第4話〜初めての魔物と魔法
明けましておめでとうごさいます。
今年最初の投稿となります。
最近はイベントがいろいろあったのでいつもより遅くなりました。
今回も楽しんで見て頂ければと思っています。
誤字・脱字等がありましたら、言ってください。
それでは。
潔く前に進みだしたはいいものの、俺は深刻な体力不足により窮地に陥っていた。村から歩いてまだ10分程。額の大粒の汗、切れる息、そして・・・両脇には余裕の表情を浮かべる美香とニーナが、よりいっそう俺の体力不足を際立たせていた。
「お兄ちゃん、そんなんじゃ、夢の実現なんてほど遠いよ。それに、第一目標の『モヤイへの報復』だって、このままじゃ厳しいよ。」
村を出発した俺たちは、最初の目標を立てた。それは、美香の言い出しでもある『天罰』のことだ。俺の奪われた服を取り戻すという名目で、モヤイに報復を仕掛けることになる。
だが、そのためにはいろいろと準備するものがある。計画を練ることも大事だが、まずは戦闘経験を積むこととステータス上げだ。ステータスを上げるには、魔物と戦い力を使いまくることが必要だ。相手が強いほど、自身の成長も早くなる。いうなれば、自分の限界を超えて戦うことで己を昇華させられるということだ。これは精神論でしかないが、莫大な力を得られる。
そして、魔物との戦闘だがこれは、俺が中心となって受け持つことになった。美香のもつ固有スキル〈愛の力〉は、愛する者への感情の高まりが一定以上なると、ステータスが大幅に上がるらしい。(他にも、備考することはあるが今はそれでいい。)なので普段は、俺と同じくらいのステータスになっている。兄として妹を守ると決めているので、あまり危険な目には会わせたないと思い、下がってもらうことにした。
ニーナは魔法を覚えているとはいえ、一村娘だ。俺より一歳上なのだが、身長的に言ったら全然小さいので保護欲しか生まれなかつた。なので、美香同様下がってもらうことにした。
「分かってるよ。行くぞ。」
しばらく歩くと道端から、全身が緑色で耳が長く、狡猾な顔をした魔物が現れた。腰に布だけを巻き、手には刃渡り50センチメートル程の剣を握っているそいつはまだ、こちらに気づいていない。
「俺がまず手始めに、戦ってみる。危なくなったら、加勢してくれ。」
当初の予定通り、俺がでむくことになった。自分の力は、覚悟はどれくらいなのか試されるときだ。俺は緊張して剣を握り直す。ジンジンと自分の鼓動が伝わってきた。そして、魔物目掛けて剣を振り落とした。
スッーーー
テレビで聞くような効果音ありの音ではなく、生のそのままの音はとても綺麗だった。肉質は柔らかく、新鮮だ。
クギャッ、クギャッギャギャギャギャ
魔物の断末魔が聞こえる。頭がまっしろで目の前の光景がなかなか入ってこなかった。しばらくすると、魔物の断末魔は消えていた。今回は、運よく一発で決まったようだ。俺は、肩で大きく息を切る。────だが、
「気を抜かないでハルアキ君、そいつまだ生きてる!」
ニーナの叫びと同時に、すでに息堪えていたと思われていた魔物が起き上がり、最後の抗いをしてきた。
俺はとっさに避けたが、少しだけ遅かったようだ。魔物の握った剣が俺の顔の皮膚を1センチメートルほどかすめていた。
いたい
初めて感じる痛みだ。事故でも、故意でもない。それは、殺意を乗せて切ることで初めて感じる痛み。切迫したなかでしか、感じられない。
(俺はこれを待っていたのかも知れない)
魔物は、息絶えそうな表情で再度正面から斬りかかってきた。俺はの一撃を剣で受け止め、力任せに弾き飛ばした。必死だった。
魔物がよろめく一瞬のすきを狙い、心臓部分に剣を突き刺す。
再び魔物の断末魔が聞こえる。だが今度はそのまま倒れてしまい、2度と立ち上がることはなかった。
俺はこの日初めて魔物を倒した。
──────
「ハルアキ君大丈夫?切られたよね。手当てしないと。」
魔物との戦いを終えると、美香とニーナが寄り添ってきた。心配そうな顔をする二人に大丈夫だといい、頭を撫でてやると顔を赤らめていた。満身創痍なので、あまり気にせずニーナの頭も撫でてしまったが、大丈夫なようだ。
(俺に惚れられる要素はないと思うんだかな。)
心のなかで、皮肉をこぼした。
「俺は大丈夫だよ。こんな怪我ほっとけば治るって。」
魔物から貰った傷に触れてみると、サクッという感じに切れていた。血はあまり出ていないが、傷口を早く消毒しなくてはならない。
「こういう時の消毒ってどうすればいいんだニーナ?」
「そうね、一回水で洗ってから、お酒をかけるのが普通だけど今はそれらがないからね。こまったね。」
「傷口を舐めればいいんじゃない。こんな風にね。」
「えっ、ちょっ、美香。」
ペロリ
きずいたときには、美香がすでに傷口を舐めていた。昔から、おばあちゃんの知恵とかで「唾つけときゃ治る」なんてものがあるが本当にやるとは。
傍らでは、ニーナが目を大きく開けながら顔を真っ赤に染めていた。
そこで、俺はとある違和感にきずいた。美香に傷口をなめられたとき、肌にゴツゴツしたものを感じたのだ。
「あれ、なんか変だよ。お兄ちゃん、傷口がかさぶたみたいになってる。」
美香に変なことを言われたので、患部を触ってみた。すると、さっきまで血が出ていたはずの傷口がかさぶたにおおわれていた。
こんなことはまずあり得ない。ここが異世界だろうとだ。ここには、傷を一瞬で治すようなものをはない。
「傷口を舐めたから?それとも、お兄ちゃんの能力?」
「俺のスキルに傷を治すようなものは・・・ん?そういえばあのスキル。」
俺の固有スキル〈劣化〉。触れたものを劣化させる力。もしこれが、触れたものの時間を1日劣化させるものだとしたら。
「ちょっと、試してみる。」
俺は、護身用小刀をとりだし、腕に切り傷をつけた。触れてみる。すると、ちょうど1日たったくらいまで回復した。
「すごい、ハルアキ君。こんなことが出きるの?」
「ああ、どうやら発動しなきゃいけないときは無意識的に発動するらしい。たぶん任意で出来るはずだ。でも、使うごとに倦怠感が訪れるから何かを消費してるんだと思う。魔力とかかな。」
「すごいね、これならある程度の処置は出来るよ。お兄ちゃんに負担させちゃうかもしれないけど。」
「美香、俺は気にしないから大丈夫だよ。」
使えないと思っていたスキルがまさかの回復系に役に立つことが分かり、多少の怪我は心配なくなった。多少というのは、ほんの1センチメートルほどの切り傷ぐらいだ。それ以上は時間がかかるし、傷が残ってしまう。俺は別に気にしないが、女の子は気にするだろう?
そのあとは、順調に魔物狩が進んだ。美香は、〈闇魔法〉カースバレットを放ちながら、時折自分に魔法を付与して、攻撃していた。カースバレットは、闇魔法のなかでも一番簡単な魔法だ。個人の魔力量によって威力をいくらでも変えられる。その上当たると、相手にはデバフ効果が発生する。短時間の五感機能不全やステータス値ダウンなどだ。それを駆使し、美香は確実に相手の息の根をとめていた。
ニーナの場合は、森で狩などをしていたこともあり弓の扱いに慣れていた。(自作で作れるらしい。今度教えてもらう予定。)遠くから魔物に目掛け〈雷魔法〉を付与した矢を居抜き、走りながらもう一発当て悶えているのを確認ししだい、息の根をとめるようにしていた。俺と同じ道は進みたくないんだと。じゃあ、魔法を使ったらどうだと聞いてみると、まだ付与しか出来ないと言われた。
魔法を放つのにはセンスが必要で最初から出来る人は、天才なんだとか。普通は、付与から徐々にやっていく人がほとんだそうだ。じゃあ、うちの美香は天才?兄として誇らしいね。
3人で倒した魔物の数は、24匹ほどになった。最初に出てきた魔物やスライム状の魔物、狼の魔物などをたおした。それにともない戦利品が結構集まった。
主には魔物の肉、素材、装備、魔石だ。
魔物の肉なんかは、見た目があれなものがあるが大抵は毒がないかぎり普通の動物と同じで食べられるものだ。食料には困らなくなるが、女性陣が嫌がりそう。
爪や牙などの素材は町で換金すれば決まった代価を支払ってくれるとニーナが教えてくた。素材を取り出すのは、素人には不可能なので解体専門の人がいるらしい。
装備は、剣や防具、アクセサリー等だ。大した値にならないのもあったし、ぶっちゃけ物の価値がひとつも分からんかった。
そして、極めつけは魔物の魔石だ。
魔物は魔石と呼ばれる心臓があり、それは機械を動かす燃料の替わりになるらしい。なので、大きさによって値段がかわってくる。途中でそれをニーナから聞いた俺と美香はそれまで以上に頑張った。
という事で、これだけ手に入れた。
魔物の死体×18
綻びている剣×7
さびた剣×1
傷んでいる盾×3
傷んでいる胸当て×5
綺麗な石×7
ね?よくわからないでしょ。さびた剣なんて、どこぞの有名なゲームの研磨していないやつと名前かぶってるし、見た目もそんな感じだから、ちょっと怖いんだけど。あとで研磨したら、実は伝説の剣でしたなんてことないよね。
俺は、若干の期待と恐怖を抱きながら、その剣を来る日までインベントリの奥深くに封印するのであった。
他のアイテムは、インベントリ持ちの俺と美香が分担してしまうことにした。
一通り、整理し終わると太陽がてっぺんに昇っていた。俺はインベントリからおばあちゃんに貰ったおにぎりをだす。インベントリ内は、時間がたたないのでどんなものでも長期保存が可能だ。
「木陰でお昼休憩にしようか。疲れただろう。」
「そうだね、お兄ちゃん。お腹も空いてきたし、ちょうど頃合いかな。」
「おばあちゃんのおにぎり?まあ、いきなり魔物の肉はたべたりしないよね。」
少し残念そうな顔をするニーナ。もしかして、食べたかったのか。美食家なのか?
俺達は全部で6つあるおにぎりを3人で2つずつわけ、どこか適当な木陰で食べることにった。座る配置は俺が真ん中で右に美香、左にニーナという配置だ。
こう言うのを世の中では「ハーレム」とか言うらしいが、俺の中では美香への愛情度は最高だ。それに対して、ニーナは中の上といったところだ。なので、別にハーレムだとは思っていない。ニーナへの気持ちは、曖昧だしな。
でも、大切な存在になっているのは事実だ。なんたって・・・・仲間だからな。そう、仲間だ。え?いや、はい。確信犯です。
「それじゃ、いただきます。」
「いただきます。」
そんな事は、ずっと気にしていられないのでとにかくおにぎりを食べることにした。
感想。一言で言えばおにぎりは、最高の味だった。どうやら、おばあちゃんの手作りおにぎりがおいしいのは、世界共通らしい。なんか、こう優しい愛情を感じた。
「ごちそうさまでした。」
「ごちそうさまでした。」
「ハルアキ君、美香、疑問に思ったんだけどそれってなんの行為?」
「これかい、これはね作ってくれた人に感謝を言っているんだよ。忙しく忙しくして、作ってくれたからね。」
「そうなんだ。じゃあ、私もやってもいいかな。」
「感謝をいうんだから、誰が言っても問題ないよ。」
「それじゃ、ごちそうさまでしたっと。」
この世界には、食材に感謝したりする習慣がないようだ。こういうのは、どこにでもあると思っていたが特別なことだったんだな。
午後は午前で奮闘したのでしばらく休むことにした。そこで、ふと思い出す。
「ああ、そうだ。二人とも俺に魔法を教えてくれないか。こういうのはなんか憧れっていうか、昔から男のロマンなんだよ。」
「ほんと可愛いな、お兄ちゃんは。子供みたい。」
「ほんとだね。こういう時は、男の子ってかんじだ。」
それから午後3時間くらいは、俺の魔法の特訓時間となった。
魔法を使うのは至難の技だが何事もイメージが大切だということを教わった。元々俺達の世界は、アニメや映画などで魔法がイメージしやすかったため30分ほどで魔法の具現化まで出来た。あとは放つだけなのだが、これがなかなか難しく1時間ほどかかってしまった。
残りの1時間半ほどは、速さと大きさと正確さの精度をあげる練習していた。時折、魔力切れになりへたりこんでいたが、美香とニーナの指導により、オーバーワークさせられていた。弱音を少しでもはくと、睨み付けてくるんだよ。恐怖指導だろ。
結果。〈火魔法〉ファイアボールと〈氷魔法〉フリーズを習得することが出来た。ファイアボールは文字どおり、炎の玉を飛ばす魔法だ。フリーズは相手を凍らせる魔法だ。
俺が3時間でわずか2つの魔法を習得してしまったので、ニーナがすごいと誉めてくれた。ちょっと嬉しかった。逆に美香は、当然だといい誇らしげにしてくれた。
こうして、俺は今日2つの魔法を習得した。そして、結局のところ午後は俺の思い出しで休憩することはなかった。悪いと思って二人に謝ったが、俺のためだといい全然気にしていなかった。
「で、これからどうする?お兄ちゃん。」
「確か、モヤイの屋敷に向かう手前にそこそこの町があるんじゃなかったっけ?」
「あるよ、モルダバっていう町なんだけど。冒険者ギルドがあるの、行ってみる?」
「そうだな。冒険者ギルドか、面白そうだな。行ってみよう。どれくらいでつく?」
「そうね、ここからだと歩きで3時間くらいかな。でも、急がないと暗くなっちゃうよ。」
西を見てみると、太陽が沈もうとしていた。このままでは、野宿することになってしまう。いきなり野宿はきついかな。
「急ぐぞ。」
こうして、モヤイの屋敷に行く前にモルダバによることになった。出向く前のいろいろな準備もある。それに、冒険者ギルドにはとても興味があるので、嬉しい限りだ。
だが、俺達はあることを忘れていた。
そう───。
次の投稿からは、日曜日の夜9時までに挙げたいと思っています。一週間後です。安定した話を書きたいがためのことです。
では、良い初夢を。