第14話:初共闘クエスト
「なぁそこの君、俺たちのクエストを手伝ってくれないか?」
ようやく今日で青銅帯に上がれそうでワクワクしている僕にそう声をかけてきたのは、三十代後半の茶色い髭を生やした体格の良い男性冒険者だった。
「え? 僕ですか?」
「あぁそうだ。近くのゴブリンの住処を襲撃するクエストがあるんだが、それに君も参加して欲しいんだ」
「は、はぁ」
乗り気ではなかった。ゴブリンの住処を襲撃するということは少なからず危険を伴うということだ。もし失敗してソルディに先を越されたら溜まったものでは無い。
だったら自分でクエストを選んだ方が確実にランクをあげることが出来ると思ったからだ。
「いや、いいですよ。僕まだ銅帯の黒ですし、弱いですよ」
「銅帯の黒ならクエストに参加出来るんだが……。頼む、人手が足りないんだ」
その後何回か断ったが、結局折れて参加することになった。
「はぁ……結局参加しちゃったよ……」
僕はテンションが下がったままそのクエストを一緒に受ける冒険者たちの集団へと足を運んだ。
「ベラです。よろしくお願いします」
「お、新しいメンバーか、よろしくね」
パッと見たところ参加する人は全員で十人程度だった。
なんとその中には宿屋で少し会話したテリルさんも参加していた。
「テリルさんも参加していたんですね」
「ベラ君じゃないか。そうだよ、俺も今回のクエストに参加しようと思ってね」
「知らない人ばかりなので不安でしたけど、テリルさんがいたら安心です」
「そいつは良かった」
その後もテリルさんと他愛のない会話を続けていると、僕のことを誘った人が、もう一人メンバーを誘ってきたみたいだった。
「えっ?」
そいつを見て僕は思わず声が漏れてしまった。
「ゾルディだ。よろしく」
「え!? いやちょっと待って! なんでソルディも参加したの!?」
「げっ。お前もいるのかよ」
「うわー。最悪だよ。なんでソルディもいるんだよ」
「それはこっちのセリフだ馬鹿」
「一緒のクエスト受けちゃったら勝負の意味ないじゃん!」
「うわ、そう言えばそうじゃねぇかよ。どうすんだよこれ」
「抜ける……のはさすがに無理か……」
「ちっ、やるしかねぇのかよクソ」
一緒のクエストを受けると勝負は引き分けになってしまうことは分かっていたが、お互いに今さら脱退はできないので、結局クエストには僕とソルディを含め十一人で行くことになった。
そしてこのクエストがきっかけで、まさかあんな出来事を引き起こすなんて思いもしなかった。