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第2話 恋愛撲滅委員会(1)


「ひとーつ!私たちは恋愛撲滅委員会の一員として、この世のすべての悪の根源である恋愛を、ありとあらゆる手段をもって撲滅することを誓いまーす!」


 生徒会室の一室。

 前に立つ生徒会長さゆりの言葉に続いて、そこにいた4人がいっせいに唱和する。


 はっきり言って異様な光景。


「ひとーつ!私たちは恋愛を推進しかねない一切の環境と感情を放棄し、放棄させ、恋愛は悪だという概念を、世の中のすべてにいきわたらせるよう努力を続けます!」


「ひとーつ!私たちは恋愛を悪だと認定し、これを見つけ次第、速やかに葬り去るよう全力を尽くします!」


「ひとーつ!私たちが恋愛をするなんてもってのほか。少しでも不埒なことを考えたなら、校内引き回しの上、はりつけ獄門ごくもんの罪にて処罰され、いかなる刑も甘んじて受け入れます!」


 はりつけ獄門ごくもん

 いつの時代の刑罰だよ?

 そもそも恋愛って悪だったのか?


「ほら、遅れてきたそこの雪翔!声が出てない。1人で唱和させるわよ」


「ちょっと待った!俺は何も聞いていないんだが?そもそもこれは何だよ?」


「はあ、そこから始めるの?いい、恋愛は悪なのよ。私が調べた結果、この世で起こる事件の半分以上は恋愛が原因であることがわかったの」


 自慢げに自説を披露するさゆり。


「いや、だからって」


「しかもそれだけじゃないの。学校における生徒の学力低下も、ストレスによる体調不良も、生徒会の予算不足さえも、すべて恋愛が原因なんだわ」


 さすがにさゆりとの付き合いだけは長い俺。


 生徒たちが恋愛にうつつを抜かす→学力低下。

 恋愛で楽しそうなクラスメートを目前にする→ストレスによる体調不良。

 こう言いたいらしい。


 ここまでは分かるとして(分かってしまう自分もいやだけど)、生徒会の予算不足って?


「生徒のみんなが恋愛のうつつを抜かす→生徒会の活動に無関心になる→生徒会の予算が減る。だからに決まってるでしょう」


 向こうも、ダテに俺との付き合いが長いわけじゃない。

 俺が何を考え込んだかすぐに分かったらしい。


 いやいや、感心している場合じゃない!


「そういうわけで、私たちは恋愛撲滅委員会を立ち上げることを決定しました。この世のあらゆる悪の根源である恋愛。これをなくしてしまえば、平和で楽しい学園生活が続くこと間違いなしよね。いいえ、それだけじゃない。この活動が全世界に広まれば、世界中の悪を根源から絶つことも可能だわ」


「そういうわけで…ってどんなわけだよ。話が飛躍しすぎだ!だからって、恋愛が悪で撲滅しようって考えは間違っていると思うんだが」


「そんなことないわ。これは真実。これは世の中を進化させるための、新しい、画期的な考え方なのよ」


 どこをどうやったら、そんな考えに行き着くんだ?


 俺の呆れ顔が届いたらしい。


「馬鹿にしてるんでしょう。でも、今に分かるわよ。あのピカソだって自分の絵を理解してもらうのに100年くらいはかかったらしいからね。アインシュタインしかり。新しい考え方は、それがどんなに正しくても、なかなか理解してもらえない宿命にあるのよね」


「ピカソとアインシュタインに謝れ!そんな天才たちの考えと、この意味不明な恋愛撲滅委員会を一緒にするな!」


「ごちゃごちゃうるさい!」


 イテッ!

 ホワイトボードマーカーがまっすぐ飛んできて命中。

 向こうは実力行使に出たようだ。


 にらみ合う俺とさゆり。

 このまま俺が無理やりねじ伏せられるいつもの展開か?

 

 でも、さゆりは意外な提案をしてきたのだった。


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