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第18話 どちらか

ドラゴンソードをすべてカミシモの店の中に運び終えたのは深夜だった。


「つ・・・つかれ・・・た・・・」

ゴンは死にそうになりながら床に倒れ込んだ。


今日は早起きして、歩いて、山を登って、それだけでもクタクタだったのである。


それに加えてこの重労働。

流石にリンダとサミュも大あくびをしていた。


「カミシモの店に来る前に食事しておいてよかったわね。ああ・・・宿も取れなかったし、今晩はここで寝かせてもらうわよ。

こんなに手伝ったんだし、良いわよねカミシモ。」

そう言ってリンダが店主の方を見ると、カミシモがパンと毛布を3人に向かって投げて寄越すところだった。


『酒もあるぞ!』

カミシモのドラゴンが言う。

サミュは瓶ごともらってラッパ飲みした。

リンダは「お肌が荒れる」と言いつつ1人で奥の部屋を占領した。


ゴンは最後の力を振り絞りパンと毛布を握りしめ、パンを半分こし、1つをぶーちゃ用に取っておく。

残りを自分の口に突っ込むとそのまま眠ってしまった。

というか、ほとんど気絶した。


ゴンの腰には(カミシモからもらった)ぶーちゃんの短剣・・・


すう、すうと店の床で寝息を立てるゴンを、カミシモは複雑な顔で見ている。


「詳しく話を聞きたいんだろ?」

ワイン一本では酔いもしないサミュがカミシモに言った。


「そのためにワイン出してくれたんだもんな・・・」

サミュはカミシモの答えを待つことなく、ゴンとの馴れ初めやこの旅の事情を話した。

ぶーちゃんに会った時のことも。


カミシモはずっと黙り込んだまま聞いていた。

「で、どう思う?」

サミュが問いかける。


カミシモの肩に乗っている小さなドラゴンは言った。


『この子がここにいるのは、どちらかの理由だ。


世界を救うためか


世界を亡ぼすためか』


「やっぱりね」

意外なことに、サミュはそんな事を聞いてもさほど驚きはしなかった。




翌朝


ゴンが目を覚ますと、ぶーちゃんがパンをモグモグしながらゴンの顔を覗き込んでいるところだった。

パンくずがポロポロとゴンの顔にかかってくる。


「わ、わ、ぶーちゃん・・・はいはい、おはよう」

ゴンは小さな緑色のドラゴンをチョイっと抱っこする。


「そういえば、昨日は疲れて考える暇がなかったけど、ぶーちゃんってドラゴンだったんだよね・・・。子カバだと思っちゃってた・・・」


ぶーちゃんの背中をよく見ると、なんとちいさな羽が生えていた!

「あーーー!」


「何よもううるさいわねぇ!」

リンダが朝食を用意しているところだった。


「リンダさん!ぶーちゃんの背中に羽が生えているんですよ!」

「当たり前じゃない!ペーパーナイフ並みの短剣とはいえ、剣に納まるってことはドラゴンなんだもの。」


この世界ではたいして不思議な事ではないらしい。


ゴンはぶーちゃんの短剣を手に取ってしげしげ眺めてみた。


20センチ程度の、ぽってりとした銀色の剣で、何となく温かみがあった。

ゴンが憧れたカッコイイ大剣のドラゴンソードではないけれど、自分に合っていると思う。


「あっさりとここに来た目的を果たしちゃったわね。あ、カミシモに言ったっけ?

私たち、この村にゴンのドラゴンソードを探しに来たの。

今からロロジェム探しの旅に出るためよ。」


(忘れてた・・・!)とゴンは思う。この旅の目的は大量のロロジェム探し、つまり始まったばかりなのだ。


カミシモは黙ってテーブルに小さな皮の巾着を置いた。

リンダに開けろ、という身振りをする。


リンダが巾着を開けて中身をテーブルに出すと、それは大小さまざま、色とりどりの10数個のロロジェムだった。


「え?これは?」

リンダの瞳がロロジェムのように輝いた。


カミシモの小さなドラゴン・・・名前はベリー・・・が答える。


『満月祭のおかげで各地からドラゴンソードのジュードたちが集まってきた。

彼らは旅の荷物を軽くするために、お金よりも価値があるロロジェムを持ち歩く。

ドラゴンソードを扱うウチの店にはロロジェムがたくさん集まる』と。


「すごい!助かる!これだけあれば・・・種類を見てみないと分からないけど、リストの半分はあるかも!・・・って、カミシモ、これくれるの?」


カミシモはただコクリとモヒカン頭でうなずいた。


「これとこれ・・・あ、でも、アナイスの火山にある深紅のロロジェムはないのね・・・。よし、先ずはそれを目指して火山に入りましょう!」




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