたか」
と、私に声を掛けてきた。
私って気づいてくれた。
変じゃないかな、何て考えちゃう。
複雑な感情が入り混じってる。
私は、入り混じる考えをそんなことないと首を軽く振り、
「そんなこと無いよ」
「そうか、すまんが自転車置いてくるから少し待っててくれるか」
「うん、大丈夫だよ。待ってる」
そう返す。
マコト君を前にするともうどうしようもない。
完全に乙女モードになる。
ただ悲しいかな、向こうにそんな気がないのがわかる。
彼の向ける視線の先に私はいない。
それどころか彼のたまに見せるあの表情は、私を不安にさせる。
その正体が何かわからない。
私がそんな事に葛藤していると彼が戻ってきた。
そして、戻ってくると
「じゃあ、いきますか」
といい、自然公園の裏手にある建物の受付まで案内されるままついて行く。
ここって裏口で搬入用の入り口だよね。
あれっ?正面入り口じゃないの?
何て考えて彼を見る。
相変わらず飄々としている彼に少し腹を立ててみる。
なんか、私だけ独り相撲してるみたいで腹が立つ。
彼は、受付でそのまま話し始めると顔なじみのようで
係員から簡単に入館パスを受け取り、こっちにやってきた。
私は、今の私の気持ちを隠すように微笑で隠す。それを悟られまいと努力する。
「さて、行きますか」
マコト君は私を手招きする。
さあ、彼の秘密とご対面だ。
多分、ここで聞くことはなんとなく大変なことだとわかる。
彼の・・・マコト君の纏う気配がなんか違う。
なんとなくだけど、フライング乱闘の時に似てる。
負けるわけにはいかないという使命感が見える。
それ以外にも何かどす黒いものもうっすら感じる。
多分その黒いものが、私の不安の元のような気がする。
傍にいるのに遠くにいるような感じ・・・とても嫌な感じだ。
でも、向き合わないといけない。
私達は、これから本格的に神事と向き合うことになる。
その為に必要な通過儀礼だ。
さあ、行こうか。
マコト君に促されるまま館内に入っていく。
彼は、ずんずんと管内を進む。勝手知ったる他人の我が家のような感じで
その彼を私は追いかける。
彼はある部屋の前に立ち止まる。
ドアには副館長室というプレートがつけられていた。
ドアの横にあるインターフォンをマコト君が押すと
『はい、どなた?』
と若い男の声が響く。
「コウ兄。約束通りに連れてきたぞ」
そう簡単に答える。
『相変わらず愛想がないね。開いてるから入っておいでよ』
と声の主は入室を促す。
扉を開けるとそこには優し気な若い男性が椅子に座り、笑顔で出迎えてくれていた。