福引き
年末の商店街に、いざ出陣! これから福引きに挑戦するのだ。
私の場合、目をぎらつかせている時には、当たったためしがない。
なので、順番待ちの行列に並びながら、欲を捨てる。おだやかな心になるよう努力した。
この状態を維持したままで福引きをすれば、きっと良い結果につながるはず。
高望みはしない。五等の『商品券五百円』、あれを狙う。チャンスは三回だ。
いよいよ私の番になった。
まずは一回目。抽選器をゆっくり回転させる。
コロン。出てきたのは白い玉だ。
ハズレだ。スタッフからポケットティッシュを受け取る。
続いて二回目。抽選器を少し早めに回転させる。
コロン。出てきたのは白い玉だ。ハズレである。
ところが、よく見てみると、さっきの玉とは違うような・・・・・・。
赤い線がついている。これって、「野球のボール」と同じデザイン?
玉の色と景品が載っている「一覧表」に、素早く目をやった。
野球のボールのような玉なんて、どこにも載っていない。
しかし、「当たり」が出た時のように、スタッフがハンドベルを鳴らしている。
すると、遠くの方から誰かが走ってきた。野球のユニフォームを着ている?
次の瞬間、私は目を疑った。あの人って、地元球団の外国人選手じゃ・・・・・・。
と思ったら、「そっくりさん」だった。似てはいるけれど、細部が違う。
そっくりさんは私の前まで来ると、
「ハイ、ドーゾ♪」
そう言ってポケットティッシュをわたすと、Uターンして去っていった。
今のは何だったんだ? まあ、普通にポケットティッシュをもらうよりも、「特別感」はあったけど。
気を取り直して三回目だ。抽選器を高速で回転させる。
コロン。出てきたのは白い玉だ。ハズレである。
ところが、この玉も一回目とは違っていた。これ、ひょっとして「ゴルフボール」?
スタッフがハンドベルを鳴らしている。
そして、またもや遠くの方から誰かが走ってきた。
さっきの「そっくりさん」だ。今回も野球のユニフォームを着ている。
ただし、手にはゴルフのクラブを持っていた。
そっくりさんは私の前まで来ると、
「ハイ、ドーゾ♪」
そう言ってポケットティッシュをわたすと、Uターンして去っていった。
あとで知ったことだが、この商店街は考えたという。普通の福引きではつまらない。
それで思いついたのが、「一覧表には載っていない玉」を加えることだ。ゲームでたとえるなら「隠しキャラ」、食玩でたとえるなら「シークレット」。そういう玉を混ぜてみよう。
そんなわけで、玉の種類は、まだまだたくさんあるらしい。こういう時、近所にいる「おしゃべりなおばさん」の情報は、それなりに頼りになる。
「まだ出ていないけれど、『お姫さま』とか『大魔王』とか、そんな玉もあるんだって」
私の場合、連続で『隠し玉』を引いてしまったので、着替えが間に合わず、ああなったらしい。普通ならゴルフウェアで登場するそうだ。
福引きの期間はまだ何日かあるので、
(あの商店街にしばらく通ってみようかな)
運が良ければ、面白い場面に出くわすかも。
次回、『あなたは、この野球場の来場一〇〇〇万人目のお客さまです』というお話です。