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第6話〜ささやかな日常と悪魔な人

今週は色々あってほぼ今日執筆する形になりました。ですが、今日はいつもより少しだけ話が長くなりました。

どうか、楽しんで見て頂ければ嬉しいです。

それでは、どうぞ。


朝日が昇り、人々が活動を始める頃、俺もなぜか自然と起きた。元の世界では、目覚ましに頼るか美香に起こされるかどちらかだったので、すこし不思議に感じている。


俺は起き上がろうと右を向いた。



そこには、美香の顔があった。まだ寝ているのか、スヤスヤと寝息をたてるその様子はとても可愛いかった。


(なんだ、天使か)


俺はしばらく美香を寝させて起こうと思い、その寝顔を終始堪能した。


─────

「んーっ、むにゃむにゃ。」


美香が起きてきた。寝ぼけたその顔も最高だった。


「美香、おはよう。よく眠れたか?」


「うんあ、あ、お兄ちゃん?・・うん、眠れたよ。お兄ちゃんの抱き枕があったからね。」


昨日の夜、俺達が就寝したあと美香が近くに寄ってきて、「抱き枕にさせて」と言ってきたのだ。普段なら、あまり気持ちが乗らないのだが、今日まで色々あって心細いのだろうと思い、了承した。どうやら、効果あったようだ。


「そりゃ、良かった。心細かったら、いつでも言ってくれ。俺はお前のお兄ちゃんだからな。」


「お兄ちゃん・・・」


二人で作る薔薇色の空間。そこに入れない人物が1人いた。


「あの〜、美香?私もいるよ〜・・・」


二人が事をやっている最中に起きたニーナは、1人だけおいてけぼりを食らって、若干半泣きだった。


「ごめんな。ニーナもおはよう。よく眠れたか?」


「うん、ばっちり!」


「そうか、良かった。」


俺が話しかけると今までの落ち込みが嘘のように明るくなった。やっぱり俺にあれなのか?


「じゃあ、改めて今日の予定を確認したいんだけど・・・」


今日の予定

換金所に行く→お店に装備を買いに行く→魔物狩り→お昼→魔物狩り→帰る


「・・・これでいいか?」


「うん、問題ないよ。」

「私も大丈夫。」


二人とも了承してくれた。だが、この時俺はきずいていなかった。女子の本当の恐ろしさを・・・


─────

全員が起き、宿屋の人にこの町のマップを貰った俺らはまず換金所に向かい、戦利品を換金した。そこで、魔物から得たものが全部で50銀貨になったので予定通り装備品屋に行くことにした。


装備品屋は、元の世界のコンビニが4つ合わさった位の大きさだった。棚には数々の防具や武器が置いてあるが、女子勢は・・・アクセサリー棚に注目していた。


「きゃー、これ可愛いーー!!」

「これなんかどう?」


甘く見ていた。最近色々ありすぎて忘れていた。女子は買い物が長くなることに。特に美香は、付き合わされたら五時間以上はかかる。早く止めなくては、目的が・・・


「なあ、美香、ニーナ。装備品を買いに来たんだぞ。とっとと買って、狩りにいくぞ。」


「それいいねー。」

「でしょー!」


(全く聞いてない。)


こういう時だけ美香は俺の言葉を聞こえない振りをする。全く誰に似たんだか。親の顔が見てみたいわ。あっ、うちの母さんだった。


だが、そんな母でもとある一言によってうちの父に言いくるめられていた。その一言とは・・・


「美香、お前なんてもう嫌いだ。話しかけないでくれ。」


・・・・・


「お兄ちゃん!!ごめんなさい。」


これぞ、我が三条家に伝わる伝説の秘奥義、愛する者を一瞬にして黙らせる百戦錬磨のスキル。名付けて『愛の処世術』。お互いに、心のそこから愛し合っている者同士であるからこそ通じる技だ。


「ニーナもいいな。さっさと決めるぞ。」


そうして、俺達はそれぞれ買える範囲で装備品を買った。


晴明

ショートソード(2銀貨)

・40センチメートルほどの短い剣


美香

アサシンナイフ(3銀貨)

・切れ味に優れた暗殺用ナイフ

黒装束(20銀貨)

・全身を覆えるタイプ

・光属性耐性


ニーナ

ハンターボウ(7銀貨)

・スコープ付き超遠距離射撃可能


俺は、双剣術を生かそうと剣を一本買った。もう一本の方の剣は、50センチメートルほどなのでそちらより若干短い。でも、この方が双剣として使うのには適切な長さだ。あまり長いとただ剣に振り回されて、自爆する。


美香は切れ味が鋭いのが欲しいと言うのでアサシンナイフにした。それと合わせた黒装束なんかもう、暗殺者という感じになった。でも、普段から黒一色というのはあまりにも女の子らしくないため本番の時だけ使うらしい。通常時は、村娘風の服だ。そして、極めつけはこの黒装束の値段だが・・・高い!20銀貨だぞ!だが、高いのにも理由があった。店主曰く属性耐性付きは高くなるらしい。なので俺は高すぎて一瞬諦・・・買った。俺は美香にはあまちゃんなのだ。


ニーナは遠距離からも援護できるようにと、スコープ付きの弓を買った。魔法が納められている武器も高いらしく、これはニーナにおねだりされた。こちらを下から見る上目遣いに俺の心が少し動いた瞬間だった。結局買いました。


結果的に俺が一番安いのを買ったことになる。合計で32銀貨使ったので残りが18銀貨だ。このままだとそのうちもっと高いのを買わされそうなので、自分用のお金をこっそり隠し持つ所存だ。じゃないと、共通資金がなくなり俺が何も買えなくなりそうで怖い。


「じゃあ、魔物狩りいくぞ。バンバン倒して、ステータス上げ&資金稼ぎだ。」


「「はーい。」」


それから、町の外に出て魔物狩りが始まった。


俺は火魔法を剣にそれぞれ纏わせ、双剣術でしどろもどろながらも美香とニーナと連携し魔物を倒していった。


相手の攻撃を左に避けたらすかさず左で攻撃、逆に右で攻撃となしていく。一度斬りつけると、傷口が炎で焼かれるので、魔物は激痛を伴っていた。それでも、生きようと必死に抗ってくるので気は抜けない。


美香はスキル〈気配遮断〉〈気配察知〉という物を持っている。これは文字通りの意味で、気配を並の素人には分からないほど遮断することができる。そして、先ほど買ったアサシンナイフだ。これとの連携によって、相手の急所になんなく一発を入れている。それをサポートするように気配察知が魔物の居場所を教え、次々にキル数を稼いでいた。


スライム状のモンスターには、直接攻撃はあまり効果がないので魔法が役に立つのだが、ニーナはまだ付与魔法しか使えないので、それ以外の魔物の殲滅にいそしんでいる。遠く離れた安全圏からハンターボウでスコープを覗き、魔物の脳天を比較的狙って撃っている。その命中率は、百発百中と言ってもいいほどの腕前だ。


俺は魔法での攻撃以外にも、〈劣化〉をバンバン使い、成長を促した。途中で切り傷を貰うことが多々あったため、ちょうど良かった。まあ、ほとんど自分で転んだんだけど・・・


俺達は魔力切れにも気を付け、順調に午前の魔物狩りを終えた。


「そろそろお昼の時間だから一旦町に戻ろう?」


「お腹すいたー、何食べようかな?何食べようかな?」


太陽が頭の天辺に昇るとき、つまりお昼の時間が来た。二人は、疲れたようでお腹が空いているらしい。だがどうやら、二人とも何か勘違いしているようだ。


『俺がいつ町に戻って飯を食うと言った?』


「美香、ニーナ、町には戻らないよ。」


「え?どういうこと?」

「えーなんでー?」


「それはね、ちょうどあれがあるし、節約だよ。」


「あれって・・・もしかしてあれ?まっ、待ってよハルアキ君。まだ、心の準備が・・・」


「あれって何?ニーナ。ねえ。」


逃がしませんよ。


俺はインベントリから魔物の肉を取り出す。これは、換金して貰ったときに肉だけ返還してもらっていたものだ。もちろん、美香達にばれないように。


初めは、この見た目が良さそうな狼の肉から食べることにした。緑色の魔物の肉は、二人とも抵抗がありそうだしねw


「まっ、待ってよ、お兄ちゃん。本当にそれ食べるの?」


「ああ、もちろんだが。まあ、食べたくなきゃ食べなくてもいいぞ。その分どんどんお腹は減ってくけどな。」


俺は解体職人に切り分けて貰った魔物の肉を火魔法の火で炙る。イメージさえできれば、攻撃以外の用途にも使えるので本当に便利だ。ちなみに自分で出す火は熱くない。


「ハルアキ君、私は食べるよ。これも冒険の醍醐味だもんね。」


「おっ、ニーナは分かってるな。じゃあ、これを魔法の練習がてら焼いてくれ。焼けなくても、俺が焼いたやつをあげるから。」


「うんっ!」


「むむむむっ!!」


美香はいまだに意地を張っている。


ぐぅ〜〜〜


「はっ?!」


美香のお腹がなった。そこで、とうとう諦めたのか観念して意地を張るのをやめた。


「分かったよ。お兄ちゃん、食べればいいんでしょ?」


若干涙目の美香はなんかすげえ可愛いかった。まるで、これから悪いことをされちゃう女の子みたいで。まあ、その悪いことをするやつってのは俺なんだけどね。


美香は火を出すことは出来るので、自分で肉を焼いた。結局、ニーナは火を十分に出すことが出来なかったため、俺が焼いたのをあげることにした。


「「「それじゃ、いっただっきまーす。」」」


─────

感想言うと肉自体は悪くないと思った。いつか一度だけ食べたA3ランク肉に勝るとも劣らないぐらいだ。だが、味がないためあんまり美味しくなかった。ただ、火を通して焼いただけだしな。


「お兄ちゃん、今度は味付けしよう。それと、もしまた次こういう時がきたら、料理を作って普通に食べよう。」


美香は、勉強もスポーツも出来る上、たまに母と一緒にご飯も作ってくれる。その姿はまるで夫のために尽くす、新妻だ。しかも、フリフリのエプロンをつけている。これのどこに文句がつけられようものか。まさに、天使。いや女神だ。そして、俺は俺、父は父で別々の女神に心奪われていた。


「そうだな、じゃあ、明日にでも市場を覗きにいくか。」


明日の予定も随時追加され、お昼ご飯?を食べ終わった俺達は少しの間木陰で休憩し、午後に挑むことになった。


午後は午前と変わらず順調に狩りが進み、やがて太陽が沈むころ俺達は今日の反省点をふまえながら、戦利品の確認をしていた。


「えっと、狼系統が58体、緑人型が49体、鳥系統24体、剣38本、盾28枚、防具系統10個、綺麗な石50個ってところだな。剣はまだ使えそうなもの以外と掘り出し物っぽいもの以外売っちゃおう。どれくらい儲かるか楽しみだな〜。」


「お兄ちゃん、浮かれてないで反省点を考えて。そんなにかさぶた作って、お風呂入ったら染みるよ。」


「ん?なんか今聞き捨てならない言葉を聞いた気が。ん?お風呂?お風呂だとぉぉーー!!!」


美香の発した言葉に、あまりの嬉しさに大声を上げて驚いてしまった。


「なななっな!?どうしたのハルアキ君!お風呂がどうかしたの?」


「ニ、ニーナ!お風呂と言えば日本人のたしなみだぞ!あの疲れた後に入る湯船。もう、あれが最高なんだよなー。で、風呂があるのか?」


「一応、銭湯みたいなのがあるらしいの。だから、今日こそは入りたいと思ってね。」


今日の予定がプラスされた。


「じゃあ、戦利品を町で換金したら、飯食べに行ってそれから、銭湯に行こう。」


「うん、行こう、行こう。」

「ハルアキ君がそんなに喜ぶものだったら、これから毎日入ろうかな。」


俺達はそのままモルダバに戻り、換金所に向かった。戦利品は全部で金貨1枚銀貨38枚ほどだった。なので、こんなもんかと肩を落としているとその鑑定士が驚いていた。なんでも、1日でここまで稼ぐのには、並みならぬ努力が必要らしい。冒険者ランクが最低のやつにはまず無理だそうだ。


俺達って、なんか凄かったのか。というか美香が化け物過ぎるんだろうな。1人で何十体も殺ってたし。


俺はとりあえず、その人にあまり人にばらさないでくれと口添えをし、口止め料として名前だけを教えた。


換金所を後にした俺達は、手頃な飯屋に来た。だが、この飯が不味かった。硬いパンに肉をただ焼いたものに萎れた何かの野菜。ゲロまずい。そして、この時全員が料理を作ろうと決意した。ちなみにこれで3人前9銀貨だ。高いよな?


ゲロまずい飯を食べた後はお待ちかね。


「銭湯きたぁぁーー!!」


「はしゃぎすぎだよ、お兄ちゃん。まあ、嬉いんだけど。周りの目が・・・」


「おっと、あまりの喜びに我を忘れていたよ。さあ、いくぞ。」


「ハルアキ君といると退屈しないな〜」


銭湯の外見は日本とほぼ大差ない。これもなにか関係があるのか?だが、細かいことは気にしない。今だけは忘れよう。


「さあて、入るか・・・?」


そこで、とある事実にきずいた。なんと、入り口が全部で3つあるのだ。右から女湯→混浴→男湯。


(これって・・・はっ!?)


何やら、後方から不穏な気配を感じた。どうやら、こちらを狙うハンターが二人いるようだ。俺はため息を尽く。そして、こう切り出した。


「タオル付きでなおかつ、ハプニング、サービスなしならいいぞ。」


俺はキメ顔でそう言った。


〜〜お風呂割愛〜〜


まあ、感想を言うとだな。


『めちゃくちゃエロかった』


それ以上はいえん。だめだ。


だが、今の状態でも結構なもんだ。お風呂あがりってものは、それだけでそそる。何日も入ってなかっただけあって、入る前とはだいぶ見違えた。髪の毛が眩しくなり、その顔立ちをよりいっそう目立たせている。これは、美香もニーナもどちらでも言えることである。元々、ニーナも顔の形は整っていて、結構美人さんだ。ほんと映える。まぁ、美香には負けるけど・・・


「あー、すっきりしたー。でもまた、しばらくは来れなくなるなー。」


「そうだね。大事な仕事があるし。」


「今日はもうゆっくり寝て、明日またがんばろー。」


「そうだな。」


そして、俺達は昨日泊まった宿屋に向かっ───『おい、ガキ。女連れとはいいご身分じゃないか。』


いきなり、道端を塞ぐように3人の厳つい男が話しかけてきた。その3人は、まるで美香達を品定めするような目付きで見ている。


(こいつら、モヤイと同じ人種だ。)


俺は一瞬で悟り、燃えるような殺意が沸いてきた。あの時とは状況が違う。強くなった。だが決して、慢心はしない。俺は、その殺意を相手に現した。


「おっ、なんだガキ。やるのか?いいぜ、このロンさぁぁぁぁぁぁ!!」


何が起こったか分からなかった。だが、その男が名乗り出る前に崩れ落ちたということだけ分かった。


「てめぇ、よくもやりやがったな。このやろぁぁぁぁぁぁ!!」


二人目の男も崩れ落ちた。その時一瞬だけ黒いもやが見えた気がした。


(あれっ?これってもしかして?)


そして、虚空から突如、それは姿を現した。その少女は真っ黒な瘴気を纏い、目は魚のように死に絶え、目標だけを見つめている。


そして、彼女は目標に向かってこう告げた。


「性欲なんて、忘れさせてあげる。」


その瞬間、ビビりまくっていた3人目の男は他二人と同様崩れ落ちた。


「さあ、行こう。お兄ちゃん。もう、くたくただよー。」


そして、一瞬でその少女は、何事も無かったように普通に戻った。彼女の周りにあった黒い瘴気は嘘のように消えている。


「オウケイ、ワカテンヨ。」


「ははははっ、お兄ちゃんったら、面白い。片言になってるよ。」


そこで、俺とニーナは思った。


((こいつは、怒らしたらとんでもない。まるで────────悪魔のようだ。))と。


「さあ、行こう。ニーナも早く布団に入って寝たいでしょ?」


「うん・・そうだね。そうだよね。そうしよう。」


ニーナは無理矢理自分を納得させた。


逆に俺は、なぜか被害にあったその3人に同情の目を向けるのであった。


そのあと、俺達はその場を足早に去り、宿屋に向かった。


そして、銭湯前では、そんな彼らを唖然と眺めている通行人と股関を破壊された3人組だけが残っているのだった。


読んでいただきありがとうございます。もし、誤字脱字等、感想があれば言ってください。

次の話も、日曜日夜9時にあげたいと思っています。

あと物騒な話ですが、近いうちに主人公が殺される『バットエンド』をあげたいと思っています。そちらは、今までに書いた話の途中で晴明が間違った選択をしたために起こった悲劇です。どうか、笑い話程度に見てください。

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