新人パーティ
ー翌日早朝ー
「ふわぁ〜あ」
ギルドについた俺の目の前には新人パーティと思われる4人組がこちらを見てきた。どの子も活気に満ち溢れる子達でおじさん嬉しいよ。これから生き地獄を味わってもらうけど。
4人を見ていると一人の女の子が話しかけてきた
「初めまして…あなたが今回同行して頂ける方ですか?私はカレンと申します、僧侶職についています。」
「俺はガルムだよろしくな、他の奴らは」
他の3人を見ても既に興味が無いのか各々好きなようにやっている。年上を蔑ろにすると碌なことがねえぞクソ餓鬼ども
「カレン、もう良いだろ!ゴブリン退治で何で同行者が付かなきゃいけないんだよ」
剣士らしいボクちゃんがほざいている、まぁ元気があった方がこの職種向いてるからな、良いってこった。
「ピドナ、文句は良く無いでござる。ギルドが決めた事は従った方が良いでござる」
「いいえ、ピドナの言う通りよ、こんなクエストは私たちで十分だわ!」
ござる?何だござるって?もう一人の姉ちゃんが何か喋ってたみたいだけど、あの盾持った野郎がござる言うから言葉が入ってこねぇ!
新人パーティでワイワイしているのを見ていると、近くに待機していた受付嬢のセイラが説明を始めた。
「皆さんお揃いの様ですね、では今回のクエストの説明を始めます」
セイラが説明した内容は昨日聞いた事とほぼ同じ内容だった。ゴブリンはおよそ20体か、そこそこの規模か。しかしこの規模は新人に任せる依頼じゃねぇぞ、ギルドはどんな管理してたんだ?
「では、皆様のご無事を祈ります」
セイラの説明が終わり、4人の若人とひとりのおっさんはギルドを後にした。
ー道中ー
王都を北に抜けると真っ直ぐ街道が延びていて、2時間程進んだ辺りで二股に分かれるのでそちらを左手側…山へ向かって進む。更に6時間程歩くと今日泊まる予定の鉱山手前にある宿場町へ着く。馬に乗りたかったが、新人パーティで乗れない奴もいたので歩く事にした。馬車も金がないから乗車賃が払えないんだと、新人の辛いところだな。だが今日は天気も良く穏やかな風が暑くなる体を適度に癒してくれる。こんな時があっても良いもんだ。
新人パーティはワイワイやりながら仲良さげに歩いている。組んだばかりと聞いたが相性が良いもの同士らしいな。ふとそんな事を考えているとカレンが俺の方へと近寄って来た。
「あの、歩かせてしまう事になってしまい、すみません」
「気にするな、こんな天気のいい日に馬車の幌の中に居たんじゃお日様が拝めねえからな。こう言うことも悪くねえよ」
「そう言ってもらえると助かります」
「それよりも腹が減ったなぁ」
「そうですね、携帯食があるので如何ですか?」
「いや、それは取っておけ。うん、これで良いか。」
道に落ちている小石を拾い上げると親指と人差し指に挟んでで草むらに向かって弾いた。着弾した所まで歩きそこに手を突っ込むと絶命したウサギがそこにいた。
「よし、飯にしようぜ」
ーー
適度な広場を見つけ、火を起こし、血抜きして皮を剥いだ後、臓物を取り、肉を小分けする。それを串に刺してオリジナルのハーブミックスと塩を振り、火にかける。
「現場で食いもんを用意出来るなら、した方が良い。」
「…あの、ウサギがそこにいると気付きませんでしたし、狩猟の技術は誰も持ってないです」
「それが動物じゃなくてもだ、例えば生えてる薬草はハーブにもなるし、食える果物が分かればそれが食料になる。それに売れば多くは無いが金になるからな。新人が薬草とか採取のクエストが多いのはギルドが新人に知識を覚えさせて、少しでも食いっぱぐれを無くす為でもある」
「なるほど」
カレンは話を聞いてくれてるが、他3人は少し離れたところでパンを齧っている。焼いた肉の匂いのせいかカレンが気になるのかこちらをチラチラと見ているが。まぁいい、肉汁が滴り落ちて来て来たハーブの香りもバッチリで食欲を唆るぜ。
「そろそろいいか、よし食っていいぞ」
「え?それはガルムさんが獲った食材では?」
「新人が遠慮するんじゃねえ、おい!お前らもどうだ?」
離れたところにいる3人に声を掛けるが、反応は冷たいものだった
「俺らは誰の施しも受けない。今日の昼飯は宿で用意して貰ったから問題ない」
宿で用意と言ってもパンと果物一個か、魔法使いの嬢ちゃんはヨダレを垂らしてこっちを見ていたが、剣士の兄ちゃんがそんなこと言うもんだからしょんぼりしてやがる。後で分けてやるか。そう考えているとカレンが申し訳なさそうにこちらを伺っている事に気付く。
「すみません、そう言う事みたいですので向こうへ行きますね」
「おう、そういえばあいつらの名前はなんて言うんだ?」
名前は覚えておかないとな、剣士の兄ちゃんは確かピドナだっけか?
「そういえば自己紹介もなくピドナ達は歩き始めちゃいましたからね、リーダーを務めている剣士がピドナと言います。魔法使いの女の子はアンナ、ガード役のタークスです」
「了解、改めて俺はガルムだ。どこにでもいるC級の冒険者だ」
カレンと握手を交わし、アンナを呼んできてもらう、不審気にこちらへ来たが肉をこっそり渡したらツインテールがピコピコ動いた。喜んでくれたらしい。
「こんな事であなたの事を信用したわけじゃ無いからね!」
口の周りを汚しながら言われても迫力がないな。カレンに口を拭って貰ってご満悦のようだ。しかしあのツインテールの動きはどういう仕掛けになってるんだ?
さて、休憩もした事だし目的地に向かいますか。