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第3話〜バットエンド編〜愛されたが故に

どうも、今回の話は『第3話〜溺愛の魔物と晴明の夢』のバットエンド編です。

初めに言っておきますが、この話は晴明が選択を間違えたために起きた悲劇の話です。

結構内容はエグいと思いますが、笑い話程度に見てください。

※本編の途中の続きからなので、話が分からないと思ったら、本編を先に見てから見た方がいいと思います。

それではどうぞ。

─────「死んじゃえ!」


(まずい。このままじゃ、ニーナが。何か打開策は。ああ、くそっ。)


俺は足が動かなかった。そして────きずいた時にはもう遅かった。


グザャッ


美香の右手、手刀とも言えるそれはニーナの体、ちょうど心臓のあたりを貫いていた。ニーナの目がカッと開かれ、口からは血が吹き出す。


それはコンマ0.1秒という僅かな時間だったが、その一瞬が脳にこびりつき、まるで時間が何分、いや何時間にも感じられた。そのとき、美香の顔には達成感とも見られる、えげつなく、歪んでいて、底知れない恐怖を抱く、笑顔が見られた気がした。


美香はそのまま笑いながら、絶命したニーナの遺体を手から振りほどき、その辺に転がした。


口から血をはいたまま、目をひんむかせ、体の一部にぽっかりと穴を開けたニーナの遺体は、想像を絶するものだった。


まさに、地獄絵図。


「あ、あっあっ!?あっ!?あぁぁぁぁぁーーー!!」


俺の喉からは声にならない声が出ていた。精神が狂いそうだ。あれがニーナ?あれが美香?あれは美香?何がなんだが分からなくなった。俺の脳内で処理出来ない事態が起きている。


(こ、こ、こ、これ。がぜっ、望¥?・)


美香は不適に笑いながら、こちらを一瞥した。そして、さらに絶望する。天使のように可愛かった美香の顔は、ニーナの返り血と気持ち悪い笑顔のせいで───堕天していた。


その間自分の中に、絶望が溜まっていくのが分かった。ゆっくりとゆっくりと心臓が脈を打つたびにどんどん蓄積してくる。俺は、あまりの恐怖に過呼吸になった。


「お兄ちゃん、大丈夫?そんなに焦っちゃダメだよ。もうすぐ二人きりになれるからね。」


そう言って堕天使は、村人の息の根を止め始めた。


彼女は一瞬でその場から姿を消すと彼らの背後に回り、また一人、また一人と次々に息の根を止めていった。断末魔が聞こえる。老人、子供、そんなの彼女にとっては些細な違いでしかなかった。シワがあるかないか位だろう。


俺はあまりの恐怖に耳をふさぎ、目をつむった。


(あ%ぁあー¥、にげな・く×ゃ)


周りの音を比較的シャットダウンし、少しだけ物事を考えられるようになったが、それでも絶望はそれを邪魔してきた。俺は唯一考えられたことを最後の希望とし、地響き、断末魔が伝わってこない方に必死に逃げようとした。


だが──体が動かなかった。


(なんじぇ、な¥びぇ、だんで、なぶ#、なんぜ・・・)


唯一の希望がゆっくりと崩れ落ちる音が聞こえた。その間も、堕天使の笑い声とヒトの断末魔が聞こえる。


俺は必死に逃げようと最後の行動に出た。体は動かなくとも、口は動く。その瞬間、舌をおもっいきり噛んだ。


ズザァッ


「いっ、あっ!あぁぁ、痛い。」


ようやく声の出た俺は、そのままの勢いで護身用小刀を自分の腕に突き刺す。


「あぁぁぁぁぁ、ぁぁぁー!!ん!我慢だ。今だけは、奮い立たせろぉ!!」


アドレナリンが出続けているせいか、体の倦怠感は多少和らいだ。思考も戻っている。そのため、今度こそ立つことができた。しかし、口の中からは血がにじみ出し、腕からも多量に出血している。


(このままだと、出血多量で死ぬかもしれない。)


だが、今この時も堕天使の笑い声は辺りいっぺんに響いていた。


「とりあえず、逃げなきゃ。あれはもう美香なんかじゃない。いったい何が・・・」


俺は、小走りでその場から離脱した。なるべく声の聞こえない方へと。しかし、その笑い声はいっこうに小さくならない。むしろ、だんだんと大きくなってきていた。そこで、進行方向を変更した。だが、笑い声はいっこうに近くなるばかりだった。


(くそっ──?)


だが、ここであることに気がついた。それは、俺が美香から逃げる意味だ。俺は美香の兄だ。ならば、殺されるとは限らないんじゃないのか?今の様子はとても正気を疑うが、俺ならば・・・


自分の中に芽生えた新たなる希望。俺はそれにすがるようにその場で立ち止まった。すると、今まで聞こえていた美香の笑い声は聞こえなくなっていた。辺りは、静寂に包まれる。


と──その時、薄暗い影の奥の方に人影が見えた。その影は、だんだんとこちら側に近づいてくると、月の光によって照らされ、その正体を現した。


全身は、村人達の返り血によって赤く染まり、薔薇の花のように美しい。その人三条美香だ。


「な、なあ・・美香?お兄ちゃんは、怒らないから、もうやめるんだ。」


美香は、俺の言葉に返答しようとせずそのまま俺の真正面に向かってくる。


俺までの距離は、残り10メートルほど。


俺はそれが恐ろしくなり、一歩引いてしまった。────刹那、美香の姿が消えた。


「へ?」


突拍子もないことがいきなり起きて、今まであった緊張が一瞬にしてほぐれてしまった。


(助かった・・のか?)


俺は安堵のいきを感じ、そこで肩をおろした─────瞬間


「逃げちゃぁだめ」


耳元にねっとりとした声が聞こえてきた。美香の声だ。そして同時に、体の背中辺りが熱く感じた。


「えっ?」


俺はそのままうつ伏せで倒れた。


(え?え?え?え?え?え?)


すると、美香が俺の体を仰向けに直してきた。そして美香の手に注目する。そこには、肝臓があった。そして、彼女はたんたんと話し始める。


「お兄ちゃんは私の物。だから、これも私の物。」


「み、美香。それって・・・どういう?」


「お兄ちゃんの面倒は私が見なくちゃいけないの。だって私の物だもん。だから、悪いことをしたらちゃんとお仕置きが必要だよね。」


「美香・・ほんとに何を言って・・・」


「でも、大丈夫。お仕置きって言っても全然痛くないから。ただ、ちょっと眠るだけ。しばらくすれば、私と永遠に一緒にいられるよ。」


この時俺は悟った。最初から助かる道なんてなかったんだと。


この時俺は悟った。美香の言葉の真の意味を。


(俺はいったいどこで道を踏み間違えたんだ・・・・・)


意識がだんだんと途切れていき、ついには目も開けていられなくなった。そして、目を閉じた最後、優しい美香の笑った顔が見えた気がした。


読んでいただきありがとうございます。

なにか、感想等あれば言ってください。

やっぱエグいですかね?

気を悪くした方は本当にすみません。

本編は、予定通り日曜日の夜9時に挙げます。

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