雪山ノック
雪国の学校で、野球部の監督は閃いた。
新しい練習法だ。いつも同じような練習ばかりでは、選手たちが飽きてしまう。
名付けて、『雪山ノック』!
これでチームの守備力を強化するのだ。
で、晴れた日にさっそく、野球部全員でスキー場にやって来た。選手たちは学校のジャージ姿である。
まず、監督とマネージャーが斜面の上へと移動した。
次に、小さな雪玉を何個もつくると、斜面の下へと転がしていく。ころころ、ころころ。
これなら、バットでボールを打つよりも簡単だ。監督の体力次第でノックの練習時間が決まる、そんなことはない。今日はたくさん練習できるぞ。
ところが、雪玉は転がっていく内に、ごろごろ、ごろごろ、監督が考えていた以上に大きくなって・・・・・・。
斜面の下では、選手たちが逃げ回っていた。雪玉は小さいものでも、「ボウリングの球」くらいの大きさがある。ごろんごろん、ごろんごろん。
それが勢いよく向かってくるのだ。あれを捕球するなんて無茶すぎる!
必死に逃げ回るものの、たまに雪玉の餌食になって、
「うぎゃあ!」
悲鳴を上げながら、はね飛ばされる選手たち。
その様子を、スキー客が遠くから見ていた。
「あっちで変わったことをやっているな」
少し考えてから、次のようにつぶやく。
「どこかの学生みたいだし、相撲部かな」
なおも雪山ノックは続く。
どすこい、どすこい。
次回は「おみくじ」のお話です。