死球対策
プロ野球の春季キャンプ、その初日にA球団のコーチが言う。
「このチームは昨年、死球をぶつけられることが多かった」
それだけ他のチームから警戒されていたということ。相手投手は打者の体のすぐ近くに、積極的に投げ込んできた。
「こういうことをされるのは、強いチームなら当然だ。選手諸君は胸を張って欲しい」
とはいえ、死球には怪我の危険性がある。できることなら減らしたい。
「そこで、春季キャンプでは、全員で死球対策に取り組む。先生、お願いします」
コーチが呼ぶと、上半身裸の男性が現れた。
タイからお招きした、ムエタイの達人である。
こうして、この球団の春季キャンプの練習メニューに、「格闘技」が追加された。
この情報は、同じリーグの五球団にもすぐさま伝わる。
五球団の首脳陣は慌てた。まずい、こちらも何か対策をしなければ。
B球団「レスリングのチャンピオンを臨時コーチに呼ぼう」
C球団「柔道の師範を臨時コーチに呼ぼう」
D球団「アメフトのレジェンドを臨時コーチに呼ぼう」
E球団「空手の権威を臨時コーチに呼ぼう」
F球団「棒術の先生を・・・・・・いや、ケンカのむちゃくちゃ強いOBを臨時コーチに呼ぼう」
そして、何の対策もしなかった「他リーグの六球団」が、「交流戦」で大変な目に遭うのだった。
「あいつら、乱闘になったら強すぎるだろ!」
次回は『在宅ワーク』というお話です。