act16 奉納神事 神武天 激突!亥vs子3
主人公とヒロイン視点です。
AM4:00 ビカラ神社にて
オレは、イノシシ戦士の攻撃をかわすことで精一杯だった。
なんせ相手の身長3mと身長178cmの学生だ。
体格差だけでも面倒なのに元々の体力差もある。
更に向こうさんは、方位鎧でのバフまでかかっている。
普段の体力差+身体強化では、最早勝ち目すら見えなくなる。
なんて冷静に状況を分析していた。
あの先輩が自慢げに威張っていた金剛石、つまりはダイアモンドの鎧と武器。
確かに天然で最も固い鉱石ではある、あるのだが物を知らんというか、
漫画の見過ぎと言うか、あきれる。
でも、これで理解できた、こいつは理の意味も使い方も
理解できていない力に魅入られただけのおバカさんだということが・・・
と思いながら必死に攻撃をよける。
そして、ある程度距離を取って相手を見据える。
肩で息をしているオレに対し、ケンジは、イノシシ顔で口元をゆがませ見下し、
ご自慢の金剛杵で自分の肩をトントン叩いていた。
見た目は完全な怪人である。
余裕タップリなことで、オレは目の前のイノシシ面を恨めしそうに見る。
「どうした、後輩。息が上がってるぞ。最初の余裕はどうした?」
見事なまでの煽りをしてくるケンジ。
分かっていいるが、冷静にいないといけない。
なんせオレの使う理の特性上冷静で居ることが問われる。
「そ、そう、ですね。さすがにでかい鎧着込んで、弱い者いじめして喜ぶ、
先輩からすれば物足りないかもしれませんね。」
息を整えながら、皮肉を込め、視線をそらさずオレは言う。
「そうだな、いい提案だ。なら、負けを認めな。それで終わりだ、カンタンだろ?」
イノシシの顔がにやけて見えた。
中の人と連動しているようだ。
何て無駄に高性能なマスクしてんだ、と悪態もつきたくなる。
「それも論外ですね。オレにはやらないといけないことがありますからね。」
「英雄志願か、復讐ってやつか、今時そんなの流行やらんぜ。あきらめちまえよ、後輩」
息を整え終わり背筋を伸ばしふらつきながらも真っすぐにオレが立ち、
「できませんね、こっちも糸口をやっと掴んだんですよ。このチャンスを逃せない。
それに・・・・」
オレは息を大きく吸い込み、そして吐いた。
ゆっくりと、はやる気持ちと早鐘を打つ身体を落ち着けるために
何度もゆっくりと呼吸を繰り返す。
「勝った気でいるのは、これに耐えてからにしてくれますかね。」
と言うとオレは周囲に10個の武法輪を展開させる。
そして、狙い撃つようにケンジを指さすと、10個の武法輪が
ものすごい勢いで打ち出される。
まるで弾丸のように打ち出された10個の武法輪がケンジに襲い掛かる。
だが、ケンジは慌てることもなく金剛杵で叩き落す。
だが、速度が速く連続で来る武法輪を最初の7個までは叩き落せたが残りはできなかった。
カンタンな理由だ、8個目が金剛杵を砕いたからだ。
そして、残り2個が鎧に当たる。
当たったところは左肩と腹部その鎧を吹き飛ばし、あまつさえダメージを与えたのだ。
力の差は歴然の状況で起きたことに驚く、私とシオ。そして、攻撃を受けたケンジ。
シオは驚く。無敵の金剛石の武具が砕けた。
隣にいる同じように驚いているミコに詰め寄る。
「何であんなことができるの?アイツは何者なの?」
私は慌てて我に返る。
「知らないわよ、私が聞きたいぐらい。私より彼の事詳しいんでしょ!」
「そうよ、あの足引っ張りで役立たず。普段何考えてるかわからない無表情。
その程度は知ってるわ。
そんな奴が何であんなことができるのかって聞いてるの!」
さらに詰め寄るシオに
「だから、知らないよ。彼には分らないことが多すぎるもの。
何も知らないと思ったら、私以上に神事に詳しいし、
問い詰めたら調べたって言うし割と冷静だし」
言っていて気付く。
そう彼のことを知らない。
ただ、自分の立場でいろいろと責め立てたけど、何一つ知らない。
彼の言うことをきちんと聞いていればもっと違う言い方ができたのかな、なんて思うのだ。
『じゃが一つだけ言えることがある』
混乱する私達にビカラ様が割り込む。
「なんですか、わかることって」
少し落ち着いたシオが訊ねる。
『少しの時間じゃが、あ奴といてわかったのじゃが。あ奴はすさまじいほどの努力家じゃ。
導き手と会うまでに調べることのリストを作り光る箱を
使って調べまくっておった。
其れこそ必死に。ぬしらが能天気にしているときも調べておった。
訊ねれば、「わからないからを言い訳にしたくない、
出来ないを理由にしたくないからだ」といっておったの』
と、この言葉に黙る二人。
二人とも知らない、わからないを繰り替えてしたことに気が付いたのだ。
ただ、喚いて慌てているだけ。
シオは今戦う二人に視線を移す。
その表情は真剣になっていた。
私はうつむいた。
何慌ててんだろ、わたし。
何もしていない時、彼は必至に戦っていたんだ。
私は自分の義務だからと理由をつけて逃げるだけだったのに・・・
『今からでも遅くはあるまい。奴をきちんと見るのだ、導き手よ。
ワシも驚いたのじゃ、歴代の子の刻印者ができなんだことをあ奴は・・・マコトはやっている。
じゃが、これをしなければいけないじゃろう。わしらの未熟が招いたのだ。
だが、これからいくらでも挽回はできるじゃろう。
だから、見るのじゃ。目をそらさず奴の闘いを、わしらも一緒に戦わねばの』
その言葉がミコの心に深く響く。
私は意を決して前を向く。
彼の・・久野君の・・・いえ、マコト君の闘いを見届けるために。