ショートケーキ
キャラメル・ラテです!
小説素人です!
良かったら読んでみてね〜♬
「来週のテストは、2人組を組んで、ペアでオリジナルケーキを1つ作ってもらいます」
うぇ?!テスト?聞いてない。しかも二人組でなんて……。担任の先生の言葉に私は絶望した。
私は、製菓の専門学校、マロンド学園2年生。白木美結。
この専門学校は幼小中高専一貫学校でエスカレーター式の学校。幼稚園の頃からこの学校に通う人もいれば、私みたいに専門から外部学生の募集で入る生徒もいる。
多くの生徒は中学、高校からの外部募集で入学してるから、専門からの入学の私はみんなに比べて差がついていた。
「ペアは平等にくじ引きで決めます。同じ番号の人がペアです。それでは、出席番号順に1番から前に来てくじを引いてください」
はぁ……。どうか、どうか。話しやすい人でありますように。そして欲を言うと私と同じレベルくらいの人でありますように……。
『4』
4番だ……。だれ?4番の人……。
「20番だれー?」
「俺17ばーん」
「だれか8番持ってる人〜」
みんなが口々に騒ぎ出した。
「よ、4番の人〜……??」
私は恐る恐るみんなに聞いた。
誰も答えてくれない。え、もしかしていないの?
「あれ、美結何番?」
「あ、りっちゃん。私4番だった」
友達に声をかけられた。
「あー、残念。私3番だ。惜しかった。でもテーブルは前後だね」
「そうだ……ね」
ペアが気になりすぎて、友達の言葉が頭に入らない。
「あ!美結、4番いたよ」
「ほ、ほんと?!」
って、うわぁ……。4番を持っていたのはくじを引いてすぐに席に座って話し合いに参加せずに冷たい目でみんなのことを見ている人だった。
最悪。いや、ある意味最高?きっと私がもっと上手だったら、きっと少しは喜べた。
彼の名は黒島玲生。この学校でも数少ない幼稚園からこのマロンド学園に通う成績トップの男の子。
なんて不釣り合いなんだろう……。迷惑しかかけない。そんな気がする。
でも、話しかけないわけにはいけない。
「あ、あの。黒島くん?よ、4番だったのー?わ、私もね……よ、4番、よろしくね!」
私は噛みながらも精一杯の笑顔で明るく、持ってるくじを見せながら言った。
「あ、そう。よろしく」
つ、冷たっ!!黒島くんはぶっきらぼうに冷たい目をして私に言った。
「それでは、自由創作製菓の授業です。今日は自由に自分の好きなお菓子を作ってください。ただし、90分以内です」
次の時間。この授業は仲の良いりっちゃんとしゃべりながらお菓子が作れるから好き。はぁ……。ケーキのテストもりっちゃんとペアが良かったな。
「美結何作るー?」
「えーっとねー、今日は〜、何にしよう。マカロン?プリン?それともクッキー?思い切って全部作っちゃう?」
「美結……、90分におさまらないよ」
わくわくしてたら、りっちゃんに呆れられてしまった。
あ……。黒島くんだ。何作るんだろう。
チョコ切ってる……。薄力粉、砂糖、卵……。チョコレートケーキかな?
「でーきた!」
私は結局クッキーを作った。飾り付けまで終わって、あとは試食タイムを待つだけ。
黒島くんは……。あ、もう作り終わってる。何を作ったんだ?
な、なに?!あの鏡みたいにキラキラ輝いてるチョコレートケーキ……。金粉がかかってる。まるでお店で買ったみたい。いや、お店にもあまり並んでなさそう。高級料理店のデザートのほうが正しいかな。
「美結、何見てるのー?」
「え?」
「あ、黒島くん。ザッハトルテ作ってる。流石」
ザッハトルテ?!聞いたことはあったけど、未だに見たことがなかった。やっぱり天才は作るものが違う。
次の日
「今日は、各自ペアと来週のテストに向けて打ち合わせや試作品を作る時間にします」
う……。この授業は毎日ある。これから毎日黒島くんと顔を合わせなきゃいけないのか……。
怖い。
「よ、よろしく」
隣に座ってる黒島くんに言った。
「……」
え、なにも言ってくれない。私、嫌われてるー?何かしちゃったー?怖いよ〜。
「何、作る?」
「へ?!」
な、何作るか聞かれた……。え、これは試されてる?なんてこたえるのが正解?!
「く、黒島くんは何作りたい?」
「なんでもいい」
な、なんでもいい、いただきましたぁー?なんでもいいが一番困る。
「白木、決めていいよ」
「え?!」
白木、名前覚えられてた?!どどどどうしよう。決めていいって。えーっと。頭真っ白だ。
昨日、りっちゃんとしゃべりながらだとあんなに案がでてきたのに。
えーっと、えーっとどうしよう。あ、ショートケーキとか?ありきたりすぎ?!昨日ザッハトルテ?作ってた人には定番すぎる?
「本当になんでもいい。好きなの言って」
「しょ、ショートケーキとか……ど、どうでしょう」
「わかった、ショートケーキね」
「いいの?!もっと他にもあるじゃん!マカロンとか、モンブランとか……」
「いや、お前がショートケーキって言ったんじゃん」
「そうだけど……」
あー、今からこんなに緊張してて……。テストもつかな……。
「じゃあ、とりあえず、一人1つずつ作るか」
「は、はい!!」
うぅ〜。どうしよう。ショートケーキってどうやって作るんだっけ?
あー……。落ち着け私。
「できた」
「え?!もう?」
私なんてまだクリーム混ぜてる段階なのに。黒島くんは飾り付けまで綺麗に終わっている。
「わ、私も。できた」
やっとできた〜。少しバランス悪いけど。ショートケーキっぽいかな?
「ん……」
黒島くんは私の切り分けたケーキを一口食べた。
「ど、どうかな……?」
「……しょっぱい……」
え?!?!しょっぱい?!うそ……。
「お前、塩と砂糖間違えただろ」
「え?!」
うそ。そんな初歩的なミス……?!恥ずかしい。穴があったら入りたい。
絶対怒られる。よりによって、黒島くんの前でなんて……。
「……ぷっ……」
黒島くんが少し吹き出すように笑った。
黒島くんの笑うところ、初めて見た。ちょっとかわいい……。
「そういやさ、ずっと気になってたんだけど」
「え?!」
「なんでそんな緊張してんの?」
「え?えっと……」
緊張が伝わってた……。恥ずかしい……。
「そんなに怖いか?俺が」
なんて返せばいいんだよ〜。返事が困るよ、さっきから。
キーンコーンカーンコーン
「はーい、そこまで、それじゃ今日の授業終わり」
「気をつけ〜、礼。ありがとうございましたー」
「それでね、りっちゃん。めっちゃ怖かったんだよ〜」
お昼休み、りっちゃんと一緒に外でお弁当を食べた。そのときに、今日の黒島くんとの出来事を話した。
「黒島くんか〜、確かにとっつきにくいよね。高校の時は違うクラスだったからあんまよく知らないけど」
「りっちゃーん、テストの試作品作ろ〜」
遠くからりっちゃんを呼ぶ声がした。
「今行くー!あ、ごめんね。美結。今日の昼休みに試作品作る約束してるからまた後でね!」
「あ、ううん。頑張ってね」
はぁ……。りっちゃんはいいな。話しやすい友達がペアで……。
「あ。いた。」
後ろから声がした。こ、この声は黒島くん?!
「ど、ど、どうしたの?」
何しに来たんだろう。砂糖と塩間違えたから?やっぱり怒ってる?あの時に笑ってたっぽかったのは、私の聞き間違い?
「いや、俺のショートケーキ食う時間なかっただろ。食うか?」
「へ?!」
「いらないなら俺が食う」
「た、食べます。食べます。いただきます」
黒島くんは、ケーキとフォークを私に渡して、隣に座ってきた。
「お、美味しい」
私は黒島くんの作ったショートケーキを一口食べた。その味は、本当に美味しくて、口の中がとろける味だった。
「それは、良かった」
しーん。気まずい。何か話さなきゃ……。
「お前」
「え?!あ、はい?!」
「まだ、気にしてんのか?」
「え……」
「砂糖と塩、間違えたくらいでそんな気にすんな」
「でも……専門学生なのに、そんな間違い……」
「そりゃあ、専門から入ったからな。仕方ないんじゃない?」
「え?!なんでそれを……」
「俺も昔は、いろいろ失敗してきた。砂糖と塩を間違えただけじゃない。チョコをはさみで切ろうとしたり、卵の殻入っちゃったり」
黒島くん……
「俺は、親が俺をパティシエにしたくて、
この学園に入れられたんだ。別に俺の意志はなかった。うちは、代々ケーキ屋をやってて、一人息子の俺は、半強制的にケーキ屋を継ぐことになる。初めのうちは、抵抗してたけど、今はもう特にやりたいこともないし、諦めてる」
「そうだったの?」
「うん。お菓子作りを楽しいって思ったことが一度もなかった。でも、いつも、自由創作製菓の時に楽しそうにお菓子を作るお前に、白木に惹かれてた。」
「え?!」
え……。いつも、見られてたの?恥ずかしい。
「そして、俺が間違ってることに気がついた。楽しく作らないと、美味しくできないことに気付かされた」
「十分美味しいよ?!黒島くんのケーキ」
「いつも何かが足りないって思ってた。でも、白木のケーキを食べて思った。しょっぱかったけど、幸せな味がした。なんか、食べてて楽しくなる味がした」
「そんな……」
黒島くん。悪い人じゃないのかもしれない……。
「よし、できた」
二人で作ったケーキ、食べたらすごく幸せな味がした……。
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