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_妹_

_異世界に転生なんて信じられるか!?_

 目の前に居る、この美しい少女は、俺の妹らしい。この、らしいというのは、先ほどまで、幼馴染とコンビニに行こうとしていたのにいきなり知らない所に居たのだから。

 あれは事故だろ。事故じゃなければなんになるというのだ。

 それよりも、ダサすぎる。あまりにも死に方がダサすぎる。

 すまない、幼馴染よ…昼めし食えなくなるよな、今頃、腹減ってるんだろうな。

 でも、そのおかげで、俺は今、異世界に転生し、記憶はないが7歳まで生きてるぞ。それに美少年だ。素晴らしいね、転生特典というものは…ムフフ。

「お、お兄ちゃん?さっきからどうしたの?なんだか今日は、おかしいみたいだよ?」

 …おかしいというか…こっちの世界での記憶が無いというか…。もうやけくそで行くしかねぇか…!!?

「えッと…その……」

 無理だろ!!?あんな可愛い顔した女の子の、しかも、今までずっと居たであろう兄に存在を忘れられるなんて…そんな辛い事…。

 だんだん申し訳無くなって来たのだが…腹を括るしかないか…すまん!!!

「あのさ…」

「ん…?どうしたの?お兄ちゃん?」

「…先に謝っとくけど…。俺…今までの記憶が、無くなっちまったみたいでさ…。だから、君が妹だってことも、俺が誰かってことも、何もわからないんだ…ごめん…。」

「「……。」」

 しばらくの沈黙の後、ふと、少女の顔を覗くと、静かにそのかわいらしい顔を歪ませて、大きな瞳から大粒の涙を流していた。それほど、今まで一緒に居て、大切な存在であったことが窺える。しかし、それを見てもなお、美しいと感じている俺は、おかしいだろうか…。

 そして、俺は、大粒の涙を流す少女にこう言った。

「俺には記憶はない、だけど、俺は、君の、兄になりたい君が俺という存在をを受け入れてくれるなら、一からになってしまうけど、君の事をもっと教えてほしいんだ…!…ハハハ…何言ってるかわかんないよな、ごめん…。」

 そうは言ったが、羞恥と罪悪感で、もう涙が零れてしまいそうだ…。

 少女は、それを聞いて、いきなりのことに驚いていたが、先ほどまで流していた涙は、止まっていた。そして、彼の俯いたままの泣きそうな顔の、両頬を持ち上げ、こう言った。

「フフフ…少し驚いただけだよ、だから大丈夫。

だから…だからね、私のお兄ちゃんで居てほしいな…記憶が無いなら、また一から作ればいいんだよ…フフ…。」

 少女がそう言うと、今まで我慢していた涙が、俺の頬を伝って、落ちていく____。

 そして少女は、この世界のことや、俺のことを、事細やかに、説明してくれた。

・・・

「えッとつまり、この世界は、元の俺の居た世界で言う、異世界という奴で、魔法とかドラゴンとかなんか色んなモノがあって、俺が何らかの影響で前の世界に体を残して、こちらの世界に魂だけが飛ばされた…と。ンで何故か、君の…マロンカルトちゃんのお兄さんの身体に入った…という事だね。」

 少女の名前は、マロンカルト・シンディローナと言うらしい。長いね…マロンと呼ばせてもらおう。そして俺の名前は、アインセント・シンディローナ略してアント。流石異世界。…てことは俺も魔法が使えるのでは…?

「てことはさ、俺も魔法とか使えたりするの?」

「いいえ、お兄ちゃんは、普通の”ヒューマー”ですから、無理だと思いますよ?」

 …まじか…ちなみに、大体わかるだろうが、”ヒューマー”とは、人間のことだ。魔法が使えないのは、少しショックだが、かわいい妹がいるから、良しとしよう。

「…ところで、他の家族は?」

 いけないことを聞いただろうか…マロンが俯いて黙ってしまった…。

「……あのね…お父様はね、私たちを捨ててしまったの…実は、お父様は、この世界の中でも最高クラスの、”魔王族”なの…。だけど、他のお兄様達は、お父様の力を受け継いで強かったのだけど、何の魔力もない私達を……それにお母様は、お父様に歯向かったからって、私達の目の前で、殺されてしまったの…」

 そう言う、マロンの顔は、とても悲しそうな顔をしていて、本当に頼れる人が、兄の俺しかいなかったことが分かる、本当に、悪いことをしてしまった。

 俺は、気づけば、マロンを抱きしめていた、抱きしめた瞬間は、とても驚いた顔をした、マロンだったが、少しすると、声をあげて泣いた。声が漏れるごとに、俺の瞳からも、涙が出始めた。しばらくして、嗚咽が聞こえなくなったと思えば、俺の腕の中で、寝息を立てて、眠っていた。こんなに小さくてかわいい子を、捨てるなんて、頭おかしんじゃないか、なんて怒りを覚えたが、妹のかわいい寝顔によって、癒された。

 俺よりも年下で、こんなにもしっかりしている、1日も一緒に居ないけど、自慢の妹だな____。


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