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アンティーククロック~復讐を目指す非常識現実生活~  作者: 団栗山玄狐
第一章 古き神事と理(ことわり)の捉え方
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act12 奉納神事 神武天 開幕

ビカラ、ヒロイン視点です。

主人公は出ません。


AM4:00 ビカラ神社にて



境内中央にて巫女姿のミコが一人で立っていた。

正確には左肩に少し大きめのハムスター姿のビカラとともにだが。

神事の行われる結界内では実体化が可能になる。



何てご都合設定なのだろうと思った。



まあ、そのご都合設定の神事をボイコットしようとして

追い詰められている私が言うセリフじゃないかもしれないけど・・・



それはさておき、ビカラ様だけじゃなく他の神将も同じ立場になるそうだ。

見てみたい気もするけど、見るのも怖く感じる。



ウチが干支でネズミなのが幸いなのかも。

ちょっとかわいいし・・・不謹慎だけどね。



そのビカラ様、神社の中でも使える力もわずかなので実体化できても小さな状態らしい。


渋いオッサンの声で話す可愛いハムスター。


違和感全開であるが、見える相手がいるだけまだましだ、と考えことにした。



「始まりの祝詞ってどんなものなんです」

不謹慎な事を考える私が尋ねると



「まあ、開会式の祝いの言葉のようなものだ。気にするものでもない」

と言いながら小さなハムスターが辺りを見回す。



やっぱりかわいい。



これが、小さなイノシシだったらなかなかシュールに感じるのだろうか。



やめやめ、変な事考えんの!



「それよりも、マコトの奴はまだ来とらんのか」

周りを見回しビカラ様は、苛立ちを隠せないでいるようだ。



その姿をほっこりした感じで見てしまう。



「私としては、このまま来てほしくないんですけどね」

と私は、うなだれるように答える。



「なぜ、そこまでこの神事を嫌がるのじゃ?勝者には願いをかなえる権利が与えられるのに?」

ビカラは毅然とした態度で尋ねるのだがその愛らしい姿を

見る限り、威厳のかけらもないと私は苦笑した。



「えっとですね。願いをかなえる権利には魅力を感じます。

でも、この神事は人殺しも公認されているんですよね」



「まあのう」



「私は、自分の目の前で人が傷ついたりするのが嫌なんです」

私は、自分の意見をはっきりという。



「そうか。確かにその言い方だとおぬしが優しい人間だとも聞こえる。

だがのう、自分の見えない所でなら人がいくら傷つこうが死のうが構わんと

言っているようにもとれる。

おぬしは今、自分の置かれた現状と真剣に向き合う気持ちが欠けているようじゃのう。

被害者で居たがるの人の常じゃが、もう少し当事者としての覚悟がほしいところじゃのう」



ビカラ様は、私の肩に座り込み腕を組む。



かわいい・・・じゃなくて、


「そんなのいいようでいくらでも変わりますよ」

反論するも


「そうじゃ。じゃが逃げ出したい気持ちが強いのも確かなはずじゃ」



「そうかもしれないけど・・・」

私はそれ以上先の言葉を続けることができなかった。



図星をつかれたとも思いたくなかったが、いまの状況から逃げ出したいと

いう気持ちでいっぱいなのも確かなのだ。



『自分の置かれた現状と真剣に向き合う気持ちが欠けている』

その言葉が胸に突き刺さるような気がした。


「それにの、死んでもこの神事の儀の間は甦る。まあ刻印者、導き手の資格は無くすがな」



「ホント、ご都合主義ですね」



「奉納神事とはそんなものだ。

祭りと変わらんからな。

祭りも民が楽しみ、土地を清めるためのモノだ。

元となる考え方は同じじゃ」



「その言い方だと、この神事も何かを清めるためのモノなんですか?」



「そうじゃの、何を清めるかまでは言えんがな・・・」


「肝心なことは言えないんですね」

目を細めてビカラ様を見る。


「そういうな、語れぬ神の事情もあるのだ」


「まあ、いいですけど。ここまで来たらもう腹をくくるしかないので・・・」



「いい心がけじゃ、それが最初からあればここまで無駄にこじれることもなかっただろうにな」



「・・・すいません」

私は、返す言葉もなかった。



しばらくの沈黙が続き、久野君の姿も見つけられないまま時間だけが過ぎて行った。


ピンポンパンポン。よくアナウンスの前に聞こえる音が唐突に神社内に響く。


何とも不釣り合いな音だよ、これ。


その音に体を強ばらせて驚く私に

「慌てる出ない。これは、祝詞の始まりを告げる音じゃ」

ビカラ様は、言う。



『昔からこんな音を使うんだ』と少し安心して、おかしくも感じた。




昔からこんな音を流してたんだ。




《お待たせしました。これより神事始まりの儀を行います。

なお、注意点として始まりの儀が終了しない内の神事開始は、認められません。

又、刻印者、導きの巫女それぞれが社内にいること以上の条件を満たしていない場合

対象の刻印者、導きの巫女は即失格となります。》

何処かの可愛い系の声が響く。



《では主催者に始まりの祝詞のりとを読み上げていただきます。》



〈本日、十二の刻印を持ち者達が集い神事を迎えられることを喜ばしく思う。

 時を刻む針より汝らにことわりと方位を守護する将との絆を刻印した。

 汝らは、互いに競い合い、又、禍いなる夜の刃を打ち滅ぼし、

 我の居場所を指し示す羅針盤を手に

 我の元にくる日を待っている。

 我は、諸事情があり、今いる場所から動けぬ。

 ぬしらの誰かが来るの待つしかない身じゃ。

 それゆえに汝らが我の元にくるのを待っておる。

 そのための儀式である神事 神武天を今より始めるものとする。

 では、皆の者がんばるように〉

今度は渋い系のおじさまボイスだ。


声の取りそろえがテンプレだ。



《では、奉納神事 神武天を開始します。

詳細は、各担当の神将にご確認の上、おこなってください。

皆様によき幸が訪れることを願います》



始まりの祝詞の読み上げが済み、私は、本堂の前で佇みながらため息をひとつついた。



「どうしたのだ子の巫女よ」

私の左肩に乗るハムスター(ビカラ様)が声を掛ける。


「これで祝詞は終了なんですよね」


「そうじゃ、これで晴れて神事を始めることができる」


「やっぱり、不参加にならないかなぁ」

私は、項垂れながら呟く。


「まあ、無理じゃな。祝詞が告げられる時に十二の刻印者と言っておったからの。

今回の神事は全員参加じゃ」


「でも、見る限りあいつここにいないし。何かの間違いかもしれないですよ」

周囲を見渡すが、人の影すらない。

久野の奴どこにいるのやら。


「いや、あ奴はこの境内のどこかにいるはずじゃ」


「そうですよね。でもどこにいるんだろう」

改めて境内を見渡すが、そんな人影すらない。

ホントにいるの?


「相変わらず、貧乏くさい所ね」

私は声のするほうに視線を向ける。




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