おっさんギルドに行く
ー王都冒険者ギルドー
最初に言っておく王都冒険者ギルドは王都支部であり本部では無い。ギルドのランクはSが最高位ランクとなっており順番にS,A,B,C,D,Eとある。因みにガルムはCランクであり、本来ならもっと上のランクにも行けるのだがBランクから指名依頼と言うものが出てきてしまい、指名依頼は断れない上に意図せず時間を束縛されてしまう為、Cランクで留めている。
「えーと鉱山地帯のDランクの依頼は…クソ、ねぇな、そのまま行くか」
依頼探しにしては遅い時間帯のせいか掲示板を眺めても適当な依頼が無かった、諦めてギルドを出ようとすると金髪をポニーテールにした女性が目の前に立った。
「何だセイラじゃねえか、デートの誘いか?」
「違います!えーとちょっとお時間よろしいですか?」
「やっぱりデートの誘いか」
ガルムが笑うとわなわなと震えるセイラ、因みにセイラはギルドの受付嬢である。
「だから違いますって!マスターがお話があるみたいなんです。なので問題なければ、お時間を頂きたいんです」
マスターと言うとゲインの野郎か、まぁ急ぎの用事も無いから良いか
「良いぜ、案内しな」
「ありがとうございます!ではこちらへどうぞ」
案内された部屋に入ると座る様に促された。ソファに腰掛け、出された茶を飲む。こりゃあいい茶を使ってるな。
少し待つと服の上からでも鍛え上げられた肉体だと分かるガルムと同じ年齢くらいの男性が部屋へ入ってきた。男性の名前はゲイン・G・ウィリアム。王都冒険者ギルドのギルドマスターだ。元Sランク冒険者だったが現在は引退している。
「ガルム、待たせたな」
「おう、ゲインその格好相変わらず似合わねえな」
「はは、俺もそう思うよ。ギルドマスターになんてなるもんじゃ無いな」
少しの間近況を話し合った後、ガルムはお茶を一口飲みゲインに尋ねる
「で、用件は何だ?」
「あぁ、実は今度新人パーティが受けたクエストのフォローに入ってもらいたい」
「あ?依頼は基本受けた奴が責任持ってやるんじゃねえのか?」
「そうなんだが、ちょっと事情があってな」
詳しく話を聞いてみると、そのパーティは最近新人同士で結成したらしく、今回が初めての依頼と言うことだ。そして新人が受けた依頼は鉱山内に住み着いたゴブリンの駆除。ゴブリンの駆除は平地だと新人の仕事だが、今回みたいに鉱山に住み着いたゴブリンだと話が変わってくる。相手は夜目が効くが、人間はダメ、それに足場や洞窟特有の障害物、冒険者のストレスで難易度が一気に跳ね上がる。
「しかし何でそんな事になったんだ?」
「新しく入った職員がゴブリン退治だと碌に内容も確認せずに承認してしまってな…こちらも人を出したいんだが、如何せん人手が足りてなくてな」
「あぁ、まぁ何かお前も苦労してるんだな」
ゲインはため息をつき、項垂れる。本部の奴らも相当こき使ってるんだな、本部が近いってのは厄介なもんで。
「良いぜ、ただし条件がある。通常の報奨金よりも上乗せする事と今回の依頼に必要な備品、消耗品は全てそっちで持て」
「良いのか?」
「丁度そっちに用事があってな、新人に仕事の何たるかを仕込んでやるぜ」
指をボキボキと鳴らしているとゲインは引き笑いをした
「新人だ優しくしてやってくれ」
「相手次第だ」
「依頼は明日から開始だ、頼んだ」
ガルムは話は終わったと手を振り部屋を後にした。