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番宣

　プロ野球中継の途中（とちゅう）に、実況席（じっきょうせき）にいるゲストの俳優（はいゆう）が、急（きゅう）に顔を輝（かがや）かせた。

「今夜九時から、俺が主演（しゅえん）の新ドラマが始まります！」

　これは番宣（ばんせん）だ。野球の試合そっちのけで、ドラマの見所（みどころ）などを、熱（あつ）く語（かた）っていく。

　最後に何回もドラマのタイトルを連呼（れんこ）すると、すっきりした顔で実況席から去っていった。

　このあとも、試合の中継は続く。

　そして、ゲームセットの前に、夜の九時になった。プロ野球中継が終了して、ドラマが始まる。

　主人公は硬派（こうは）な探偵（たんてい）だ。難（なん）事件（じけん）の解決に挑（いど）む。

　やがて、話はクライマックスに。

「この中に、本当の犯人（はんにん）がいる！」

　最初の事件、その容疑者（ようぎしゃ）は八人だ。

　緊迫（きんぱく）した場面で、ＣＭが挟（はさ）まる。

　それが終わった時、視聴者（しちょうしゃ）は目を疑（うたが）った。

　容疑者の数が増（ふ）えているのだ。さっきまでは八人だったのに、今は九人いる。

　増えたのは、長身の男性だ。いきなり探偵の前に進み出ると、ジャンパーを脱（ぬ）ぎ始めた。

　その下に着ているのは、某（ぼう）プロ野球球団のユニフォームだ。

　さらに野球帽（やきゅうぼう）をかぶると、長身の男性は爽（さわ）やかに言う。

「明日の午後七時から、プロ野球中継があります！　ぜひ見てください！　あなたのハートにホームラン！」

　この男性の正体（しょうたい）は、プロ野球選手だ。

　そこから三十秒間、プロ野球中継のダイジェスト映像（えいぞう）が流（なが）れる。

　プロ野球の試合中に、このドラマの番宣をしたのだから、逆（ぎゃく）も然（しか）り。

　このドラマの中でも、プロ野球中継の番宣をする。番宣には番宣だ。

次が最終回です。