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第5話〜最初の町と冒険者登録

若干遅くなってすみません。今回も楽しんで見ていただければうれしいです。

それでは、本編どうぞ。

唯一の光源であった太陽の光はとっくに沈み、俺達は今モルダバの入り口前まで来ていた。町は、様々な色の光が点々としていて、元の世界の都市部の夜景を小さく移したようだった。


「はぁはぁ、はぁ。やっと、ついた。どれくらい、かかった?」


「だいたい、5時間だね。予定より遅くなっちゃったけど、頑張ったよお兄ちゃん。」


─────

あれは、5時間前のことだ。俺の魔法の特訓が終わり、モヤイの屋敷に行く前にモルダバによることになった。だが、すでに夕方。野宿するわけにも行かないので、歩きで3時間の道を走って進むことにした。


そして、5分後。俺達は思い出した。度々しつこいが言っておく。


晴明の体力の無さを!


魔法の訓練のせいもあり、ただでさえない無い体力がさらに消費されていた。その場にへたりこむ俺。そして、生暖かい目で上から眺める美香とニーナ。視線がいたい。


「さあ、いきますよ。お兄ちゃん。お腹でもいたいの?」

「お姉さんは見損ないましたよ。」


「わかった、わかった。頑張る。俺頑張るから。」


そこから必死で頑張った。時折、見せられる女性達からの生暖かい目に耐えながら。


それは、もう──しんどかった。


─────

「はぁ、だいだいなんでそんなにニーナ達は元気なんだ?これが、体力の、違いと言うものなのか。」


「無駄口叩いてないで並ぶよ。」


町の入り口前には、町への入場を待つ人間が数名並んでいた。入場審査官らしき男が入場審査をしているようだ。俺達は、その列の最後尾に並ぶ。


しばらくして、俺達の番が回ってきた。審査官の男は、近くで見るとなかなかに厳つい顔をしていた。スキンヘッドでガタイがよく顔に傷が3つもある。なにがあったんだ。


「おう、こんな時間にガキ3人でどうした。あやしいな。」


(まあ、普通そうなるよね)


「俺達冒険者になりに村から上京してきました。家が貧しいんで、口べらしに追い出されたようなものですが。」


俺は即興で考えた嘘を審査官に言った。


「つってもなぁ、怪しいやつは入れるわけにはいかないんだ。最近じゃ、ガキまで暗殺者にさせられてるって話だ。わりいが、〈職業判定〉を使わせてもらうぞ。」


そう言って男は、腰のポーチから何かを取り出した。それは、まるで空港で見るような金属探知機のようなものだった。


俺達がそれを不思議そうに見ていると、男がそれに気づいた。


「ん?お前らこれを知らないのか?まじか。これはな、かざした相手の職業が分かる魔導具だ。結構安価で売ってるから、誰でも手を出せるもんなんだがな。じゃあ、始めるぞ。」


男は、魔導具を俺らの頭の上に順番にかざした。結果はすぐに出たのか、納得したような顔をした。


「怪しい職業どころか、なんの職業にもついていなかったな。おし、いいぞ通って。」


どうやら、問題なかったようだ。俺達は、まさか入れないんじゃないかと内心そわそわしていたので、一気に肩をおろした。


「よかったな。入れて。じゃあ、早速冒険者ギルドに行きますか。」


「行こう、行こう。そして、早く寝よう。」


「・・・・・」


どうやら美香は王国から逃げ出してきて、まだ一睡もしてないので常に睡魔が襲って来てるようだった。眠っている時の美香の顔って可愛いんだよな。まじ天使。


そんななか1人だけもじもじしている子がいた。


「おい、どうしたニーナ?そんなにもじもじして、お腹でも痛いのか?」


「ねえ、あのさ冒険者ギルドってどこにあるの?」


かっ!


その瞬間、俺と美香とニーナは固まった。


(あーやっちまったー。場所知らねー。どうすれば。)

(寝れないの?寝れないの?早く用事を済ませて、お兄ちゃんの抱き枕で幸せな時を過ごそうと思ってたのにーー。)

(知らないよね、そりゃそうだよね。ハルアキ君の寝顔楽しみにしてたのに。)


考えていなかった。眼中になかった。ここまで来るのに必死で、頭になかった。俺達それぞれがいろんな意味で絶望していた。(((終わった)))


「おい、坊主ども冒険者になりたいのか?」


そんななか、いきなり後ろから声をかけられた。振り向いてみると、髪が赤色で身長がゆうに180センチメートルを越えている優しそうな顔の男の人がいた。背中には、自分の身長をも越える大きな盾と剣を背負っている。


俺は初対面なのにも関わらず、その知らない人にどこか感じるものがあった。それは、その優しそうな顔からなのか、彼の本質かは分からない。だが、どこか自然と気を緩めてしまうような人だ。


「はい、そうです。」


思わず、答えてしまった。


「そうか、なら冒険者ギルドまで案内してやるよ。ついてこい。」


俺は、美香達と顔を合わせる。


「(大丈夫かな?)」


「(お兄ちゃんがよければ私は大丈夫だよ。例え、この人が私達を騙してても、お兄ちゃんは私が守るから。)」


「(私も大丈夫。ハルアキ君がいれば怖くない。)」


「(わかった。とりあえず、ついてってみよう。)」


「お願いします。」


「おいおい、そんなガチガチに身構えるなよ。一文無しのガキから取れるもんなんてあるわけ無いだろ。それに、俺の顔知らないのか。」


「顔?」


「まあ、いいか。こっちだ。」


途中疑問もあったが、とりあえず彼についていくことにした。


冒険者ギルドに行くまでの道で彼はこの町について色々と話してくれた。昼は、観光客やお店で盛り上がり、夜は冒険者や労働者が酒屋で飲んだくれる。どこの町でもこんな感じだが、故郷であるこの町が一番気に入ってるんだと。夜景も綺麗だし、女も、ってなに話してんだよ。


美香とニーナがこちらを睨んできた。


「はっははは。坊主はいいな。女が二人もいて。俺なんて逃げられてばっかりだよ。はっははは。」


(それは、あんたが悪いんでしょ。)


心のなかで思った。俺達は、そんな彼といつのまにか打ち解けていた。最初は疑ったけど、話せばほんとにいい人だと感じた。


そんな時間はあっという間にすぎ、彼はとある大きな建物の前で止まった。建物全体が木でできており、入り口の扉が重く感じた。その横には日本語で〈冒険者ギルド〜モルダバ支部〉と書かれている看板があった。日本語?この世界の文字って日本語なの?


どうやら、美香もきずいたようだ。なので、さりげなくフォローを入れておいた。後でニーナに確認してみよう。


今は、こっちの方が大事だ。


「ここが、冒険者ギルドだ。冒険者登録をするなら、手続きが必要だが、やり方分かるか?」


ここは、正直に答えておこう。


「いいえ、俺達何にも知らないんで、もしいいなら色々教えてくれませんか?」


「いいぞ、でもそん代わり酒おごってくれ。」


「でも、俺達お金が・・・」


「あ?ねえのか?たくっ、じゃあ、いつか出世したらたらふくおごってくれ。それでいいな?」


「はい、それなら。」


話が纏まったので、彼に付き添われながら冒険者ギルドの中に入った。床は石畳で天井からはランタンがぶら下がっていた。建物のなかは、多くの冒険者達で溢れかっている。唖然とこちらを見ているもの、唖然とこちらを見ているもの様々だった。あれ?なんでこっち見てるんだ。そんなに俺らがおかしいのか?


俺らは、彼らが唖然としている理由を知らないまま、カウンターに向かった。


「アリッサさん、ちといいか?実は冒険者登録したいっていう坊主どもを連れてきたんだ。困ってて見捨てらんなくてな。」


彼にアリッサと呼ばれた人は、髪を後ろ縛りにしている女性だった。最初は後ろ向きでそれしか分からなかったが、彼の問いかけに振り向くと、その美し・・え?


彼女が振り向くとそこには給食のおばちゃんがいた。想像していた顔とは違い若干がっかりする。すると、後ろの女性二人から鋭い視線をくらった。


「ん?おやあんたかい。最近は、よく頑張ってるって聞いたよ。それで、冒険者登録したいって子はあんたたちかい?」


「「「はい。」」」


「よし、それじゃここに名前をかいておくれ。それで終わりだよ。」


アリッサさんは、俺達に紙を渡してくる。


俺はここで名前の記入について一瞬考えたが美香に口添えをし、俺はハルアキ、美香はミカ、ニーナはニーナで紙に記入した。


その名前にした理由は、この世界では、貴族以上の人間しか名字を持っていないからだ。なので、俺と美香は名字の三条を消し、ハルアキとミカで登録することにした。名字書いたら怪しまれるからな。ちなみにニーナは、俺達が異世界からきたということを知っているので、名字のことは知っている。


俺達は名前を記入した紙をアリッサさんに渡した。


「よし、ハルアキにミカにニーナだね。じゃあこれが冒険者の証だよ。首にかけな。」


そう言って、アリッサさんは銀のプレートの首飾り(ドックタグ)をくれた。俺と美香とニーナは早速それを首にかける。


「やっと、冒険者だね。」


「やっとだな。どんだけ苦労したか。」


「私もついに冒険者に。」


俺達は、ようやく冒険者になれたことでほっとした。ここにくるまでの道のりはある意味長かったからだ。でも、これからがもっと大変なんだよな。


「おう、終わったか。じゃあ、宿屋まで案内してやるからその間に聞きたいこと聞きな。」


「宿屋まで案内してくれるんですか?」


「あ?当たり前だろう。目の下に隈が出来てるぜ。つかれてんだろ。安いとこ紹介してやる。」


彼は、最後の最後まで優しかった。そのあと俺達は冒険者ギルドを後にし、彼の後についていくのだった。


─────

「よし、ついたぞ。ここだ。」


冒険者ギルドから20分ほど話し歩き、彼に紹介された宿屋は──おんぼろだった。入り口には蜘蛛の巣がはり、街灯も消えかかっている。


誰もそれを見て何も言わなかったが、きっとこう思っただろう。


(((こいつ、なんなんだ。)))


内心では、怒りを表していながら表にはそれを出さない。いろいろ、親切にして貰ったからだ。くそ、こいつが優しいやつじゃなきゃ、今頃殴ってるのに。


「あ、ありがとうございます。」


「ん?なに、礼はいらないぜ。困っているやつを助けるのは当たり前だ。」


天然なのか?天然なのか?残念ながら、需要はないぞ。


「じゃあ、俺はこのあと予定があるから。坊主も頑張れよ、今夜。」


彼は、最後に意味深な言葉を残して、その場を去っていった。


そして、後ろでは目を光らせる野獣が2匹、獲物を狙うような目でこちらを見ている。


「は、入ろうか。中に。」


「だね、お兄ちゃん。」


「そうだね。ハルアキ君。」


─────

無事宿屋に泊まれた俺達は、いま3人で同じ部屋にいる。部屋の大きさは縦横×3メートルという、3人で使うには狭すぎる部屋だ。なぜ、こうなったかというとそれは、お金の問題だった。


この宿屋は、貧しい駆け出し冒険者のためにと他より安くなっている。なのだが、銀貨1枚しか持っていない俺達は一部屋しか借りれなかった。


結果。俺が真ん中で右が美香、左がニーナという布団の配置になった。


「(ニーナ、今日は私が甘える日だからね。手出しちゃダメだよ。)」


「(分かってるよ。今日は美香の日。順番だからね。)」


なにやら、隅っこでこそこそと作戦会議中のようだ。俺は、怖いので聞こえない振りをする。


「あー、疲れた。」


俺は布団に横になり、天井のしみを眺める。


そこで、彼に教えてもらったことについて思い出していた。


冒険者ランク

5つ星が最高で一番下が無星となっている。星の数は、ドックタグに表記される。これはこなしたクエストの数、敵の強さによってどんどん下からランクが上がっていく仕組みになっている。最高の5つ星になるには、Sランクの魔物を最低でも10体倒さないといけない。


魔物ランク

上からSS、下がDまである。この基準は、どれだけ人間の生活に影響を及ぼすかの値になっている。SS級の魔物は1000年に1度くらいの割合でしか出現しないのでSランクを倒せれば、神扱い。それこそ、どこの店でもVIP扱いになるほど。


その他もろもろの豆知識等。


(知らないことがまだいっぱいあるんだろうな。)


俺は、ワクワクしている。今までに見たことのないようなものに触れられることに。俺は、いますごく充実している。(皮肉じゃないよ。)


俺の退屈な日常は、本当に終わりを告げたらしいな。


そんなことを考えているうちに、眠くなってきた。このまま寝てもいいと思ったが、一応ステータスを見ておこうと思い、美香とニーナにも言って確認することにした。


三条晴明

職業〈冒険者〉

・力315

・速さ380

・魔力320

・防御350

〈固有スキル〉

劣化

・触れたものを劣化させる(最大2日)

〈スキル〉

スティール(+1)

・相手から最大1つ盗むことができる

・なにが盗れるかはランダム

悪運

・悪いことがたまにおきる

双剣術

火魔法

・ファイアボール

氷魔法

・フリーズ


俺はステータスがようやく常人を越したことににわかに喜びを受けつつ、〈劣化〉が最大2日になっていたことに驚いた。厄災運が悪運に変わったように成長するとすれば、スキルは使うほど強くなるということが分かる。〈劣化〉の成長は、その一例だ。じゃあ、厄災運は?と言われると説明のしようがなくなる。まあ、考えたところで、答えはそうそう出てくるもんじゃない。


そんななか俺の両隣ではステータスが上がり、喜んでいる二人がいた。


俺達はそろそろ本格的に眠くなってきたので、布団に入ることにした。


「お兄ちゃん、明日はどうする?モヤイの村襲撃までそれほど時間もないよ。」


「ひとまず、明日は1日ステータスアップだ。まだ、使ったことのないスキルもあるからな。早急にじっくりやろう。」


「そうだね、他にも素材を売ったり、クエストをやったりしてお金を稼ごう。明日また泊まれなくなっちゃうからね。」


モヤイの村襲撃まで、それほど時間もない。だが、俺達はそれを事前に阻止しなくてはならない。それには、並外れた力が必要だ。もっと、努力しなくては。


「それじゃ、また明日。おやすみお兄ちゃん、ニーナ。」

「おやすみ、美香、ニーナ。」

「おやすみなさい、ハルアキ君、美香。」


3人はさらに決意を固め、静かに眠ったのであった。2人を除いては・・・。


読んでいただきありがとうございます。

次回も、日曜日の夜9時にあげたいと思っています。

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