第2話〜新たな出会いと変化
変なところがあったら、言って下さい。直していきたいので。今回もよろしくお願いします。
「うー、疲れた。」
王国から追放され、自由の身となった俺は王国の門前から10分ほど歩いたところまで来ていた。距離にして、約500メートル。まだ、ほとんど歩いていないが俺は体力がないので、もう疲れていた。
ふと、後ろを振り返って見る。そこには、まだ全然大きなプロメタリア王国が見えた。
「進んでみたものの、移動手段がないときついな。」
そこからさらに1分ほど歩いてみた。周りの風景はいっこうに変わらない。所々に木が生えているだけ。道はでこぼこだし。歩きずらい。
「この世界で生きていくのも、結構大変だな。」
この世界には、魔物が存在する。もし、ただの人間が装備なしの服だけ状態で魔物に出くわし、体当たりでもされたら打撲するらしい。この情報は、さっきシュベルクが言っていた。とても嫌なやつだが、今はそんなことはどうでもいい。
つまりだ。今の俺は元の世界の学生服を着ている。この服は、とても運動に適していません。プラス、装備も何も持っていません。
どういうことかわかりますね。そう、今俺は早速生と死の狭間に立っている。しかもだ。俺のステータスは普通の人よりも低い。下手したら、ワンパンで骨が折れますよね。これ!
俺は、道の真ん中に呆然と立つ。退屈な人生がようやく終わりを告げたのに、今度は人生そのものが終わりを告げようとしている。これも、厄災運のせいなのか。
「考えても、仕方がないな。とりあえーーー『いやっ、やめて。離して。』」
取り敢えず歩こうとしたところ、前方の方から女性の声が聞こえてきた。俺はその声があまりにも必死だったので、疲れてからっきしになった体力を絞りだし、声のする方へ向かった。
そして・・・・俺は驚愕した。
(この光景、なんかのアニメで見たことがある〜〜!)
そいつは金ぴかの装飾を施した馬に股がり、金ぴかの装飾を身に纏った正真正銘のデブ男だった。その男は、嫌がる女性を無理やり部下に引っ張ってこさせ、値札をつけるような目で見ていた。
「ん〜、こいつはなかなかだお。このロウセール領当主モヤイ様の奴隷にしてやるお。有り難く思うんだお。お前達、こいつに枷を着けて列に並べるんだお。」
彼の後方を見てみると、首と手と足に枷をつけられた奴隷らしき者達が一列に繋がれていた。勿論裸でだ。その体にはひどい仕打ちを受けたであろう生々しい傷痕が残っていた。
この世界の奴隷は『奴隷印』という特別な魔道具を主が体に刻むことで、その者の奴隷となる仕組みになっている。奴隷は主には絶対に逆らえない。
だが、彼女もおいそれと奴隷にされたくないので当然の如く反抗した。
「やめて、お願いします。どうか奴隷だけは。お願いします。」
「うるさいお。元はと言えば、お前達が税金を納められないのが悪いんだお。ちゃんと、納めるお。文句はそれからだお。」
そう言って、モヤイは部下に命じ、彼女に枷をつけようとする。
「そんな、待ってくだされ。あと少しだけ、待ってくだされば必ずや用意しますので。」
そんな彼女を庇う老人を見ていて俺は今気付いた。
ここって村じゃね?と
辺りを見渡してみると、家が数軒並んでいた。家の窓からは、ちらりとこちらの様子をうかがっている村人がちらほらいた。ここにいるのは、女性と老人と村の男達だけだ。
俺は王国からこの村に来るのに15分程度しかかからなかった。
最初の村近すぎだろ。
そんなことを考えていると、ようやくモヤイ達が俺の存在にきずいた。村人達は、きょとんした顔をする。逆にモヤイは、ニターと顔を歪めた。
「ん?なんだお、お前。ここの村人かお。お前、その高そうな服を寄越すお。そうすれば、この女は見逃しやってもいいお。」
え?俺にこの服を脱げというの?冗談だろ?
俺は助けを求めようと、村人達の方を向いた。しかし、誰一人俺と目を合わせるものはいなかった。それは、無言ながらも俺に服を脱げといっているようなものだった。
そんななか、現在進行系で奴隷にされようとしている女性はとても優しい人だった。
「やめて、その人はここの村人じゃないわ。関係ないの。」
俺はこの時、胸にキュンとくるものがあった。美香以外の女性にあまり優しくされたことがないので、こういう時の耐性がほとんどない。一瞬で顔が赤くなる。
俺は思った。こんな優しい人を見捨てていいのか。
否。断じてだめだ。
いくら、他の村人が冷たくとも彼女は少なからず俺を救ってくれた。ここは、恩を返すしかない。
ーー俺は、無言で着ている服を脱いだ。そう、彼女のために。
「これで、いいか。」
「うむ、いいんだお。今日のところは勘弁してやるお。また、一週間後にくるんだお。」
俺は、モヤイの部下に着ていた服を渡した。そして、モヤイはさっさと部下と奴隷を連れてその場を去っていった。
一連の出来事か終わり、皆一様に肩をおろした。そんななか一番肩を下げていたのは、彼女・・・ではなく村の若い男のひとりだった。
彼は大袈裟に肩を下げると、そのまま俺の近くに寄ってきて、いきなり頬を平手打ちしてきた。
皆が固まった。その場にいる誰もが一瞬何が起こったのか分からなかったのだ。かくゆう俺は、危うく後ろに尻餅をつきそうになってしまった。
そして男はすぐに俺を罵倒し始めた。
「お前、なぜあの時一瞬ためらったんだ。困っている人がいたら、普通はすぐに助けるだろう。」
男の意味不明な言動に皆がぽかんとした。そのなかには、俺を含め何人が呆れた顔をしていた。
(困っている人がいたら助けるのが普通?あなた面白いことを言いますね。じゃあ、今まであんたは何をやってたんだ!)
男は自分のやったことは覚えていず、他人のやったことばっかり批判するはた迷惑な男だった。
そこで、男の行動にしびれを切らした村の者達が止めに入ってきた。しかし、男はさらに怒りだし暴れ始めたので収拾がつかなくなってしまった。
男はその後も、やれ彼女がかわいそうだの、やれお前はゴミだのとさんざん俺に言ってきた。言われなれてる俺は、男の言葉を無視し続けた。すると、男は俺が萎縮したと思ったのかさらに罵倒し続けた。そして、ついに言ってはいけないことを言ってしまった。
「お前を村の真ん中にはりつけて、晒し者にしてやる。」
俺の今の装備は、モヤイに服をあげてしまったのでパンツ一枚だけだった。なので、このまま晒し者にされると、本当に尊厳が無くなる。
俺は特にその言葉に不快感を感じなかったが、体から怒りのオーラが伝わってきた。そのオーラは俺のもの・・・ではなく、俺の右隣から伝わってきたものだった。
そちらの方を見る。すると、そこには全身から怒りのオーラを出した彼女がいたのだ。そして通常なら見えるはずがない、般若の顔が彼女の後ろに見えた。
彼女のそのオーラが存在しているだけで、村人たちはすくみあがってしまった。周辺の家の扉や窓がカタカタと音を出し、木々に住む虫や動物達までもがその場から逃げていく。
彼女は、ゆっくりと俺達の方まで歩いてくると男の前で止まった。そのまま右手を空高く、上にあげた。
ーーーパチパチ。どこからか何かが弾ける音がした。それは、夢か現実か。彼女の右手が黄色いスパークを纏っていた。
この時、俺には何が起こっているか理解できなかった。それもそのはず、こんな超常現象、元の世界ではありえないからだ。
元の世界?ここは異世界だろ?ならあれはなんだ?
俺はシュベルクが言っていたことを思い出す。
ーーーーー
「人間には、魔力が備わっています。それは魔法を使う時に必要なもので、個人の持つ魔力量によって使える魔法が変わってきます。もちろん、まったく使えない人間もいますよ。」
ーーーーー
あれは、魔法?
彼女は右手に纏った黄色いスパークの魔法を、そのまま男の顔に近づけ頬を平手打ちした。その威力は、体感しなくてもわかる。男は魔法を纏った彼女の平手打ちに耐えきれず、体をビリビリと震わせながら後方におもいっきり吹っ飛んだ。
そして男は、白目をむきながら気絶していた。
なんとも、恐るべしその威力。これが魔法!初めて見たからすごい感動せざるを得ない。
「そこで、頭冷やしてなさい。カール。」
彼女は彼にひとこと言うと怒り狂った表情から一転、にこにこ顔の彼女が俺の方に歩いてきた。
(怖えー。女怖えー。)
「あの、見ず知らずのお人。助けていただいて本当にありがとうございました。」
「いや、大丈夫です。こんなの安いもんですよ。」
俺は平気平気といいながら、彼女に笑いかける。それに答えて、彼女も笑いかけてくれる。いいね。異世界でのこういう出会い。ん?いいのか?
俺が彼女にデレっーとしていると、どこからか殺気が飛んできた。俺は、背筋をぶるりと震わせる。
「あの、ここではなんです、私の家に来てください。カールの件の謝罪もしたいですし、それに・・その格好じゃ、さっ、寒いでしょう。」
彼女が顔を赤らめながら言ったので、どうしたのだろうと思った。そこに、冷たい風がふく。オーケー、理解した。俺、今、パンツ一枚だけでした。
「ここは、彼らに任せましょう。」
彼女は事態の収拾を村の男達に任せ、俺を連れて自分の家へ向かう。
「あの、ところであなたの名前は何ていうんですか。バタバタしてて聞けていませんでした。」
「晴明といいます。」
「ハルアキ、ハルアキ、ハルアキ、うん、覚えた。ハルアキ君、私の名前はわかりますよね、ニーナです。よろしく。」
「うん、よろしく。」
「それで、ハルアキ君は、どこから来たんですか?私と同じくらいに見えるけど。」
俺はここで一瞬迷った。正直に、ニーナにここまで来た経緯を伝えるか、逆にどこか適当なところを言って誤魔化すかだ。
考え込む俺をニーナはどうしたの?と心配してきた。
仕方がないので、俺は本当のことを彼女に言うことにした。するとニーナは俺の出身のことには触れず、ここまで来てしまった経緯の方を気遣ってくれた。
「大変だったんだね。ハルアキ君。なのに、その、服までも・・・」
「いいんだよ、気にすんな、ニーナ。」
いつの間にか俺達は、仲良くなっていた。それは、まだ会ってそれほど立っていないのに、口調を崩し合うほどにだ。
俺は内心浮かれていた。すると、どこからともなく殺気が飛んできた。背筋が震える。
二人で話しているとしばらくして他の家より少しだけ大きい家が見えてきた。木で作った家だ。そのまま彼女はその家の前までくると、木の扉をノックして開けた。
「ここが、私のお家よ、さあ入って。ただいま、おばあちゃん。」
「お帰りニーナ。心配したよ。ん?おや、その後ろの裸の男の子はだれだい?」
「紹介するね。私を助けてくたハルアキ君っていうの。色々あってね。服をあげたいの。それにお話もしたいから連れてきたの。」
「そうかい、そうかい。ニーナを助けてくれた人なら大歓迎だよ。寒いから、中へお入り。服をあげるよ。こっちにおいで。」
ニーナの家の中には、彼女のおばあちゃんがいた。おっとりしていていてとても優しい人だ。俺はおばあちゃんに言われるがままに家の中に入り、服をもらった。そして、どこにでもいる異世界の青年の服装になった。これで、目立たないですむ。
その後は3時間くらい時折おばあちゃんも混ざり、ニーナと色々話した。
まず、ニーナはカールの件を謝ってきた。カールは、ニーナの幼馴染で小さい頃から遊んでいる仲らしい。そのせいか、カールはニーナのことが好きでニーナのことになると、周りが見えなくなるらしい。しかも、臆病な性格なので権力には逆らわないヘタレ男だという。
昔から何度も告白されているが、ニーナはカールと結婚する気はなく、出来るなら早くこの村を出ていきたいそうだ。
モヤイの件は予想通り税金が高く、支払えなくなってしまったので、代わりにニーナを連れてかれそうになったとのことだ。後ろに沢山いた女性の奴隷達は皆、他の村から奴隷としてモヤイに連れていかれた人達らしい。
ニーナは、俺がたまたま居合わせたことで助かったが、もし遅れていたらと考えるだけでも恐ろしくなる。
そんなモヤイの屋敷には、納められた武器や防具、魔道具、金など様々な物が宝物庫に入っている。そのなかに、俺の服もあるかもしれないとのことだ。正直、あの服じゃ目立ってしょうがないので、今の服になれて若干ラッキーだ。
ということで、その他もろもろの話をニーナから聞いた。ちなみに魔法のことを聞いてみたら、自力で習得したとのことだ。そのせいで、村で一番恐れられているという。怖いね。
話の区切りがついたところで、おばあちゃんが夜ご飯の用意を出してきた。ただいまの時刻は、約6時くらいだ。この世界にも、一応時間を知る方法はあるらしいが曖昧なのだそうだ。
「よかったら、食べていってちょうだい。それと、今夜は家に泊まっていきなさい。その方がニーナも喜ぶわ。」
「おばあちゃんっ、なに言ってるの。やめてよ。」
ニーナは顔を赤らめながら、おばあちゃんに申し出ていた。うん、なんとなく気づいてたよ。やっぱ、異世界でのこういう出会いは最高だね。
かくいう俺も若干の期待を胸に顔を赤らめていた。その時、また例の殺気が飛んできた。前よりも強かった。
「ありがとうございます。泊まる場所が見つかってよかったです。」
その後は皆で座って食卓を囲んだ。そのなかには、昼間いたおじいちゃんもいた。彼は、ニーナの祖父でおばあちゃんの夫だ。そして、この村の村長だ。
「昼間は色々とすまんかったのう。カールのやつにかわって、謝らせてくれ。」
深々とお辞儀してくるもんだから、俺は少し困ってしまった。目上の人に謝れるとこうも変な感じになるとは。
ーーーーー
そして、夜ご飯も食べ終わり、その後は特にニーナからは何もなかったのでおばあちゃんに案内された部屋で寝ることにした。
気持ちいいとまではいかないベッドだが、今日は色々とありすぎて疲れたのですぐに眠くなってきた。
俺は異世界での初めての夜なのでせっかくだからと思い、自分のステータスを確認しようと見てみた。
三条晴明
・力200
・速さ205
・魔力200
・防御230
〈固有スキル〉
劣化
・触れた物を劣化される(最大1日)
〈スキル〉
スティール(+1)
・相手から最大一つ盗むことができる
・何がとれるかはランダム
悪運
・悪いことがたまに起きる
双剣術
え?悪運?どゆこと?
俺は、カールに平手打ちされたことにより防御が上がったという笑えることに気づかず、厄災運が悪運に変わったことに驚愕した。
結果的に悪いことが起きる量と質が減ったことが何よりも嬉しい限りだ。だが、なぜスキルが変化したのかが疑問だ。厄災級の何かが起こったとは思えない。不思議だ。
俺は今考えても仕方がないと思い、疑問を残しながらそのまま深い眠りに落ちた。
次も、一週間以内にあげます。読んでいただきありがとうございます。