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アンティーククロック~復讐を目指す非常識現実生活~  作者: 団栗山玄狐
第一章 古き神事と理(ことわり)の捉え方
19/52

act18 長い早朝の終わり

主人公、ヒロイン視点です。




奉納神事という名の格闘戦はとりあえず終わった。



シオは悔しそうに倒れて意識のないケンジを何とかたたき起こし

その場を後にした。


憎まれ口の1つも言うかと思ったのだが、何もなかった。

まあ、アレだけデカい口を叩いて負けてりゃ世話がない。



これ以上の恥の上塗りはしないか。



敗者のお二人は早々に帰り、オレはというと

その場に座り込んでしまった。



結構な力の差を埋めるために異常な緊張感の中で集中力を維持しすぎた。



緊張感を維持しすぎたせいでオレもそれどころではない。


まず、息を整え、立ち上がるくらいまで回復したいところだ。


そんな状態のオレに安村とその肩に乗った小っちゃいビカラが駆け寄ってくる。

項垂れているからどんな顔で近づいてきたかもわからない。


そんな状態のオレに

「アレはなんだったの?いったいどうやったの?」

『なぜことわりの法術であのようなことができたのじゃ』


と、こっちの状況を無視してまくしたてて聞いてくる。



それも何度も何度も。



あ~うるさい、息整えるだけでこっちはいっぱいいっぱいだっての。



戦闘でのオレの説明聴いてなかったのかよ、


と言いたいがオレもそれどころじゃ無いので何も言えない。



へばってるのくらい分かるだろうが!!



と、怒鳴り散らしたいところだが、それもできない。



今は空気が欲しい、空気が足りない。



チートのバフ掛け野郎と凡人代表のオレが互角以上にやってのけたんだ。



どれだけ大変かわかるだろ、それとも見えてないのか。



ああ、相方に恵まれてねえな。ホントに。




さて、どうしたもんか。


息を整え、気持ちも落ち着けようと必死のパッチ状態だ。



そんな状況のオレが、途方に暮れていると不意に腕時計がアラームを鳴る。



ああ、もう時間か。

帰らんと学校に間に合わなくなるな。



ここまでへばると考えること自体が億劫になる。


もうどうでもいい、何て思ってしまう。


視点を合わせるのも結構大変な状態だ。

それでも膝に手を置き、無理に立ち上がる。


ふらつきながらも御手水まで歩みを進めると

不意に腕を掴まれ、


「無視しないでこっちを向いて説明しなさいよ」

安村がご立腹の様だ。


だが、手を掴まれたことでオレは座り込んでしまう。


抵抗できるだけの体力も残っていない。


結構いっぱいいっぱいなのに。



「あ、あの・な。オ・マエは、・・・見てただ・けだから・・・元気・・・あるだろうが、

オレは、結構無理してんだよ。それに今から帰って学校行く準備もせにゃならん。

時間・・・が、なんだよ、余裕もないんだよ」

と息も絶え絶えで答えると。


流石にオレの状況に気が付いたのか安村は「ごめん」の一言を言うと立ち上がるために手を貸してくれた。



困惑しているのは、話し方と行動で理解はできたが、ソレはそれ。

こっちは、へばっているのでそれどころじゃ無い。



「とにかく、説明に関しては今日の放課後にでもする。

まだ、朝もどころか早朝もいい所だろ。

さっきも言ったが今から帰って学校行く準備しないといけない。

安村は、ここはオマエん家だからいいけどな」

と、言い切る。



「わかったわ、じゃあケーブルカーまで送るわ」

と申し訳なさそうな顔をして肩を貸してくれた。


「御手水に手荷物を置いてあるから先にそっちに頼む」

というとまず御手水まで向かってくれてからケーブルカー乗り場まで案内してくれた。


こんなものがあるとは、と感心してしまった。




ケーブルカー乗り場で安村が申し訳なさげに



「ごめん、なんか慌ててしまったみたいで」

と殊勝な態度になっていた。


ん?なんか雰囲気変わったか?



まあ、いい。


それはさておき、どこから説明したものか。



と力なく考え、途方に暮れているオレは


左腕につけられた腕時計を虚ろな目で改めて時間を確認する。




「それはいいけどね。説明に関しては学校が終わってから教える。

それで納得してもらえるか?」



「説明は、説明してくれんだよね?」

ん?さっきまでの勢いはどこに?



何か急に態度が変わってどうなっている?


まあ、いいか。

こっちはそれどころじゃ無い。


体力を復帰させてから、気持ちを落ち着けてから

学校に行って、・・・あと二人に説明する内容を考えて・・・




ああああ、やること積載だ。



「ああ、間違いなくするよ。なんせ相方だからな」

と、オレが言うと俯きながら静かになった。



まだ、暗めだから表情がわからん。



まあ、いい。


考えるのはやめだ。



オレは、二人と別れ家路についた。



ホントに長い朝が・・・早朝か。


終わったよ。


もう少し楽に出来ないもんかね。









取り残された私は、途方に暮れていた。


周りがまだ暗めだから少し俯いて誤魔化したけどバレてないよね。


さっきは、慌てて説明を迫ったけどね。


なんせ目の前で起きたことがすごすぎて、理解が追い付かない。

情報が多すぎるよ。



もう、結果が見えているような状態からの逆転劇に、


マコト君が方位鎧を使えない責任が私にあるなんて言われて



申し訳ないやら、情けないやら。



その上、いきなり相手を圧倒し始めるし、


何か、いろいろ説明していたみたいだけど、隣で慌てふためくシオの相手でそれどころじゃ無いし、


更にビカラ様が取り乱して慌てるし、もうこっちもいっぱいいっぱいだよ。



何て相手してたら、勝敗は決していた。


まさかの大番狂わせでマコト君が勝利した。




その事に意気消沈したシオ。




あれほど強気な姿勢でいたのに見る影もない。


ホントご愁傷様としか言えないよね。



でも、あれほど大きな口を叩いていたんだから自業自得だよ。


私もそんなことを考えてる場合じゃない。



彼の戦いに目を奪われてしまったから・・・





戦い方はお世辞にも・・・かっこいいとは言えない。


結構無様だったんだけど・・・・誰かが言ったけ、無様でも泥臭くても必死にやる姿はかっこよく見えるって・・・まさかそれを自分が感じる時が来るとは思わなかった。



来てしまいましたよ・・・もうどうしよう。



照れ隠しで質問攻めにしたけど、何やってんだろ。



冷静になると、彼はズタボロのぼろ雑巾のようにくたびれていた。



やっちゃった・・・慌ててフォローに走るけど、嫌われてないよね。



ウザがられてないよね、大丈夫だよね。



なんて自問自答して彼を家路に送る。



何か乙女になってない私。



それに何か私、大事な事忘れてない?


忘れてないよね、もうどうしよう。



何て状態で私の長い朝は終了した。




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