開幕投手を決めよう
夕方に川辺の道を散歩しながら、プロ野球の監督は悩んでいた。
今年の開幕戦、先発投手は誰にしよう。
今シーズン最初の公式戦だ。勝てば勢いがついて、大型連勝につながるかも。
一方で、負けてしまうと、いきなりの借金スタートだ。そのまま、ずるずると大型連敗なんてことも・・・・・・。
だからこそ、勝つ可能性の高い投手に、開幕戦を任せたい。
今のところ、候補は二人いた。
ベテランの「佐藤」と、若手の「鈴木」だ。
この二人の実力は甲乙つけがたく、他の投手たちよりも抜きん出ている。
実績なら間違いなく佐藤だが、チームの将来を見据えて、若い鈴木に大役を任せてみるのも悪くない。これでさらに一皮むけてくれれば、しめたものだ。
さて、どうしよう。
数時間前、コーチたちに意見を求めたら、
「佐藤と鈴木なら、どちらが開幕投手でもいいですよ。監督が好きに決めてください」
そういうわけで、こうして一人で考え込んでいるのだった。
開幕投手を早めに決めてしまえば、選ばれた方も、選ばれなかった方も、事前の調整をしやすくなる。できることなら、今日にでも決めてしまいたい。
開幕投手にするのは、ベテランの佐藤か、若手の鈴木か。
そこで監督は、川の対岸にいる女の子たちに気づいた。小学生くらいの二人組で、片方が白い花を持っている。
「スキ、キライ、スキ、キライ、スキ・・・・・・」
ゆっくりと口ずさみながら、花びらを一枚ずつちぎっている。
監督は思った。どちらの投手にしても、たぶん後悔しないから、あんな風に「占い」で決めたら、どうだろうか。
ちょうどおなかもすいてきたことだし、道の先にはいくつかの屋台がある。
その一つに立ち寄ると、「鉄鍋に入ったひと口餃子」を注文した。
しばらくすると、料理が出てくる。アツアツの鉄鍋の中には、小さな餃子が並んでいた。
それを一つずつ食べながら、さっきの女の子たちをマネしてみる。
「サトウ・・・・・・スズキ・・・・・・サトウ・・・・・・スズキ・・・・・・」
こうして占った結果、開幕戦の先発投手は、「鈴木」に決まった。
悩み事が解決したことで、食欲が元気になってくる。
まずは餃子のおかわりを頼むと、
「あと、焼きラーメンもね。お、川端ぜんざいもあるんだ。これも、ちょーだい♪」
出てきた料理は、どれも美味しかった。
奇しくも、この日、同じリーグの他の監督たちも悩んでいた。
今年の開幕戦、先発投手は誰にしよう。
そして、監督たちのほとんどが、それぞれの「地元の味」で占いを行い、先発投手を決定したのである。
さあ、プロ野球の開幕だ。熱い戦いが今年も始まる。
次回は「契約更改」のお話です。