優勝祈願
プロ野球の春季キャンプを前にして、ある球団が優勝祈願のために、チーム全員で地元の神社にお参りしていた。
これは毎年の恒例行事だ。
監督が先頭を歩き、コーチたちと選手たちが続く。ユニフォームではなくスーツ姿だ。球場で見るのとは違った印象を受けるが、これはこれでかっこいい。
優勝祈願の巨大絵馬を奉納し終わると、選手たちの顔がリラックスした。
「おみくじを引いていこう」
選手会長の提案に、他の選手たちは賛成する。
で、みんなでおみくじを引いたのだが・・・・・・。
なんと、全員が「最凶」。不吉なことばかりが書いてある。
・ 落とし物? 見つかりません、さらに増えます。
・ 待ち人? 来ません、あきらめなさい。
・ 優勝? ムリムリ、最下位がお似合いです。神さま、ウソつかない。
選手たちは戸惑った。おみくじには「凶」の下に、こんなものがあるなんて・・・・・・。
しかし、このおみくじ、どう考えてもおかしい。
裏返してみると、そこにはライバル球団のマークが載っていた。
どうやら、その球団のファンによる「イタズラ」のようだ。
さらに他のおみくじも引いて確認したところ、すべて「最凶」だった。それ以外は入っていない。
これが選手たちの闘志に火をつける。
この年、そのライバル球団に大きく勝ち越して、「ざまぁ!」とリーグ優勝を達成。日本一にも輝いた。
で、翌年の優勝祈願だ。
おみくじを引いたあと、選手たちは戸惑った。
なんと、全員が「超吉」。良いことしか書いていない。ひたすらヨイショしてくる。
そして、おみくじの裏にはまたもや、ライバル球団のマークが・・・・・・。
その球団のファンは考えた。あの球団は強い。怒らせるのはまずい。油断させるべきだ。
そう考えて、こんなイタズラをしてみたのだが・・・・・・。
選手会長は真剣な顔で仲間たちに呼びかける。
「『超吉』に浮かれず、しっかり気を引き締めていこう!」
この年も、そのライバル球団に大きく勝ち越して、気分良くリーグ優勝を達成。日本一にも輝いた。
日本一の決定後、ライバル球団のファンは飲み屋で話し合う。
「来年のおみくじ、どうしようか?」
「・・・・・・」
次回は「盗塁対策」のお話です。