1枚目 きっかけ
私の好きなもの
チョコレート
エリンジウム
絵本のキャラクター。
パソコンモニタの脇に置いてる
パソコン本体の側面に貼った
小さな小さなキャラクターの絵
私が好きな絵本のキャラを
真似して書いた絵
誰も気に留めたことのなかったそれに
ある日、会社の同僚の加賀見くんが気付いた
「これ…」
と加賀見くんが言いかけたのを見て
私はあわてて絵を剥がす
そんな私に彼は笑って
「知ってるよ。僕も好きだから」
その瞬間に時間が止まって
私の動きも一緒に止まって
だけど止まっていたのは私だけで
彼はそれを見てまた笑った
普段は仕事の話以外で
話す機会も話題もなくて
飲み会の席の場だって
隣に行くには勇気がいって
なかなか近づくことが出来なかったのに
こんな小さな私の絵が
見えない壁を壊してくれた
ほんわかやさしいタッチの絵柄で
穏やかで幸せな雰囲気の文章
それが好きで読んでいた本
いつも仕事でイライラしたとき
このキャラクターを見ているだけで
なんだか気持ちが穏やかになって
また頑張ろうって気になれる
つい夢中になって
そんな話をしてしまったら
私が手にしていた付箋を
「貸して」
と言って手にする
何をするのかと思って見ていたら
手慣れた様子で私の描いた絵の横に
お友達の絵を描いてくれた
「この絵本を教えてくれた
兄貴の子供にせがまれて」
絵本のキャラの絵を描いてと
いつもせがまれているのだと
彼は照れてそう言った
なんだか場面が思い浮かんで
いいな、とつい口に出る
「そんな優しいお父さんなら
子供もきっと幸せですよね」
加賀見くんは少しきょとんとした後
そうだといいね、と苦笑した
たったそれだけのことだったけど
次はもう少し話せるかな、と
私の描いたキャラをなぞって
そのまま彼の描いたキャラに
指をそのまま滑らせた
最後までお読みいただきありがとうございます