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エルフvs人類  作者: 死希
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始まり

2022年 一月 アメリカ合衆国は緊急事態に見舞われていた。

 アメリカにある50の州の内、既に40の州は崩壊の道を辿った。

 それは突如として起きたのだ――


「全軍、砲撃を開始せよ!」

「我が国を守り抜くのだ!!!」

 訓練によって鍛え上げられた兵士たちを束ねる軍隊長が、獣の咆哮のような指示を飛ばす。

 ドドンッ! ドドンッ!

 戦車から放たれる砲撃。

 空中をマッハ速度で移動する戦闘機の数々。

 そして地べたを強く踏み込む兵士総数、数万人。

「――!!!!」

 地平線が覗く荒野にて繰り広げられた戦争。いいや、戦争というにはあまりにも短すぎる『迎撃戦』は悲しくも一瞬でケリがついてしまう。

 バタン。

 軍隊長の視線が宙をグルンと一回転し、ゴロンと、次の瞬間には地べたに転がった。

 視界に広がる黒煙はつい数秒まで無かった景色であり、何億という費用を費やして運搬された戦車や戦闘機が空しくも墜落している。

 そして部下であり、同じ国を守る同志の死体が雨の如く地面に降り立った。

 数秒後に自分の首が吹き飛んでいた事に気付いて、軍隊長は息を引き取った。

「何故、こんな事に――」

 その言葉が彼の最期の言葉であった。


 時は少し遡る事1か月前。

 その日は珍しく雪が降ったホワイトクリスマスの聖夜に悲劇は起きたのだ。

 街全体が幸せ一色で染まっている雰囲気は一瞬の爆音によって壊される。

 それは奇しくもワシントンD.C州――つまりは政府にて最も重要視される建築物、ホワイトハウスがある州から起こったのだ。

 一つの爆撃は地面を貫き、一瞬にしてホワイトハウスを消し灰へと化した。

 空へと続く黒煙はまるで死神の鎌のようにも見えた。

多くの住人は、何が起きたのか理解するまでに時間が掛かり、また同時に事の重大さを受け止めるには唐突過ぎる出来事でもあった。

 黒煙から現れ、その姿を偶然撮影した者のデータからは3人の影が見えたのだ。

三人、いいや、三体と言うべきか。

 彼らの登場は唐突で一体何が起きたのか、また何が目的なのか、一切判らない。

 そして年を越す頃には50ある州の半数が機能不能にまで陥る事態になったのだ。


 時は戻り、現在。

 ダッダッダッダ。

 埃一つない廊下を駆ける汗だくの兵士は、目の前の大きな扉を遠慮なしに開けた。

 大きな空間に大きな丸いテーブル。

 そしてそこに座る数多くの重鎮と呼ぶに相応しい方々が、険しい顔を浮かべて腰を下ろしている。

「おい、今は首脳会談――」

「大変ご無礼な事をしているのは百も承知で御座います! ですが、聞いてください! 大統領、我が国が全力で注いだ勢力ですが、ものの5分も持たずして壊滅致しました」

「なんだって!?」

「酷な事を申し上げますが、我が国はたった今敗戦しました。直ちに大統領、いえ、この場に居る各国の首相方、直ちに避難してください!!!」

 ドドドッドン!!!!!!!!!!

 叫ぶ兵士の声が響き渡るよりも早く、部屋の中心から大きな爆発が全てを呑み込んだ。

 つまりはこの空間にて会談をしていた多くの首相が一瞬にして命を落としたとも言える。

 ただ一人、虫の息にて全身の火傷に耐えながら生き長らえた一人の兵士は、ぼやけた視界を精一杯見開き、人類の歴史の最期を記憶に刻もうとしたのだ。

 煙が薄れていく。

 一つの影の正体が明らかになっていった。

 人間の大人と同じ体格。一見普通の人間と変わらない容姿であるが、ただ一つ大きな特徴が奴にはある。

 それは耳だ。

 大きく後ろに尖った耳。

 まさに神話に出て来る一つの種族と瓜二つの特徴。そして全ての元凶である奴らもそう名乗ったのだ。

『僕たちはエルフだ、と』

 2022年 一月 人類は、エルフによって種族崩壊の道を辿り始めたのである。


二年ぶりに投稿を始めます

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