表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

1-4 異世界の森を調査しよう

ゴブリンになってしまってから早3日目の朝がきた

昨日チートの事実にはしゃいで寝床を破壊してしまった俺は野宿するハメになった。

2日目の時点から気になってはいたが、無事朝を迎えた事で確信を得た事がある。

この森に俺以外の生物の痕跡がない事だ。

普通森では夜になれば虫の音がするはずだ。早朝でも同じ事が言えるだろうと思う。


昔、父と一緒に父の会社の保養地である軽井沢の別荘地に行った事がある。

早朝と夜には回りの草むらからうるさい位に虫の音が聞こえてきてたし、その虫目当てに多くの鳥が森には住処を持っていた。それがこの森では聞こえないし見かけない。

下草もかなり多い茂っている。ウサギや鹿のような草食動物が居ない事も気になる。近くに肉食動物の縄張りでもあれば話は違うと思うが、それなら俺は既に襲われているだろう。特に対策もせずに野宿したにも拘らず外敵に襲われる事も、近づいてくる生き物を感知もしなかった。これだけ植生の強い森にあって動物や虫等の姿がないのはやはり異常に感じる。なにかやばい影響、または高位生命体が居るのだろうか?

森に転移した物語の主人公は大抵歩いて直ぐの所で森の動物に襲われるか、神殿、あるいは祠などの超上生命などに遭遇する。さもなくば森に迷い込んだ人間か亜陣を保護、救助する事で集落への移動イベントが起きる。

現実は物語と違う。そんな都合いい事が起きるわけないだろ?

それならそれでだ、やはり森の中で生き物に会わないのはおかしい事になる。

共存の可能性が出てきたとはいえやはり、人間などの知的生命体に遭遇するのは危険が伴うだろうし、正直今の状態は俺に都合が良いとは思うけども気にかかる話でもある。今日からは午前中に鍛錬などをして、午後には森の探索に当てるとしよう。


さて、午前中の鍛錬を終えた俺は森の探索の準備に取り掛かっていた。必要となる物はそうないだろう。最悪この身一つでも十分事足りるのだし荷物になるような物というのはない。

しいて言うならテント変わりになるような長く丈夫な枝が数本と、食事兼匂い付けの為のこのヨモギもどきが数本だろうな。

テント代わりの枝は3本あれば良いだろう。自分を囲むように三角錐の形に骨組みとなれば十分だろうし、後はその辺の木から葉枝を失敬して立てかけていけば即席テントになる。

狭いながらここ2日の行動範囲内で何処にでも生えているヨモギもどきだが、探索を続ける先でも同じように生えているかは判らない。それならある程度乾燥させた物を持っていくべきだろう。

カバン等がある訳ではないので量も考えないとなぁ。そんな事を考えながら集めていく。

こうして3日目が過ぎていった。


4日目の朝、今日から森の探索を開始予定だ。

昨日試しに作った枝テントはまずまずのものだ。中で体を丸めてしまえば寝るだけのスペースではあるが十分収まる。日課とした午前中の鍛錬を終えて早速出発だ。

水の確保等考えれば川沿いに歩いて行くのが良いだろう、下流域では人と遭遇する可能性が上がるし、まずは上流に向かっていこう。


と思っていたんだがなぁ…、上流域といっても直ぐに行き詰ってしまった。いや、生き物の探索という面では大成功だったのかもしれないが…


歩き始めて体感で2時間位だったか、ぽっかりと開いた木々の中に小さな湧き水溜まりを見つけてしまった。川の水源はこれだったようだ。

森の中の探索は通常の舗装路と違って進みは悪いはず、2時間で歩ける範囲なんて差ほど距離は離れていないだろう。ぱっと見た感じ水溜りはちょっとした小池と呼んでも差し障りはない程度の大きさ、見た感じ大きな所でも直径10m位かな?

透き通った水の中心は砂地で水が噴出すのに合わせて砂が舞っている。水辺に近い所では青々とした水草が見える。これだけ整った環境にも拘らず魚が居ないのが気になる。


しかし水辺では虫の音が聞こえてくる。鈴虫のような綺麗な澄んだ音が静かな森に沁みて行く。そんな虫目当てなのかかすかに鳥の鳴き声も聞こえてくる。

これだけ近くに居て気づかなかったが、この水辺には多くの生き物が居るようだ。気が動転してたり、チートに興奮してた所為もあるだろうが、今まで気づかなかったのが引っかかるんだよなぁ…

まるで俺が探しに動き始めたのに合わせて森が用意した。そんな事も思ってしまうが、まぁ、ここをしばらくの活動拠点にしてみよう。



小池の水辺をベースキャンプとして活動開始してから4日目、

ゴブリンになってから1週間が経過した。


鍛錬に問題はなかった。順調に自分の体の使い方を把握していく、そんな気すらする。

問題視しているのは森の生態に関してだ。

結論から言えば、水辺についてから一気に森の中の生物が増えた。


初日は虫と少数の鳥のみだった。鳥の食べる木の実は問題ないと思ったが、中々旨かった。

2日目には鳥の数が増えている気がした。朝だけでなく日中にも鳥を見かける機会が増えたんだ。

最初はすずめ程度の小鳥だけだったが、カラスほどの大きさのド派手な色の鳥も見かけるようになった。緑を基調に赤や黄色等原色をちりばめたような羽色を見て思わず孔雀かと突っ込んでしまった。

3日目にはリスの様なふっくらした尻尾のウサギらしき動物を見かけた。サイズは子猫ほどの大きさだった。この辺で俺は『あぁ、本当に異世界に着ちゃったんだなぁ』と納得してしまった。

そして4日目の今日だが、ついに大型の草食動物まで確認できるようになった。


いつもの様に午前中の鍛錬を済ませ、鳥が食べたのを確認できた赤い桃のような形状の果物に、乾燥させたヨモギもどきの粉末をかけ食べる。ここ最近のお気に入りメニューだ。

この粉末だが完全に乾燥してしまった草からミント系の香りがしたのでもしやと思いつくってみたものだ。意外とこれが甘すぎる果物にマッチして、後味の甘ったるいくどさを消してくれる優れものだった。

果物一個で満たされる感じも違和感は多少ある。これについても可能なら実証をやってみたいな。何処まで食わずに済むのか?逆に何処まで食えるのか?まぁ、今は食料といってもそんなに種類もなく安定して手に入ってはいるが、いつこの供給が止まるとも知れないんだし、環境が整ったらと言う前提で覚えておこう。

そんな今後の事をふわっと考えつつ歩いてると近くの茂みが動いた。最初いつものウサリスかと思ったが、俺の目線と同じくらいの茂みの上からは2本の角が生えている。

(おぉ!ついに大型草食動物に遭遇かぁ。しかもシカっぽい上手く捕まえればジビエだな!…って解体方法なんて知らんし…)

久方ぶりに肉が食える!と思ったが、異世界ハーレムチートイケメン朴念仁主人公達の様に、生産系の知識を都合よく持ち合わせてるわけじゃない俺には無理な話だと直ぐ気づいた。何でお話の主人公達ってみんなガラスだ耐熱煉瓦だ作り方知ってるのかねぇ?

と益体のない事を思ってるうちに角の主が草むらからひょっこり顔を出してきた。うん、確かに角はシカの様な形状だったけど、先のウサリスの時を思えば思いつくべきだったね。

そこにいたのは角の生えたイノシシだった。

次回初の異世界戦闘です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ