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アンティーククロック~復讐を目指す非常識現実生活~  作者: 団栗山玄狐
第一章 古き神事と理(ことわり)の捉え方
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act10 フライング 五

主人公視点です。


pm4:00頃(16:00)

近隣の自然公園にて






青田ケンジは止まらない。




自信と努力に裏図けられた自尊心が垣間見れる。

やや、強過ぎる自尊心だが。



「それでもオレには、ここでやる気もないんですけどね」

と嘆息気味に答える。

息切れしながらも懸命によける。



「何言ってんだ。刻印者になってる時点でお前も参加者だろうが、逃げれるわけないだろうが!」

あきれ気味言い出すケンジに対し



「ま、否定はしませんよ。ですが、それは今ここですることじゃない」

真顔で答えるオレに



「どうせすることは一緒だろうが、今やるか後でやるかの違いだ」

うれしそうな顔で棍棒を振り、歩みを進める。

もう待ちきれないという感じだ。



相手をぶん殴る感触を確かめたくて仕方ないようだ。



「そんなことは、ないですよ。物には順序がありますよ。野球部のホープがそんなことでどうするんですか」

オレは相手の攻撃を息を切らしながらよけ、対策を考えながら話を続ける。



「ねえよ、順序なんか。てめえはオレのストレス発散になればいいんだよ」

というとケンジは走り始める。



金剛杵を両手で持ち野球のスイングのように横に構えながら近づいてくる。



最早問答無用だ。








こいつは『祝詞』のことを知らない。






どうせ手に入れた力に浮かれて話を聞いていなかったか。


子供か、と思いながら。





左右から振り抜かれる棍棒。


頭を下げ、逃げるようによける。



ほっとしたのもつかの間、今度はオレに向かって振り下ろされる。


とっさに右足で地面を蹴り、左に飛ぶ。



上手く受け身も取れず、地面を転がる。



棍棒が振り下ろされるたびに

ブンッと風を切る音が聞こえた。



音をさせている方はさぞ気分がいいだろうが、その音を近くで聞かされる方はたまったもんじゃない。




余程気分がいいのか、あんニャロメの顔に愉悦が浮かぶ。



むかつく限りだ、こっちが反撃できないのをいい事にやりたい放題やりやがって。



反撃のない安全に胡坐掻きやがって、いいご身分だね。




「ははは、よけるのはうまいな。だがよ、いつまでもうまくいくとは限らねぇな」

高笑いと罵りがオレに向けられる。


そして、棍棒を振り上げ、見据える。いや、見下してくる。





「ちっ」舌打ちし、座り込んだままの状態で、振り下ろされた棍棒をよけるために横に転がる。


向こうは現役運動選手であり、体力もあるがこっちはただの帰宅部である。



運動能力の差は歴然である。

必死に向こうが振り回す、棍棒をよける。


かっこよくよけるなんてできない。


オレはただ必死に無様によけるだけである。



反撃に転じようとしてもできないもどかしさを抱えながら。

あまりにも相性が悪すぎる。



たぶん相手はその事も計算に入れての挑戦だったのだろうと感じるほどに

攻撃をよけながらもそんなことを考えてしまう。



打開策を考えるのだがその間を与えないと言わんばかりの

猛攻が続く。


いい加減にしてほしい。



金剛杵をブンブンと振り回しこちら動きを抑え込むような動きだ。

動きは直線的であるのだが見事なまでにこちらの行動を読んでいる動き方だ。



これはスラッガーがピッチャーの球種を読むものと同じように考えて居るのだろう。

つまりは相手の行動の先読みだ。


単細胞のわりに先読みができるのか、と感心もし、何て能力の無駄遣いを、と呆れる。


これができるのなら、今仕掛けてくればどうなるかくらい理解できてもいいだろうに・・・




オレも反撃したい。




だが、ここで反撃したら自分も今回の神事を失格処分になる可能性がある。

巻き込まれているだけなのだが、それでもルールを破っていることには変わらない。



情状酌量を求めてもそんな事を都合よくしてくれるわけもない。

ケンカ両成敗なのだろう。

その判断が一番簡単で楽だからだ。


そのために

こんなフライングを防ぐための【始まりの祝詞】だと思うのだが、

と、考えながら襲い掛かる青田ケンジをにらむ。


相手は、目はランランとし口元が獰猛にゆがむ。


圧倒的な力を手にして、それに飲まれている感じだ。


さて、どうするか、だ。


このままでは、いずれにせよジリ貧だ。


授業でやっていた柔道の受け身が役立つ何で思いもしなかった。

確か、前受け身だったか、前方に飛び込むように前転する奴。


これで何とか相手の攻撃をしのいではいる。

それもオレの体力次第だ。



一応トレーニングはしているのだが、それでも体力差はでかい。



話を聞かない体力バカと文系では持久力に圧倒的に差が出る。

その証拠にオレは汗だくに対し、青田ケンジは額に汗がにじむ程度だ。


完全に追い詰められていた。

「相手が、反撃、してこないことを、いいのに。や、やりたい放題ですか」

息をきらしながら悪態をつく。


「知らんね、反撃しないのはオマエの勝手だろ。したけりゃすればいい、それともできないか?

たしかお前の能力はただ数が増えたり減ったりするだけだったな」

相手を見下して、愉悦に浸っている顔だ。


嫌な顔だ、何も考えずただ目の前の獲物を叩き潰すことしか考えて居ないようだ。

しかも自分が負けることを考えて居ない。




 流石にもう面倒だ、やるか。




と、我慢の限界に来た時、


「何やってんの!!あんたは!まだ始めちゃだめだって言ったでしょうが!!」

と女性の声が響く。


その声に我に返ったのか、青田ケンジは青い顔をして声のする方を向く。


そこには、 制服姿で髪の長い目が切れ長のお嬢様のようなの女性が息を切らしてこちらをにらんでいた。


彼女は、ずんずんとこちらに進んでくる。

その歩みにドン!ドン!と効果音が付きそうな歩みだ。

目が赤く光り、どす黒いオーラを出しているように見える。


ま、あくまでもイメージなのだがそれほどの迫力があった。


その迫力に押されているのはオレではなく、その横にいる青田ケンジである。


先程まで有頂天になっていた青田ケンジは、青ざめた顔で彼女に向かい今にも泣きそうである。



こいつは尻に敷かれてるな、と思ってしまった。



「シオ、怒るなよ。ただ今こいつをつぶせば手間が省けるだろ・・・」

先程までの強気はどうしたのか、言い訳を始める。


「あんたね、【始まりの祝詞】を聞く前に神事を行えばその時点で失格になるって言ったよね!

なのになんであんたはそれができないの?バカなの?理解できないの?待てができないバカ犬なの?」

と近づきながら怒気をまとった言葉を吐き出す。



 なかなかな迫力だ。



「そんな事言ってたっけ?」

と、とぼける青田ケンジの言葉に対し、

彼女・・・井守シオの怒りに油を注ぐことになった。


「もう!!この単細胞能天気脳筋バカ!!!!

あんたの考えなしの行動で危うくフライング失格になるところだったでしょうが!!!

相手が、それに気づいていて逃げ回ってくれたから助かったのにそれがわからないの!!!!」

頭から湯気が出そうな感じだ。



 まあ、こっちはやっぱり知っていたか。

 今の会話で理解した。


 やはり、手に入れた力に浮かれていたのだ。

 そして、新しいおもちゃを手に入れた子供のようになっていたんだと・・・。


 巻き込まれるこっちにもなってほしい。



と思うマコトだ。


しどろもどろの言い訳を繰り返す青田ケンジに対し、井守シオは大きく振りかぶって平手打ちを放つ。


 大複ビンタで・・・


 なかなかの音が響く。


この音でみんなが我に返る。


青田ケンジは、痛みでだが・・・。


「迷惑かけたわね、でも本番は勝たせてもらうわ。」

と自信満々で井守シオは言うと両頬を腫らした青田ケンジを引きずりながらその場を後にした。



突然のフライング行為は終わりを告げた。



手綱くらいキチンと扱ってくれよ、とオレは心の中で悪態をついた。


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