男の怒髪は天を衝く
「きゃ〜〜〜!!!!」
空に響き渡る
高い悲鳴
そして 駆け寄る一人の若い男
「かぁさん!?
どうしたんですか!?」
「ここから覗くんじゃないよ・・・
奴らに見つかったら終わりだからね」
「状況を説明してください!」
「うるさいね・・・
仕方ない
ちゃんとあっちは見とくんだよ
前々から近くにでかいもんができてただろう?」
「はい」
「それが こっちに来たんだよ
冒険者は間に合わなかったみたいだね」
「じゃあ・・・さっきの悲鳴は・・・」
「あぁ 村の若い女が一人いかれちまったみたいだね」
「そんな・・・・・」
「おい お前 何してるんだい!」
「何って こんなの助けないわけにはいかないじゃないですか!」
「何を言ってるんだい!
お前に殺せるとは思えないね!」
「かぁさん!
僕は行きますよ!」
そして 駆け出る一人の男
そして 戻ってくる一人の男
「かぁさん!助けて!助けて!」
「言ったじゃないか!!
変なことやるんじゃないよ!
あんたの方が力あるんだから
これでも持って
頭叩いたらいけるよ!」
「かぁさん!」
「助けるんじゃなかったのかい!?
さぁ さっさとやるんだよ!
ほら 早く!
きたよ!!」
「あぁぁぁぁ!!!もぉぉぉぉお!!!!!」
ゴンという鈍い音と共にめり込む
木の棒という初期装備にも等しい武器
人型の硬い皮膚もないゴブリンには強烈な一打だ
ましてや 狂乱状態の人間ならば
当たれば血を出して気絶するだろう
「はぁはぁ・・・やりましたよ」
「まだだよ
止めをさすんだ」
「できない・・・できないよ」
「殺るか殺られるかだよ
次のもくるから
私がこっちのを処理しとくけど
さっさとやれるようになるんだよ」
こうして災厄だらけの日常が始まった
だが それは同時に成長するチャンスでもある
その男は成長し村では天才とさえ言われた
なぜなら 15まで剣を握ったこともない男が
魔法を覚え 剣術を覚えた
そして 同じく天才と謳われる幼馴染と一緒になって
都に送られた
盛大な見送りをされ
自信に満ち溢れた少年は早速冒険者ギルドで
能力検査を受ける
「なぁ どうだと思う?」
「大丈夫 心配しなくても大丈夫だよ
あなたは練習すればするほど
強くなるんだから!」
「そうだよな!!」
『次の方どうぞ〜』
いよいよ 男の番だ
残酷な結果か天国か
結果としては普通の人にすれば
満足できるし羨ましい結果だろう
だが 男にとっては絶望であった
幼馴染は剣術などの物理はダメだったが
魔法ではピカイチだった
能力判定 S
である
その能力は極めれば国家を滅せる能力さえ持てる
だが 男にはそのような能力はなかった
剣術も魔法もすべて
能力判定 B
だった
いわゆる器用貧乏というやつだ
それからは苦難だった
途中までは良かった
突出した能力など必要なかったからだ
それまでにも能力判定など関係ないと
努力はし続けた
だが ダメだった
いくらやっても目の前にいる
幼馴染さえ追い抜けない
いつまでたっても器用貧乏のままだった
属性はいっぱい覚えられた
しかし いつもそれより多い属性を幼馴染に目の前に覚えられる
ついには 男の唯一のパーティー内での取り柄である剣術の
能力判定 S の男が入ってきた
幼馴染や他の人間の関心は全てその男に向けられた
パーティー内での男の発言力はどんどん落ちていった
さらには 新参者の男は優しかった
その優しさは男にはナイフとなって
降り注いできた
この時 男は情報をおろそかにしていたため
気づくことはなかったが
生まれ育った村はすでにあのゴブリンの群れに
襲われ滅んだ
ついには男の存在すらも忘れられ
男はパーティーを飛び出した
そのやるせない感情を少しでも
落ち着けようとした
村に帰る支度をし母親に慰めてもらおうとした
帰った時
そこには人っ子一人
いや 村があったかさえわからなくなるほど
何もなかった
慣れ親しんだパン屋も農場も牧場も
どこにもなかった
男はやるせなかった
同時に怒りが湧いてきた
しかし ぶつける場所がなかった
幼馴染もあの男も村も全く悪くない
強いて言うなら自分自身の才能のなさのせいだ
男は自分を呪った
あの日の自分を
周りにもてはやされ
自信満々だった自分を
そして 長い間考えているうちに
男の怒りはゴブリンへ
モンスターへと移った
男は倒した 倒せるだけ倒した
モンスターを倒しているうちは全能感が味わえる
そのうち男は怒り以外の感情を失った
夢で見たものがほとんどのストーリーになってて楽しかったので
思い出しながら書いてみました
読者の皆様は努力と能力どっちが強いと思いますか?